〜あなたside〜
「「「ご馳走様でした!」」」
と、合掌をして各々皿を下げる。
皿洗いはじゃんけんで負けた人がやってくれるとのこと。
私は一度部屋に戻り、薄いポーチの入ったカバンを持って玄関へ向かった。
侑「あれ、あなたさん。出掛けるんですか?」
玄関の段差に座って靴を履いていると風呂から上がって肩から白いタオルをぶら下げている侑に声を掛けられた。
『おん、ちょっと買い出し。明日の朝と夜の分の材料買っとかなあかんから』
侑「俺、手伝いますよ?量かなり多くなると思いますし...」
『大丈夫、これでもいつも部員全員分のドリンク持っとるだけ筋肉はあるし。人並みには鍛えとると思うから』
やんわりと笑うと侑が心配そうな顔を向けてきた。
侑「無理だと思おたらすぐに呼んでくださいね?秒で行くんで」
『おん、わかった。ほな、ちょっと行ってくるわ』
侑「はい、気をつけてください」
侑に見送られて宿泊施設を後にした。
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『ここか、嶋田マート...』
目の前にはコンビニの様な見た目の建物。
看板には"しまだマート"という文字と輪切りにされた豚の図。
『豚......ちょっとグロいな...』
そう思いつつ、お店に入った。
店員「いらっしゃいませー!」
店員さんの明るい声が聞こえた。
閉店間近なのか、片付けを始めていた。
なるべく早めに買い物終わらせんとな。
カゴいっぱいとなった商品をレジへ持って行った。
店員「合宿か何かですか?」
黒髪の黒縁メガネの店員さんが聞いてきた。
『あ、はい。兵庫からちょっと...』
頬に左手の人差し指を当ててあはは...と軽く笑った。
店員「兵庫から......遠いところから来ました、ね____」
いきなり言葉が詰まったように見えた。
どうやら店員さんの視線は商品から私の来ているジャージに移ったようだ。
店員「そのジャージって...ひょっとして稲荷崎高校ですか...?バレーの強い...」
『そうですよ、ご存知なんですか?』
店員「はい、バレーにはかなり興味があって...あ、僕、烏野出身なんです...って、言っても分かりませんよね、笑」
焦ったように笑って手を動かし始めた。
『知ってますよ。私、中学の時は宮城にいましたから』
店員「そうなんですね。お会計、〜〜円になります」
そう言われてカバンからポーチを取りだし、そこから※お金を出した。
※部費です。
店員「こちらお釣りになります。ありがとうございました!」
二つに分けられた"しまだマート"と豚の輪切りの絵が描かれたビニール袋を持ってお店を出た。
うっ...意外と重い____。
行けると思おたんやけどな...
思ったより、やな。
侑に電話するとしても両手塞がっとって無理やし...
頑張るしかないか。
はぁ、と溜息をつき、ビニール袋を握り直してから前を向いた。
?「あれ、あなた?」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!