第21話

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2022/05/22 07:16





急いで海浜公園に向かうと、案の定あなたが走り寄ってきて





あなた「雨降ってきたんだけど!最悪!」





僕たちは急いで花火を片付け、仕方なくタクシーに乗り込んだ





あなた「せっかく花火できると思ったのに〜...神様の意地悪...」



月島「普段の行いが悪いんじゃない?」



あなた「なにおう!?」





家に着く頃には、雨足は強くなってきて、僕たちは急いでタクシーを降りてマンションに駆け込んだ





あなた「最悪だぁ〜」



月島「とりあえずお風呂入りなよ」




あからさまにテンションの下がったあなたをお風呂に押し込み、僕も受け取ったタオルで髪や服の水滴を拭き取る



ジャー、というシャワーの音がうるさい



いや、音量はそんなに大きくないはずなのに、やけに響いて聞こえる



...仕方ないだろ、好きな人が同じ家の中でシャワー浴びてるんだから




僕はやましい気持ちを押さえるように、ヘッドフォンを耳にかけた










月島「うわっ、!?」



ツ、と首筋に伝った水滴に驚いて振り向くと、意地悪そうな顔をしたあなたが背後に立っていた






あなた「シャワーありがと」






そう言ったあなたはTシャツに短パンというあどけない姿で、メイクが消えて幾分幼く見えるその顔に高校の頃のあなたが頭をよぎる



ドギマギする僕をよそに、あなたはベッドに腰掛け、乱暴に髪をタオルで拭いた






月島「髪痛むよ」


あなた「乾かすのめんどくさいんだよねぇ」


月島「ドライヤーないの」


あなた「あるけどさ〜」


月島「貸して」


あなた「え、」


月島「乾かしてあげる」





ゴォー、と唸るドライヤーの音だけが響く部屋の中で、あなたの髪から辺りに広がる清潔そうな香り



丁寧に、できる限り優しく、あなたの細い髪を掬っては温風をあてる



うるさいドライヤーの音の切れ間から、あなたの鼻歌が聞こえた



なんの歌かまでは分からないけど





月島「はい、終わったよ」


あなた「うわーサラサラだ、すごい!」





自分の髪を触って目を輝かせはきゃっきゃとしゃいでみせるあなた



のハズなのに、少し違和感を感じる



もしかして少し照れてる...?





あなたの感情はわかりにくい、というより多分意図的に隠してる



高校の頃だってそうだったろ



いつも元気なふりをして、でもどこか危うげで





よく見ればこんなにわかりやすいのに、本当にそれに誰も気づいていなかったんだろうか









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