まさか本当に家に行くことになるとは
"うちくる?"と言われ、動揺したま思わず"行く"と答えた僕にあなたはまた笑いながら車まで歩いた
途中でスーパーに寄り、お酒とつまみを買う
あなた「あ、あった、見て。カルーア!コンビニだとあんま置いてないからさ、スーパーのほうがいいかなと思ったんだよね」
そんな些細な気遣いに胸が苦しくなって、そんな様子を隠す余裕すら僕にはもうなかった
あなた「そんな顔しないでよ、覚えてるに決まってるじゃん。蛍の好きなものだもの」
へへ、と頬を緩ませる仕草が可愛くて仕方ない
本当に、この人は
こんなにも僕をその気にさせて、これで振られたら一生女なんて信用できなくなりそうだ
__________
月島「...オジャマシマス」
あなた「あは、緊張してる?狭いけどごめんね」
通された部屋は、こじんまりとしているものの綺麗に片付けられていて、
小さなベッド、小さな机、小さなテレビ、部屋の割に少し大きな本棚にずらっと並んだ難しそうな小説たち
...女子の部屋なんて生まれて1度も入ったことないけど
多分、シンプルな方だと思う
どーぞ、と渡されたクッションに座り、机のうえに買ってきたお酒やツマミを並べる
キッチンからコップやお箸を持ってきたあなたが隣にちょこんと座って、少し気まずそうに僕を見た
あなた「あのさ、ここまで来させておいてこんな事言うのもアレなんだけどさ、」
申し訳なさそうな顔をするあなたに、僕は身体を強張らせた
まさか、またフラれるんじゃないだろうな
そんな心配をよそに、あなたから出た言葉はあまりに可愛いもので
あなた「私、飲んじゃったら送ってあげられないし、もう終電も危うい時間だし、その、なんていうか、帰るつもりなら私飲まないけど...いや、私は一緒に飲みたいなって、でも、帰してあげられなくなっちゃ....」
その言葉を言い終える前に、僕は無理やりあなたのことを抱き寄せた
月島「帰れって言うなら歩いて帰るケド。あなたは僕に帰ってほしいの」
あなた「...ねぇ、蛍心臓バクバク言ってるよ」
月島「ほんとウルサイ、ちょっとくらい空気読んでよね」
僕の腕の中にすっぽりと収まるあなたの小ささに、正直心臓はもういつ破裂してもおかしくないくらいの爆音で。
クスクスと笑う振動が、胸をくすぐる
あなた「ねぇ、蛍」
月島「なに」
あなた「蛍って、私のこと大好きだよね」
月島「っ...だから何?」
あなた「私ね、彼氏が欲しいとか全く思わないの」
月島「...あなたは、僕のことどう思ってるの」
あなた「ん〜なんて言うかな、落ち着く人、かな。あと素でいられる人」
月島「誰といても楽しそうにしてるくせに」
あなた「無理やり笑ってるの、気づいてるくせに意地悪だよ」
月島「....そうだね、ごめん」
あなたはまたクスクス笑うと僕の腕の中からするりと抜け出して
飲も、とお酒を注いだコップを持ち上げた
あなた「かんぱーい」
月島「ん...え、なにこれ。普通のカルーアじゃない?」
あなた「嫌いだった?」
月島「いや、普通のより美味しい」
あなた「ほんと?よかった〜少しね、メープルシロップいれてんの。私も好きなんだよね」
そんな他愛もない話で時間が進んでいく
ふとつけたテレビでは日本の離婚率がどうの、というニュースが流れていて、どうでもいいなと思ったのに
あなたはその画面をみてふと、寂しそうな顔をした
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。