〜北side〜
白布「あなたさん...」
ギリギリ聞こえたあなたを呼ぶ声。
俺の左を肩を落として歩いていたあなたが一瞬にして目を輝かせた。
『賢二郎!』
ぎゅっと白布くんの手を握った。
白布「ちょっと、名前呼んだら呼び捨て辞めるんじゃなかったんですか?それに距離近いです」
『辞めるとは言うてへん!それに距離も近ない!』
嬉しそうにえへへと笑った。
心開いて貰えただけであんなに喜ぶんやもんな。
単純なのかどうなのか...
北「ごめんな、牛島くん。白布くんに迷惑掛けて」
牛島「白布は迷惑と思ってないぞ?」
北「そうなんか?まぁ、迷惑やないならええんやけど」
ちらりと2人を横目で見た。
『賢二郎がイヤならしらぶんにするか?』
白布「あ、賢二郎でお願いします」
そんなやり取りを見てふと笑みを浮かべた。
〜角名side〜
角名「いいの?あんなに距離近いけど」
隣でうぬぬぬと歯を食いしばる侑を見て言った。
侑「大丈夫なわけないやろ!俺ッ、俺、あんな顔向けられたことないで?!」
治「まずまずあんな顔初めて見たわ」
侑「あぁ!!!俺も手ぇ握ってもらいたい!!!」
角名「プレー頑張ればしてくれるんじゃないの?」
侑「せやな、頑張んで。サム、角名!!!」
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〜侑side〜
侑「クッソォォォ!!!負けた!」
2セット先取で試合をしたところ、フルセット全てデュースでギリギリ負けてしまった。
あかん...
あなたさんが白布か若利くんのとこ行ってまう...!
そう思ったが。
『侑〜』
そう言いながら俺に駆け寄ってきた。
は?めっちゃ可愛ええやん。
なんなん、自分。
可愛すぎやろ。
『さっきのトス、焦ったやろ?』
頬を膨らませながら言ってきた。
ギクッと肩が上がった。
3セット目の最後。
負けると焦ってしまい、トスがほんの少しだけ低くなってしまった。
そのトスを打ち分けた当の本人のアランくんはあまり気にしとらんかったみたいやけど____。
流石のあなたさん。
お気付きになったようで...
『なんで焦ったん?いつもの侑なら余裕やったやろ?』
こてんっと首を傾げるあなたさんは愛くるしい。
侑「えっと...それはぁ......」
『私に言えへんことか?』
眉をひそめて尋ねてくる姿に隠し事は出来そうにもなく...
侑「かっこいいとこ見せへんと、あなたさん...どっか行ってまう......」
と、格好つけるどころか格好悪いことを言ってしまった。
バカにさせるやろな...とチラッと金色の前髪の間からあなたさんの顔を見た。
その顔はバカにする所でもなく、キョトンとしていた。
『そんなこと心配しとったん?』
侑「そんな事ってッ、」
『侑、ちょっとしゃがみぃや』
意味のわからない発言、意図が見えてこない。
理解できないまま、あなたさんの目線に合わせるように姿勢を低くした。
するとわしゃわしゃと頭を撫でられた。
侑「えッ、...//」
『安心せぇ、どこも行かへんから』
恥ずかしさで顔が赤くなったのも気にせず目を合わせた。
するとそう言いながら微笑むあなたさん。
その言葉と表情に喉元がきゅっと締め付けられた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。