第117話
116 反則
後日ちゃんと話すから…
自分から掛けたくせに、親友の言葉を待たずに電話を切った。
私の横にちょこんと座る彼女。
…絶対言いません。
調子に乗るので。
彼女の言葉に苦笑いで返せば、「素直になれ」と軽く頭を叩かれた。
なぜ、そんな事を気にするのだろうか?
刺青が嫌いなら、見ようとしないだろうし…
何か意味があるのかと聞かないと思う。
という事は刺青自体ではなく、別の意味で言っている?
あー、そういう事。
見れば分かるほど赤くなった顔、どんどん音量が下がる声。
それを隠すように顔を膝に埋めて小さくなっている。
彼女の頭を撫でれば、少し顔を上げてくれた。
潤んだ瞳で、若干の上目遣い。
その顔…狡すぎる。
てか、存在自体が反則?
…もうね、可愛い過ぎて厄介。
今日一日で、どれだけの感情を思い出すのだろう。
どれだけ、彼女に好きという感情を伝えられるのだろう。
彼女はさっき以上に赤くなり、耳まで真っ赤になっている。
そう言えば、思いっきり突き飛ばされた。
彼女の予期せぬ行動に、床に倒れ込む。
倒れた時に頭をぶつけ、思わず声が漏れてしまう。
その声に反応し、心配そうに私に近付いてくる。
私の頭を撫でようとする彼女の手を取り、ゼロ距離まであと数センチ…
ただ真っ直ぐ彼女の瞳を見つめれば、元々綺麗な瞳が潤んだ事でより一層綺麗になっている。
彼女の頬に手を添える。
私の上で、本気で恥ずかしがっている彼女。
頬に添えた手をゆっくりと動かし、唇を指でなぞってみた。