第27話

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2022/05/31 06:04





あなた「まだ、聞きたいことある?」





気づけば辺りは線香花火の煙が充満していて、独特な夏の香りでいっぱいだった





月島「じゃあ、最後」


あなた「最後でいいの?まだ残ってるけど」


月島「いい」


あなた「分かった、なに?」


月島「あなた、僕のこと好きでしょ」





充満した煙にオレンジの光が反射して、薄暗いとほの明るいの中間くらい、和紙に包まれたぼんぼりみたいな柔らかな光が辺りを包む





あなた「...なに、すごい自信じゃ〜ん」


月島「ごまかさないで、ちゃんと答えるってゲームなんでしょ」


あなた「...恥ずかしいんだけど」


月島「さっき散々僕に恥ずかしいこと言わせたくせに」


あなた「ハイハイ、好きだよ〜」


月島「チョット。僕がこんな真面目に...あ、」


あなた「残念、落ちちゃったね」




なんか僕のときだけ落ちるのはやくない?



信じてもいない神様を恨みたくなる



落ちた火花を睨むと、あなたがケタケタ笑った





あなた「ね、さっきの最後で良かったんでしょ?」


月島「最悪...」


あなた「あはは、じゃああと2本は一緒にやろ」





そう言って僕にも花火を持たせて、一緒に火元に近づけた





あなた「...綺麗だねぇ」


月島「花火なんて小学生の時とか以来だけど、悪くないね」


あなた「ホタル見に行ったり、私達光眺めてばっかだね(笑)」


月島「どっちもあなたの気まぐれだケド」


あなた「ふふ、そうかも...ねぇ、蛍」


月島「なに」


あなた「...好きだよ、」


月島「っえ、は!?」


あなた「蛍となら、何も考えずにさ、自分の幸せってやつ追いかけられる気がするんだ」





驚いてあなたの顔を見ると、今まで見た中で一番優しく、幸せそうに微笑んでいるから



もう、本当に僕は振り回されてばかりだな...





ジュ、と音を立てて火花が落ちると同時に、僕はあなたにキスを落とした





月島「...ねぇ、今更なんだけど、僕はあなたが好きだよ。僕と付き合ってくれますか」



あなた「...ほんとに今更」



月島「いつも一言多いよ」



あなた「答えなんて分かってるくせに」





そう言って今度はあなたから僕に触れるだけのキスをする





あなた「鳴かぬホタルが身を焦がす、って言うけどさ、たまには鳴くのもいいかもね」



月島「そうだね、身を焦がしてるだけじゃ何もならないし」



あなた「足、しびれちゃった」





ん〜、と腕を上げて全身を伸ばすあなたを後ろから抱きしめた





あなた「...蛍は蝉みたいに鳴き叫びたい時あるの」



月島「...うん、いま」



あなた「ふふ、私も」





僕の身体にすっぽりと収まるあなたの小さな体に、心臓がウルサイ



でも、不思議とそのいつもより速い心音ですら、心地よく感じてしまう





あなた「ねぇ、さっき捨てちゃったんでしょ?拾う?」


月島「ちょ...ほんとに、もう、僕のことからかうのも大概にしてくれない?」


あなた「え、なに、つけないの!?」


月島「使うけど!!」





まだまだ僕があなたに振り回されるのは変わらないみたいだけど





今度は僕の気まぐれにも付き合ってもらおう



あの図書館の、あの席で



指輪を渡すのは、数年後の話










--第1章fin--









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