第120話
119 交渉成立
いや、起きてます。
ちゃんとって…
でも、サナさんの挑発のお陰でもある。
彼女は、きっと真っ赤になって下でも向いているんだろうな。
やっぱり。
ケラケラ笑うサナさんの声だけが聞こえる。
痛っ!
布団にくるまっている足をバシッと叩かれた。
もう一発私の足を叩き、サナさんは部屋から出て行った。
彼女が申し訳なさそうに布団をめくる。
さっきの2発で、完全に目は覚め起き上がる。
彼女の手を握り、少し力を込めればそれに応えるかの様に握り返された。
そう言いながらも飛び込んでくる彼女を受け止める。
彼女を抱き締めたまま、カーテンの隙間から外を見ると天気が良い事が分かった。
ある場所が思い浮かび、彼女に出掛けないかと提案してみる。
そう言ってテキパキと準備をし始める彼女。
私は、昨日買い物に行った時に買った服に袖を通した。
新品の匂いがして、ボディバッグからいつもの香水を出す。
二、三回ふれば彼女が「葵の匂いがする」と嬉しそうに言っていた。
化粧をしようか悩んでいる彼女に声をかけて、昨日買った物を運ぼうと廊下に出るとサナさんに会ってしまった。
…ニヤニヤしている。
「大丈夫」と言う前に持って行かれた荷物。
仕方なくサナさんの後を着いて行く。
一晩中、路駐した車が一緒の所にあった事に一安心してトランクに荷物を入れる。
ケラケラ笑いながら、私の肩をバンバン叩いている。
存在を忘れていたタバコ。
思い出せば急に吸いたくなる。
車内で吸おう…
そう思い車に乗り込めば、サナさんも一緒に乗り込んできた。
とりあえず、電源を入れ深く肺に入れ込む様に煙を吸い込んだ。
横で明るく笑っているサナさんに、1つ頼み事があり話してみた。
頷けば、サナさんはスマホを取り出し誰かと電話をし出した。
次、日本に来た時にメンバー全員に好きな物を奢るという事で交渉成立に至った。
タイミング良くスマホが鳴り、彼女を玄関まで迎えに行く。