第22話

GW合宿⑧
1,226
2021/04/10 23:34
〜及川side〜





夜、母のおつかいでコンビニまで明日の朝ごはん用の食パンを買いに行った帰り。



重そうなビニール袋を両手に抱えたロングヘアの女性の影があった。



荷物を運ぶのを手伝おうと思って近付ロングヘアの色と波打ち具合に見覚えがあった。





及川「あれ、あなた?」





声に気付いて俺の方を振り返った。





『あれ、徹』





「何でここおるん?」とでも言いたげな顔で首を傾げた。





及川「ちょっとおつかいで。あなたは...合宿の食料?」





しまだマートの袋の中には大量の野菜や肉類。





『おん、男子高校生はよお食べるからなぁ』





「見とって気持ちええねんな〜」と微笑ましそうに後に付け足した。





及川「あなたの料理食べれるなんて羨ましいな〜」



『そう?』



及川「うん、あなたの料理はなんでも美味しいからね」



『そう言われると作り甲斐がいあるわ、笑』





両方の荷物を取ると「あたしも持つ」とあなたなら言うのでどちらかと言うと重そうな左の袋をさりげなく持ったつもりだったがあなたは





『ありがとな』





と、笑みを浮かべた。





普通の女の子なら気付かずにそのまま俺に並んで歩き出すのに。



あなたは何年経っても変わんないんだなぁ。





及川「どういたしまして」





少し余裕そうに笑って道路側を歩いた。



あなたは右手の袋を左手に持ち替えて俺の右を歩いた。





及川「あーあ、せっかく格好かっこよくお別れできたと思ったのにもう会っちゃったよ」



『ホンマやな。今考えたら恥ずいわ、笑』





2人してあははははと声を出して笑った。





及川「明日はどこと練習試合?」



『白鳥沢!』



及川「げ、牛若か...」



『徹はホンマに"わか"のこと嫌っとるなぁ、笑』





あなたは中学時代は宮城で時を過ごしたから牛若とは知り合い_____。



という簡単な関係ではないらしい。





中学時代のあなたいわく、空き地でバレーの練習していた牛若にバレーを教えて仲良くなったのことだ。



後々のちのち役に立つからと普段から一期一会いちごいちえを大切にしているあなた。



一期一会を大切にすると言ってもそれはかなり度を超えている(と、思う)。



コミュ力半端ないなぁ。





『若のどこが嫌なの、笑』



及川「普通なら煽りで言うセリフを本気で言うところ!」



『あー...なんかわかるかも、笑    素直で可愛かわええやん』





と、俺の顔を除きながら言ってくる。





及川「かわいい?!アイツに一番いっっちばん似合わない言葉!!」





こちらを向いてきているあなたにいーだとでも言うように少し顔を近付けて言った。





『そうかなぁ...?』



及川「そうだよ!」





そう言い合いをしていると稲荷崎が使用している宿泊施設のある坂の下に到着したらしい。





『こっからは一人で行けるわ』



及川「そう?気を付けてね」



『徹こそ、気を付けて帰ってな。送ってくれてありがとう』



及川「うん、それじゃ、次はIHインハイで」



『もちろん』





目を合わせて互いの拳をコツンと合わせた。

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