第2話

1杯目
123
2018/11/18 08:03
ザワザワ。

(えーっとぉ)
借りた傘、どうしようか。
クラス知らないし。
名前しか知らない。

栗ちゃーん!!!!!!

ただでさえ騒がしい廊下。
一際大きな声が響き渡る。
思わず声の発信源を探す。

(あっ、粟屋先輩。
よしっ!聞いてみるか!)

(あっ。)
先輩の見る先。
栗林先輩がいた。
2人、お似合いだな。

パチッ。
(あっ。)
目が合ったような気がした。
直ぐに逸らす。
まだ見てるかな。
目を戻す。
また目が合った。
今度はしっかりと。

(あのっ!これ!傘!)
今しかない。
今なら。
と単語だけを口にだす。

「あっ!そうだった、ありがとう。」

チクリ。

(いえっ!こちらこそです!)

「忘れてたから、良かったよ、助かった」

チクリ。

『栗ちゃーん 』
「はいはい。今行くー
じゃあねまた今度」
(はい…)

チクリ。

なんで?
きっとこれは違う。
そんなものじゃない。
違う。はずなのに。

それからは1日中うわの空。
ずっと同じことを。
あの時ばかりを。
かんがえてしまった。

キーンコーンカーンコーン
(はぁ疲れた。)
何もしていないはずなのに。
やけに疲れた。
やっぱり、嫌だな。
こんなの。

(今日は残ろうかなー)
友達に返事を返す。
誰もいなくなった教室。
ただ夕日が照らすだけ。
向かい側には高等部の教室。
景色も何も無い。

(あっ、)
ふと教室の電気が付いた。

(栗林先輩とーーー)
女子生徒がいる。
付き合ってるのかな。

(えっ、)
思わず声に出でしまう。
自分でも分かるほど。
2人はーーーーーーーーー
キスをしていた。

それからは覚えていない。

ただ、あの時。

目が合った。

キスの間。ずっと。

長い長い時間だった。













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