「100円だよ」
おじさんは男の子から100円をもらいポイ(すくうやつ)を渡す。
「ありがとう!」
男の子はそう言い私の隣にしゃがんだ。
私は男の子がどうやってとるのか気になって、じっと見つめていた。
「あっ、あれにしよ!」
男の子が選んだのは、私がずっとさっきから奮闘しているあの赤い金魚だった。
(絶対1回じゃ無理だよ)
私はそう思っていた。
なのに、
「よっしゃ!」
男の子は1発で軽々とそいつをとった。
私はすごいという気持ちと自分の欲しかったものをとられたということ悔しさで男の子のことを無意識にずっと見ていたのだろう。
「ん?」
見つめられていることに気づいた男の子は私を見て首をかしげた。
私は慌てて視線をそらし、新しい獲物を探した。
けど、あの赤い金魚と同じぐらい欲しい金魚はなかった。
今思えば金魚なんてどれでも一緒なのに…
買ったポイは使いきらなきゃと、私は適当に金魚すくいを始めた。
でも、ひとつもとれなかった。
そして、いつのまにか君はいなくなっていた__
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。