第25話

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2022/05/25 07:13





楽しそうに線香花火に火をつけて、口を開く





あなた「じゃあね〜正直に答えてね!...蛍は私とセックスしたいの」


月島「っは!?」


あなた「あはは、すごい顔!」





あぁ、また始まった、と僕は思った



高校の頃からたまにこうやって僕が答えづらいのを分かって反応を楽しむような質問をする



変わらない





あなた「はら、ちゃんと答えて!」


月島「...聞いてどうすんのさ」


あなた「どうもしないよ、聞きたいだけ」


月島「...あなたがしたいなら応えたいと思うくらいだよ、そりゃ僕だって男だし考える時はあるけど、あなたを傷つけてまでしたいとは思わない」


あなた「良い答えだ」


月島「チョット、ふざけてんの?」


あなた「失礼な〜大真面目だよ!じゃあ次ね、蛍は私のことが好きなの」





なんの拷問だこれは



でも、聞きたいと言うなら答えようと思うくらいには、僕はやっぱりあなたに甘い





月島「...卒業式に言ったとおりだよ。...いや、それは違うかも、今はもっと、す、きだと思ってるケド、」


あなた「あは、顔真っ赤」


月島「...ホント後で覚えてなよ」


あなた「まだ落ちないね、じゃあ次ね」





なんでこんなときだけ長いんだよ、線香花火





あなた「蛍は私と付き合いたいの」


月島「...まぁ、そういうことになるね」


あなた「なんで」


月島「は?なんでって?」


あなた「そのままの意味だよ。付き合って、どうするの」





あなたの真面目な顔が線香花火に照らされて危うげに揺れる



その時、線香花火の火が落ちた





あなた「あ、落ちちゃった。じゃあ次また蛍の番」





何もなかったようにニッコリ笑って、僕に線香花火を手渡した



残りは5本



あなたはゆっくりと火をつける





あなた「は、どーぞっ」


月島「...あなたは、"付き合う"ってどういうことだと思ってるの」





ずっと聞きたかったこと



高校の頃から、思っていた



多分、あなたにとって恋人とかカップルとかって、幸せの象徴じゃないんだろう



案の定、聞こえてきた答えは悲しいものだった





あなた「...私と潔子のお父さんは、ずっと浮気してるの。お母さんも気づいてると思う、私が気づくくらいだし。まぁよくある話だけどね」


月島「......」


あなた「一生の愛を誓ったんじゃなかったんかい!ってね(笑)でも浮気してるのに、離婚はしない。たぶん、私達がいるから。仲いい家族だと思うよ、でもそこにあるのは多分愛じゃない。潔子は気づいてない。だから私は"手が掛からない娘"でいたいの。パパもママも大好きだから。愛されていなくても、私は好きだから」




線香花火が、もう落ちる、火花が散り終えて真っ赤な玉だけが揺れている




あなた「だから私は彼氏もいらない、別れて泣いてしまうような人は作らない。そんなことで私の心を揺さぶられたくない。私にとって大切なのは、家族がずっと円満に続くことで、そこに私の悩みはいらない」





火が、落ちる



消炎の匂いと、輝きのなくなった、ただの細い棒だけが僕の手に残った









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