第121話
120 繋いだ手
玄関から出て来た彼女に、早速謝る。
勝手にサナさんを誘い、ジヒョさんにまで一緒に行ってもらう事を彼女に伝えず決めていた。
バタバタと準備するジヒョさんとサナさんを彼女と玄関で待つ。
もう一度、彼女に謝れば「気にし過ぎ」と笑われた。
準備が終えた2人が出て来て、車に乗ってもらう。
…確かこの辺りだったはず。
自分の記憶を頼りに、車を走らせる。
特に迷う事なく目的地に辿り着いた。
一度しか来た事はないが、ここは特別な場所。
彼女に初めて仮面をずらされた場所。
きっと、ここに来た日から彼女に惹かれ始めたんだと今になって思う。
車を停め、外に出る。
ジヒョさんの手を引き、買い物に行ったサナさん。
その姿をぼーっと見つめている彼女に声を掛ける。
彼女の言葉に頷き、歩き出そうとすると彼女に手を差し出された。
その手を取り、ギュッと握れば嬉しそうに笑っていた。
なるべく彼女の歩くペースに合わせるが、彼女は私より半歩後ろを歩く。
…知らなかった。
彼女があの日から私の事を想ってくれていただなんて。
こんな時、何て言っていいか分からない。
繋いでいる手に力を込めれば、彼女が嬉しそうに笑った。
ジヒョさんの声がして、パッと離される手。
それが何だか寂しくて離された手をもう一度掴む。
咄嗟に出た自分の行動に、どんどん恥ずかしくなる。
私の目を見つめている彼女を見ないようにすれば、「可愛い」と言われ、さっきよりも強く握られた手。
今まで繋がれていた形とは違い、お互いの指の一本一本が絡み合う形になっている。
その形が、私の心臓を速くさせた。
サナさんとジヒョさんが居る所まで行き、手を離そうとするが今度は逆に離してもらえない。
そのままの状態で座ろうとしていて、従うように近過ぎる距離で隣に座る。
3人で楽しそうに韓国語で話してるのを聞いていると仕事用のスマホが震えた。
その言葉に、スッと手が離れ私は1人歩きながら電話を取った。