すると何故か睨まれた。
…いや。
あなたも充分細いですが?
「あり得んぐらい細い」とか、他にもぶつぶつ何か言っていたが聞こえないふりをした。
数分後…
静かになったと思い、下を見ると私を抱き締めたまま眠っていた。
普段は大人っぽいのに、寝顔は子どものようであどけなさが残っている。
起こさない様にゆっくり動き、スマホを確認する。
仕事のメールを一通り読み終え、時間を見れば、まだ朝の6時。
彼女の額に軽く唇を落とし、もう一度眠りについた。
何時間経っただろうか。
気持ち良く寝ていたのに、頬に違和感を感じる。
目を開ければ、人の頬に指を刺してニヤニヤしている顔が見えた。
元々低い血圧が、寝起きで更に低くなっている。
ぼーっとしている頭は上手く機能しない。
恐る恐る様子を伺う彼女の頭を軽く撫でれば、直ぐに笑顔になった。
血圧が少しずつ上がってきて、それと同時に頭も働き始める。
なかなか言葉を伝えてこない彼女。
人の胸で、ずっとモジモジしている。
そんな姿を暫く見ていると、こちらの視線に気付いたのか目が合った。
こういう時…
必ず遠慮しがちになる彼女。
軽く頷けば、はにかむように微笑み、また私の胸に顔を埋めている。
彼女の心地よい体温に、また睡魔に襲われ始めた。
今まで少し下に居た彼女。
私と目線が合う所まで移動し、頬を撫でられる。
その顔は優しくて、私を落ち着かせる。
瞼を閉じれば、唇に柔らかい感触がそっと触れた。
この人は本当に…
こんな事されたら、心臓がうるさくなって寝れなくなるのが分からないのか。
薄ら目を開ければ、懲りずにスマホをこちらに向けている。
私の横に居たクマのぬいぐるみを彼女との間に無理矢理ねじ込み、そのクマごと彼女を抱きしめた。
何とか私の腕の中から逃げ出そうとしている。
少し腕の力を弱めれば、クマのぬいぐるみを優しく定位置に置き直し、私の腕の中に戻ってきた。
瞑っていた目を片目だけ開ければ
恥ずかしそうに聞かれた。
そう言って、彼女の髪を耳にかける。
すると、不意に鳴るノックの音。
彼女は、バッと起き上がって私に布団を頭から被せる。
…私がここに居るの、みんな知ってるのに?
勢いよく開けられたドアと、それに比例するようなサナさんの声。
ここから、数分間。
彼女達の会話を聞く事になる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。