彼女を見上げれば、顔は真っ赤になっていて目には涙を溜めている。
手を頬に添えれば、涙が流れ落ちてきた。
今以上に涙を流す彼女。
待って下さい。
嫌じゃないんですよ。
けど、なんというかですね…
これは、うん。
久々過ぎて多分なんですけど、欲?
流石に、さっき付き合ったばかりなのに欲まで出てこられると…
彼女をとりあえず落ち着かせなければと思い、頭を撫でてみたり、涙を拭ったりと思いつく限りの事をする。
そう言えば、やっと笑ってくれた。
前もそうだったが、嬉しいのに恥ずかしい。
彼女の顔を見れずに目を逸らしてしまう。
…そんな事言わなくて大丈夫です。
とてつもなく恥ずかしいので。
目を逸らした先に、見覚えのあるキャンドルホルダーが置いてあった。
…届いていたんだ。
その一点をぼーっと見つめてしまう。
何も言えなかった。
あのキャンドルホルダーを送った後、自分でも中途半端な事をしたと後悔していた。
突き離し切れなかった自分に腹が立った。
そして、戒めるように刺青を増やし、今では腰や胸にまで彫ってある。
彼女は、ゆっくりと私の頭を撫でる。
今まで、散々「住む世界」が違うと言われ、なぜ違うと言われるのか答えを探した事もあった。
けど、分からなくて結局手離したり見捨ててきた。
彼女の言葉で…
いや、彼女の存在で答えが出たような気がする。
私の「住んでいる世界」にあいた大きな穴は、少しずつとじていく。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。