だが、その脳腫瘍は紅蒼が生きていく為の機能をつかさどるところにも広がっていて藍沢先生はオペをするか迷っていた。
緋山「……ねえ…藍沢……手術してもしなくても紅蒼、死んじゃうってことだよね………」
藍沢「………あ、ああ………」
白石「藍沢先生は…、緋山先生はどうしたいの?」
緋山「白石、そりゃあ手術して頭痛治してあげたいよ……」
藍沢「出来るならオペしたい。だが、勝算が無いんだ……」
冴島「こういう時だから何か余計なこと言ってよ……」
藤川「なあ……俺は藍沢は大丈夫な気がする。だって大丈夫って優秀な男って意味なんだから。」
冴島「え?それほんと?」
藤川「それ緋山のエボラ事件と同じリアクションじゃね?……意味は分からないけど……」
冴島「そお?……ってやっぱり余計なことだった……」
白石「フフフ。……とにかく……早いうちに藍沢先生も緋山先生もお互い相談してくれあちゃんの脳腫瘍手術するかしないのか決めてね!」
緋山「分かった。」
藍沢「ああ……。」
医者は神様にはなれない。
6年間医学部で沢山の症例の資料や論文で勉強してきたはずなのに全ての命は救えない。
そしてこれで良かったのか…この判断で良かったのかと後悔しながら優秀な医者に成長していく。
だがこれは他人の命の場合であってこれが身内の命になると感情移入してしまい医者は今まで出来ていたことが出来なくなり冷静さを失う。
藍沢「緋山、どうしたらいいと思う?」
緋山「藍沢が私にどうしたらいいか聞いてくるなんて珍しい~」
藍沢「俺は真面目に聞いてるんだ!」
緋山「分かってるよ。私は脳腫瘍、全部取り切らなくていい。あとはくれあを苦しめたくは無いけど抗がん剤で……。くれあには生きていて欲しい。」
藍沢「俺も出来るだけあまり無理しないように取り切れるようにする。あとは抗がん剤で……。」
緋山「うん…。でも何でくれあばっかり……」
藍沢「だよな……。畸形嚢腫が良くなったと思ったら脳腫瘍って……。でも1番苦しいのはくれあだ。だからくれあにもオペの話をしなければならない。俺達はくれあの親でもあるが医者でもある。」
緋山「そうだよね……。私、橘先生と三井先生に親として医者としてどうしたらいいか聞いてみる。」
藍沢「ああ、分かった。」
それから1週間。
紅蒼の希望で手術はまだしないことになったがもしもの条件としてもし痙攣を起こしたらオペをすることを紅蒼は約束した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!