前の話
一覧へ
8月11日。今日は特に何もない普通の日...のはずだった。
僕、白咲 雪。帝国高校に通う高校3年生だ。
成績優秀で友達は結構多くて、身長は159㎝と少し小さいくらいで普通の高校生だった。
少なくとも3年前までは。
3年前の今日冬兄...白咲 冬が、行方不明になったからだ。
--------------------------------
「はぁ…」
放課後の図書室に響く自分のため息。
ため息を聞くたびに兄といつも図書室で遊んでいたのを思い出す。
これ以上いると涙が出そうになるため手に持っていた誕生花の本をしまい図書室を出た。
これからあんなことが起きるとは知らずに。
「雪、もう帰るのか?いつもより速いな」
「あっうん」
そう友達に言い学校を出た。
帰り道、自分のつけている十字架のネックレスを見ながら帰っていた。
(何年前に貰ったんだっけこのネックレス…そういえば冬兄もなんかのネックレスつけていた
っけ)
そう思っているといつの間にか家についていた。
「ただいま」
僕は今出せる精一杯の元気な声で言った。
理由?そんなの一つだ。
親は冬兄の事を凄く可愛がっていて冬兄が引きこもったときも助けていたぐらいだ。
そんな可愛がっていた人がいなくなったら…せめて自分だけでも元気でいればまだ助けにな
ると思ったからだ。
「おかえり」
母は笑顔で言ってくれた。
(なんか安心したら疲れたな…)
そこで僕の意識は途切れた。最後に見えたのは…
「冬…にぃ?…」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!