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第1話

宣言
2,162
2022/10/26 11:00
?
初めまして!
僕たち親友になろう!
あぁ神様。
俺はずっと一人でいると誓ったのに。
どうしてこんなことになっているのでしょうか。





葵衣
葵衣
じゃあ行ってきます
祖父
ん。気を付けろよ。
今年こそ友達の一人や二人連れてこい。
将棋も囲碁も弟子が増えなくて敵わん
葵衣
葵衣
弟子なんて俺だけでじゅうぶんだろ。
……今年も一人でいるんだ俺は
桜が舞う季節。
高校二年生になった俺は、
いつも通りじいちゃんに見送られて
学校に向かった。


じいちゃんには悪いけど、
俺は今年も友達を作る気はない。
中学から貫いてきた一人生活を今年も続けるんだ。
ボッチなんじゃない。

ていうか、ボッチが悪いって誰が決めたんだよ。




そう、思ってたのに。
?
あ!
葵衣
葵衣
え? うわ!
桜の木が並ぶ通学路。
その角を曲がった瞬間、誰かにぶつかった。
桜よりもずっと色鮮やかな赤い髪。
耳より少し長い位置まで伸びた髪を
ハーフアップに結った男。
俺とおなじ制服を身にまとったそいつの顔は、
随分と幼い印象だった。

その大きな目に映る桜の花びらをぼんやり見ていると、
そいつはさらに目を大きく見開いた。
?
……
数秒、沈黙が流れる。
その間もじっと見つめられるのが居心地悪くて、
俺はさっさとその場を退散することに決めた。
葵衣
葵衣
……すんません
?
あ、ま、待って!
だが赤髪の男に腕を取られ、
その場からいなくなることは叶わなかった。
葵衣
葵衣
……なんですか
?
あおいくん?
相原あいはら葵衣あおいくんだよね?
葵衣
葵衣
え? そう、だけど……
あんた誰?
こんな男、知り合いにいたか?
ボッチ生活をしているとはいえ、
さすがにこんな目立つ見た目の人間が身近にいれば
覚えているはず。
だが全く記憶にない。
だというのに、
目の前の男は嬉しそうにぱぁと笑顔を見せたあと
?
初めまして!
僕たち親友になろう!
なんて宣った。
葵衣
葵衣
は……?
?
親友! 親しい友と書いて親友!
ベストフレンド! どう?
葵衣
葵衣
あー……失礼します
?
まってまって! 怪しくないよ!
ねぇってばー!
後ろから聞こえてくる声を無視しながら、
俺は全速力で学校へと向かった。

何が「怪しくない」だよ! 怪しさしかねぇだろ!
初対面で親友ってなんだよ!
新学期そうそうやべぇ奴に声かけられちまった……。
制服からして絶対同じ学校だよな……、
あいつにだけは見つからねぇようにしねぇと……。






?
もー、足速すぎない? びっくりしちゃった!
一生懸命追いかけたのに、
全っ然追いつけないの!
葵衣
葵衣
……
?
運動部にでも入ってる?
昔何かしてた?
周
あ、僕は村宮むらみやあまね
周でいいよ!
葵衣
葵衣
…………
あぁ……嘘だと言ってくれ……
なんで、なんでこんなやつと……!


同じクラスなんだ!!!!!



周
あおい? どうしたの突っ伏して ……
お腹でもいたい? 保健室行く?
葵衣
葵衣
……ほっといてくれ……
周
無理しちゃだめだよ!
痛いなら保健室行かないと!
葵衣
葵衣
痛くない……
周
ほんと? 大丈夫?
俺のまわりをうろついて、
心配そうにのぞき込んでくる村宮と名乗る男。
その気遣いが出来るなら、
俺が話し掛けんなオーラ出してるのを察してくれ!
いや、こういうやつは空気なんて絶対に読まない。
俺が逃げなければ、
こいつは絶対にしつこく話しかけてくる。

ならば再び退散あるのみ!
周
どこ行くの? やっぱり保健室?
葵衣
葵衣
……
答えることなく教室を出ても、
当たり前のようについてきた。
なんなんだこいつ……しつこすぎないか……。
周
話せないくらい辛い?
僕ついてくよ!
葵衣
葵衣
いい
周
遠慮しないで!
親友っていうのは……
葵衣
葵衣
親友になった覚えはない
周
うん、だからこれから……
葵衣
葵衣
あのな、はっきり言わせてもらうけど……!
遠まわしに言っても無駄だとわかった俺は、
廊下を歩く足を止め振り返った。
その先で見た村宮は、何故か笑顔だった。
葵衣
葵衣
……なんでそんな笑顔なんだよ
周
うん?
いや、こっち見てくれたなぁって!
葵衣
葵衣
……
なんだこいつ……何だこいつ!
人の話聞かな過ぎだろ!
葵衣
葵衣
……頼むから俺に付きまとわないでくれ
……頭が痛くなる……
周
えっ! お腹じゃなくて頭だったの!?
辛いよね、今すぐ保健室に……
葵衣
葵衣
あぁ……もう……なんなのお前……
周
え? 僕2年3組の村宮周で……
あっ! 部活は帰宅部だよ!
葵衣
葵衣
そういう事じゃねぇ……
思わず頭を抱えれば、
村宮はまたわたわたと俺の様子を気にしている。
人と話すのってこんなに疲れることなのか……?
俺がおかしいのか……?
いや、多分こいつがおかしいんだよな……。
葵衣
葵衣
あー……帰宅部の村宮くんだっけか?
周
! そう!
周でいいよ!
葵衣
葵衣
村宮
周
村宮くんよりはいいかな! 
どうしたのあおい!
あぁもう、こいつと話すと
体力がごっそり持っていかれる……。
一度ため息をついて村宮に向き合う。
キラキラした大きな目で見つめてくる様は、
まるで聞き分けのいい大型犬のよう。
葵衣
葵衣
俺たちが親友になることは絶対にない!
俺の宣言は、廊下いっぱいに響き渡った。

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