〜及川side〜
及川「え...今、なんて......」
『足、もう治らへんのやって』
岩泉「じゃ、じゃあ...バレーは...?」
『もう、できへんな』
裏にある辛さを感じさせるような笑みで笑いかけられた。
及川「バレーから...身引くの?あんなに楽しそうにプレーしてたのに...?」
『そんな事言われてもッ...治らへんのやから仕方ないやん!私だってまだみんなとバレーやってたいよ!でもリハビリしても治らんって言われたんやもん!そんなッ、根性とか気合でどうにかなる問題やない!』
笑い泣きする以外のあなたの涙は初めて見た。
試合に負けても辛いことがあってもずっと前だけを見続けていたあなたの涙。
それは後悔と辛苦でいっぱいだった。
そんなあなたに掛けるべき言葉は____。
及川「バレーとの関わり方は何も、選手としてプレーするだけじゃない。あなたは観察眼が鋭くてアドバイスが得意で、人の成長を一緒に喜べる優しい心持ってる。だからマネージャーとかに活かしたらどうかな、」
そう言うと岩ちゃんも口を開いた。
岩泉「お前がまだプレーしてたいって気持ちがあるのは分かってるつもりだ。俺たちがあなたの立場だったらそう思うからな。でも、あなたなら絶対にこんな状況も乗り越えれる。お前自身は無理だって、諦めてるかもしれねぇけど、今まで近くで見てきた俺らが保証する」
俺たちの気持ちを真っ直ぐにぶつけたつもりだ。
もちろん、俺たちは怪我をしていない。
高校に行って部活でバレーして、大人になったらプロになったりしてまだ続けてるかもしれない。
気持ちをわかってあげたつもりでいてもあなたにとってはただの迷惑かもしれない。
あなたに言い返されたらそこで終わりだ、何も言うことがない。
それでも、あなたには伝わるって信じてる。
何度もあなたは俺たちを助けてくれた。
今度は、俺たちがあなたを助ける番だ。
下唇を噛み締めて俺たちの目を交互に見つめる。
拳を握りしめて下を向き、"でも..."と発した。
岩&及「"下向いとったら何ができるん?前向かな、バレーも出来へんかったら一歩も成長出来へんで"」
そう言うと目を見開いて前を向いたあなた。
及川「俺たちが何度も白鳥沢に敗れて下を向いていた時、あなたがこういって前を向かせてくれたんだよ」
岩泉「俺たち、何度も助けられたんだ。この言葉をかけてくれた、ずっと前を向て笑顔でい続けてるあなたに」
及川「だから、前を向いて俺たちの大好きな笑顔見せてよ」
すると眉を寄せながら肩を上げて息を吸い、瞬きをしながら肩を下げて下を向いた。
それに伴って目に溜まった涙が光に晒されながら舞った。
『うん!』
と、目尻の涙を左人差し指で拭いながら笑顔で言った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!