第119話

118 眠い朝
1,886
2022/01/13 16:16
くすぐったいです。
すると何故か睨まれた。
ミナ
ミナ
細過ぎ。
ちゃんとご飯食べてないやろ?
…いや。
あなたも充分細いですが?
少し忙しかったので…
「あり得んぐらい細い」とか、他にもぶつぶつ何か言っていたが聞こえないふりをした。


数分後…
静かになったと思い、下を見ると私を抱き締めたまま眠っていた。
普段は大人っぽいのに、寝顔は子どものようであどけなさが残っている。


起こさない様にゆっくり動き、スマホを確認する。
仕事のメールを一通り読み終え、時間を見れば、まだ朝の6時。


彼女の額に軽く唇を落とし、もう一度眠りについた。


何時間経っただろうか。
気持ち良く寝ていたのに、頬に違和感を感じる。
目を開ければ、人の頬に指を刺してニヤニヤしている顔が見えた。
ミナ
ミナ
起きた。
…何してるんですか?
ミナ
ミナ
なかなか起きやんから、
寂しくなって起こした。
元々低い血圧が、寝起きで更に低くなっている。
ぼーっとしている頭は上手く機能しない。
ミナ
ミナ
…怒ってる?
恐る恐る様子を伺う彼女の頭を軽く撫でれば、直ぐに笑顔になった。
…怒ってません。
少し、頭がぼーっとしてるだけです。
血圧が少しずつ上がってきて、それと同時に頭も働き始める。
ミナ
ミナ
良かった…
…あのさ。
どうしましたか?
なかなか言葉を伝えてこない彼女。
人の胸で、ずっとモジモジしている。
そんな姿を暫く見ていると、こちらの視線に気付いたのか目が合った。
ミナ
ミナ
あの…
飛行機の時間まで一緒に居りたい。
…ダメかな?
こういう時…
必ず遠慮しがちになる彼女。
軽く頷けば、はにかむように微笑み、また私の胸に顔を埋めている。
彼女の心地よい体温に、また睡魔に襲われ始めた。
ミナ
ミナ
眠いん?
今まで少し下に居た彼女。
私と目線が合う所まで移動し、頬を撫でられる。
その顔は優しくて、私を落ち着かせる。
…寝たら寂しくなりますか?
ミナ
ミナ
寂しくなったら起こす。
だから、寝ていいよ?
瞼を閉じれば、唇に柔らかい感触がそっと触れた。


この人は本当に…
こんな事されたら、心臓がうるさくなって寝れなくなるのが分からないのか。


薄ら目を開ければ、懲りずにスマホをこちらに向けている。
私の横に居たクマのぬいぐるみを彼女との間に無理矢理ねじ込み、そのクマごと彼女を抱きしめた。
ミナ
ミナ
えっ?
顔見えへんやんか。
見なくて大丈夫です。
何とか私の腕の中から逃げ出そうとしている。
少し腕の力を弱めれば、クマのぬいぐるみを優しく定位置に置き直し、私の腕の中に戻ってきた。
瞑っていた目を片目だけ開ければ
ミナ
ミナ
…合図してる?
恥ずかしそうに聞かれた。
片目だけはミナさんが出す合図です。
そう言って、彼女の髪を耳にかける。
すると、不意に鳴るノックの音。
彼女は、バッと起き上がって私に布団を頭から被せる。


…私がここに居るの、みんな知ってるのに?
サナ
サナ
みーたん!
おはよう。
勢いよく開けられたドアと、それに比例するようなサナさんの声。


ここから、数分間。
彼女達の会話を聞く事になる。

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