𝐬𝐨𝐨𝐛𝐢𝐧 side
『.....何が?』
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昨日テヒョナに言われた言葉が、頭に張り付いて離れ
ない。
何のことかわからなかった。僕は、いつも通りだ。
——— いつも通り。だと思いたいだけなのかもしれない。
自分でも分かっていた。最近歌やダンスの練習の時も、
音楽番組の収録の時も、
雑誌撮影の時も。
いつもどこかで、漠然とした不安を抱えながら過ごして
いる自分がいる。
何がそんなに不安なのかは、自分でもよく分からなかった。
1番の問題は、その不安が、練習中に歌詞や振り付けの
ミスとして現れるようになったことだ。
前までなら絶対に間違えないようなところを間違える。
覚えていたはずの振り付けを忘れる。
そういえば昨日も日本語の先生に「一番単語が抜けて
る」って注意されたっけ。
いつから、何がきっかけでこうなったのか。
なんで僕はこの仕事をしているのか。僕にこのグループ
のリーダーが務まっているのか。この先自分達はどうな
っていくのか。僕のファンは僕にどこに惹かれて僕を好
きでいるのか。僕はなんのためにここにいるのか。僕は誰
に何を伝えたいのか。他のメンバーに置いて行かれていな
いか。ファンの期待に応えられているか。
いろいろなことを考えて、考えれば考えるほど
何も、、 分からない。
-in DANCE STUDIO -
💁♀️「じゃあ、もう一回ここから最後まで通すから。」
5月にカムバするための準備が着々と進んでいる。
今やっているのはタイトル曲の振り付けの最終確認。
MVの撮影を3日後に控え、残り少ない練習時間の中で、
改善できるところを改善していかなければならない。
曲が流れ始める。
........??
——— 足が、動かなかった。
普通に、踊ろうと思った。
曲が始まる前までは頭の中でたしかにシミュレーション
出来ていた。
なのに今は、頭が真っ白になっている。
次の動きが思い出せない。
立ち位置はどこだっけ。
混乱して頭が働かない。
こんなことは、初めてだった。
曲が止まる。
それでも、動けなかった。
今がどういう状況なのか、頭がパニックを起こして理解
できない。
ようやく自分がとんでもないミスをしてしまったと
気づいた時には、メンバーに
「.....ごめん。」とだけ言って、
練習室から逃げるように飛び出していた。
さっきから、スマホの通知がうるさい。
見てみると、何十件もカトクが送られて来ていた。
メンバーみんな、僕を心配してくれている。
テヒョナからのメッセージを見て、初めて気が付いた。
僕は、つらいんだ。
そう思った瞬間、僕の目から涙が溢れた。
自分では、気づけなかった。ずっと心に張り付いていた
感情の正体に。
それほど、僕の心はどん底まで落ちていた。
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やっと涙がおさまって来たころ、ふと思った。
テヒョナになら、話してみてもいいかもしれない。
僕の心の中のごちゃごちゃした思いを、聞いてくれる人
がいるんだから。
僕はテヒョナに、「散歩しよう。」とだけ送って、
宿舎の方向に向かって歩き始めた。
























編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。