毎年のように更新される最高気温。
蒸し暑い外、耳をつく蝉の声。
秋というものは名ばかりで、
数枚の赤や黄色を残して消えてしまった。
だというのに、
夏は終わりを知らない顔をしてやってくる。
朝から光が鋭く、街の影が濃い。
蝉が鳴くたびに空気が振動して、
思考が遠のく。
氷も汗も、触れたそばから溶けていく。
夜になっても、熱は地面に残っている。
星よりも、アスファルトの匂いが強い。
眠れないまま、また朝になる。
カーテンの向こうが白むたび、「まだ夏か」と呟く。
夏は苦手だ。早く過ぎてしまえ。
そんなことを思いながら、
1人見上げる行合の空。
夏が恋しい。青い、青い、あの夏が。
記憶の中の夏は、
どうしてこんなに涼し気なのか。
利き手に虫取り網、ポケットには100円。
竹林、長い長い階段、赤い鳥居に大きな神社。
友達の声、蛍の光、反響する汽笛。
この記憶達は私のものであり、
私のものではない。
だというのに。
それでも、心の奥に染みついて、
夏の訪れとともに息を吹き返す。
そして夏の終わりに、またひとつ染みを重ねていく。
あの頃、確かに見えていたもの。
見えていた。
そこに居なくとも、見えていたもの。
今はどうだ?
路地裏、草むらの中、クローゼット、電柱の上。
妖̷0҈҉̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̳̿̿̿̿̿̿̿怪̷はもう見えない。
大人に近づいていくにつれて、
何か、大切なものを失くしている気がした。
ガチャを回して出会った白いふよふよ。
交差点で出会った赤色のあの子。
キュウリじゃなくて、
お寿司が好きな変わった子。
いつも仲良しな狛犬の兄弟。
そして、私たちと共に冒険してくれた、
”主人公”たち。
私たちの人生を、夏を、
どこまでも青く彩ったあの冒険を。
忘れてしまっても、必ず思い出す時が来る。
あの最高の夏を、もう1度───













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。