〜侑side〜
バスで白鳥沢高校に着いた。
白鳥沢付近に来てからあなたさんが忙しい。
きっと昨日言ってた"気不味い"という話が原因だろう。
降車すると白鳥沢の人が出迎えに来た。
真ん中には堂々とした威厳を放つ牛島若利の姿。
右横のあなたさんを見るとこれでもかという程に顔を背けていた。
それを見た牛若があなたの傍に来た。
牛島「あなた、なぜそんなに顔を背ける」
平然と問う牛若にあなたさんがうっ、と声を漏らした。
『えっとぉ...』
牛島「俺のことが嫌いになったのか?」
少ししゅんとした様な声色に変わった。
※若利くんってこんな感情出す人やったっけ?
※普段牛若牛若言ってるけど名前呼ぶ時は若利くんです。稲荷崎と白鳥沢は互いに強豪で知り合い同士だと思うのでという主の妄想です。
『そんなわけない!ただ...』
牛島「...?」
『私、バレー...辞めちゃった、から……』
牛島「それの何がいけないんだ?」
訳が分からなく首を傾げた。
『え...』
牛島「怪我をしたなら仕方がないだろう?残念とは思ったが、まだバレーに関わってくれていてよかった」
予想外の言葉が飛んできたのか、あなたさんは目を見開いた。
牛島「今日はよろしく頼む」
薄らと笑みを浮かべて語り掛けた。
あなたさんの顔は直ぐにいつもの笑顔へと変わり。
『うん、!こちらこそ、笑』
明るく答えた。
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〜白布side〜
『若、スパイクの威力上がったなぁ』
牛島「あなたのアドバイスが生きているのだろう。ありがとう」
稲荷崎のマネージャー、小笠原あなたとかいう人、牛島さんと距離が近い。
昔からの知り合いっぽいが、どこか気に食わない。
『ていうか、身長伸びたよな。筋肉もいい感じに付いとるし』
牛島「あれから3年も経ったのだから、変わるのは当然だろう」
『そうやけどそうちゃうわ』
目を細めてムスッとした。
白布「あの、牛島さん」
耐え難くなり、牛島さんに話し掛けた。
白布「小笠原さんと知り合いですか?」
牛島「あぁ、あなたとは中学からの知り合いだ。どうかしたのか?」
白布「いえ、特には...」
チラッと小笠原さんを見ると頬を膨らませていた。
不覚にも可愛いと思ってしまった自分を殴りたい。
牛島「何かあったのか、あなた」
『小笠原さんって、距離置かれとんの嫌や...』
子供が拗ねるように口を尖らせて言った。
白布「は、...?」
『あなたって呼んでや...?』
本人はわざとなのか無自覚なのか。
上目遣いで顔を覗いてきた。
白布「無理です」
『ええやん!減るもんちゃう!!!』
白布「俺の精神が擦り減ります」
『そんなん知らん、私んことあなた呼ぶまで賢二郎って呼ぶからな?!』
白布「は、...!?」
さっきとは打って変わり、少し強めに間抜けな声が出た。
?「あなた、後輩いじめたらアカンよ」
その一言で小笠原さんの言葉がピタリと止んだ。
『信ちゃん...』
「信ちゃん」と呼ばれた男は稲荷崎の主将、北信介さんだった。
『だって...』
北「だってちゃう。人が嫌がっとることはしたらアカンよ」
そう言われると目に見えるように肩を下げた。
『ごめんな、賢二郎くん...』
一言残して向けられた背中はとても小さく見えて。
白布「あなたさん...」
彼女に聞こえるか聞こえないか曖昧なほど小さな声で呟いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!