第5話

勝負
304
2022/11/23 11:00
校長
えー天候にも恵まれてね、
良き体育祭日和になったのではないのかな。
みんな水分補給をしっかりしてね。
まだ六月って言っても
熱中症になる可能性はあるからね。
それから……
葵衣
葵衣
(お前の話で熱中症になるわ……)
体育祭当日、雲一つない快晴に恵まれた。
まだ六月とはいえ暑い。暑すぎる。
早く終わんねぇかな校長の話。
周
ねーねーあおい
葵衣
葵衣
あ?
周
校長先生、頭にも
日焼け止め塗ってるって知ってた?
葵衣
葵衣
は……?
周
ほら、頭皮に直で日光当たるじゃん?
髪の毛ないから
だから頭にも日焼け止め塗ってるんだって
クソどうでもいい……。
つかなんでお前はそれを知ってんだ。
葵衣
葵衣
てかお前何でここにいんの?
『村宮』だからもっと後ろだろ
周
かわってもらった
葵衣
葵衣
かわるとかねぇから
出席番号順に
周
あ、話し終わったみたい
周
最初100m走だよね? がんばってね!
葵衣
葵衣
お前はほんとに人の話聞かねぇな
だが村宮の言う通り、
最初の競技に出る生徒がアナウンスで呼ばれていた。
100m走。俺の出るやつだ。
葵衣
葵衣
(本来ならこれ出て
終わりのはずだったんだけどな……)
村宮のせいで今年は二種目出ることになってしまっている。
この恨みはぜってぇ忘れねぇ。
周
せいやも頑張ってね!
司
セッチとアイアイ、おんなじ組らしいじゃん
成也
成也
おう
まずは100m走に集中しなければ。
やるなら徹底的に。目指すは勝利のみ!





周
あおい元気出して! 速かったよ!
100m走を終えた俺は
村宮にめちゃくちゃ慰められている。
何故かって?
三浦に負けたからだよ!!!!
周
二位ってすごいじゃん!
ワンツーうちのクラスでとれたじゃん!
すごい!
葵衣
葵衣
下手な慰めはやめてくれ……
周
なんで! すごいって!
葵衣
葵衣
逆に惨めになる……
司
体力テストの時も思ったけど、
アイアイ意外と運動できるんだね~
だから意外とって失礼だろ……。
和田の言葉に反応できずにいると、
そっと肩がぬくもりに包まれる。

顔を上げれば、そこに立っていたのは三浦。
成也
成也
…………
何も言うことなく、俺の肩をぽんぽん、と
二回叩いて去っていく三浦。
…………は?
葵衣
葵衣
何だあいつ!
バカにしてんのか!!
俺に勝ったからって余裕ぶりやがって!
俺が! 負けたからって!!
『ほざいてろ負け犬が』ってやつか!?
耳元で遠吠えしてやろうか!!
司
落ち着いて、アイアイ
葵衣
葵衣
あ!?
司
あれは『いい勝負だった』って意味だよ
葵衣
葵衣
……あ?
司
言ったでしょ、セッチは関西弁封じられると
語彙力なくなっちゃうって
周
あおいと一緒に走るの
楽しそうだったよね、せいや
二人に言われ、去っていった三浦の背中を見る。
誰とも話すことなくまっすぐ
自分の席に向かっていく三浦の背中は、
いつもと変わっている感じはしない。
葵衣
葵衣
……いや分かんねぇだろ……
司
まぁまぁ、セッチは
分かるようになると分かりやすいよ
周
せいやは誤解されやすいけど、
すっごく優しいんだよ!
葵衣
葵衣
優しい……?
村宮が何を言ってるのかわからない。
三浦にそんな素振りなんて……
いやまて、確かにあいつはゲームセンターで
村宮に対して面倒見の良さを発揮はっきしていた。
ただそれが優しいにつながるかは……。
葵衣
葵衣
いや! 終わったことをいつまでも
引きずってもしょうがねぇ!
次の勝負のことだけを考えろ俺!
周
おー! あおい前向きだねぇ、いいねぇ
司
単純に面倒になって
考えるのやめただけでしょ
何を言われても構わん!
俺にはまだ二人三脚が残ってる!
やりたいかどうかと言われれば別にやりたくはないけど、
やるからには全力でやるのみ。
目指すは一位のみ!!!



周
僕が合図出すからね!
それに合わせてね!
葵衣
葵衣
はいはい
周
やー緊張しちゃうね
巡ってきた二度目の出番。
俺の右足は、村宮の左足と結ばれ、
ぴったりくっついている。
周
僕ずっと二人三脚あこがれてたんだよね~。
去年も出ようと思ったんだけど
早々に埋まっちゃってさー
周
そしたら司が体育祭実行委員になると
良いよって教えてくれたの
男子生徒1
あ、村宮~!
村宮の話を聞き流しながら精神統一をしていれば、
話し掛けてきたのはいかにもチャラそうな男たち。
他クラスの一軍にも話しかけられるって
ホントにやばいなこいつ。
関わりたくねぇ。
周
おんなじレースだよね? がんばろうね~
男子生徒1
俺らさぁ、彼女見てんだわ
周
彼女さん? できたんだ! おめでと~!
男子生徒2
そうそう! 今ラブラブなわけ。
だからかっこいいとこ見せたいわけよ
男子生徒1
そういう事で村宮クン
ちょっと手加減してくんね?
周
そっかぁ、彼女さんには
かっこいいところ見せたいよね~!
葵衣
葵衣
(話の流し方下手くそか……?
いや俺が言うことでもないけど……)
出来るだけ影を薄くして絡まれないようにしているうちに
競技が始まった。
BGMに負けないほど大きな歓声かんせいで、
応援が随分ずいぶんと盛り上がっているのが分かる。

そういや去年も盛り上がってたなこの競技。
第一レース、第二レースときて、ついに俺らの番。
司
宮ちゃーん、アイアイ~、がんばってー
成也
成也
……
葵衣
葵衣
(くっそ三浦め……
腕なんか組んで余裕そうに見やがって……!)
100m走で負けたのが悔しすぎる。
だからこそ、この二人三脚では絶対に一位を取りたい!
アナウンス
いちについて、よーい……
ピストルの音と共に走り出す。
距離は400mと長め。
トラック一周するから体力の温存は大事だけど……。
葵衣
葵衣
おい、お前もう少し速く走れねぇの!?
周
え~、僕頑張ってるよ?
葵衣
葵衣
練習の時、お前こんなに遅くなかっただろ!
今日の本番を迎えるまでに何度か練習をしたが、
村宮の足が遅すぎると感じたことはない。
むしろ速い方だった。
なのに今は……。
葵衣
葵衣
(遅すぎる……ドベじゃねぇか……!)
周
わっ!
葵衣
葵衣
ぅお!
バランスを崩した村宮に引きずられて、
一緒に地面へ倒れこむ。

くそ……立ち上がるのにも時間かかるのに……!
周
ごめんごめん、大丈夫?
葵衣
葵衣
お前……
男子生徒1
『ちょっと手加減してくんね?』
アイツが言ったこと、真に受けてんのかよ!
ふざけんなよ!
葵衣
葵衣
おい! 手ぇ抜くとかふざけんなよ!
思いっきり村宮の腕を引っ張れば、
抵抗することなく起き上がってくる。
この体幹があってこれだけ遅いってことは
ねぇだろふざけやがって!
葵衣
葵衣
お前が俺と一緒に
二人三脚やるっつったんだろ!
なら責任取って本気出せよ!
周
え……
葵衣
葵衣
やるなら勝つしかねぇんだよこのバカ!

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