連れてこられたのは団長室だった。
リアン団長は僕に応接用のソファ座るように言った。
僕がソファに腰掛けると、リアン団長はテーブルを挟んで反対側のソファに座った。
「さて、ルシアが騎士になった理由からだったよな」
「はい、彼はどうして騎士に?」
「まあ、理由そのものはさっき話した通りだ。あいつは村の外の世界を知りたかった。それだけだよ」
「それだけ……ですか?」
「ああ」
リアン団長は苦笑する。
「本人に聞いた時も、同じようなことを言ってた。『外の世界を見たかった。それだけだ』ってな」
「でも、どうしてそこまで村の外に出たかったんでしょう?」
その質問に、リアン団長の表情が僅かに変わった。
「あいつが育った村は閉鎖的だったって話はしただろう?」
「はい。ですが、閉鎖的な村自体は沢山ありますよね?」
「ああ。確かにそれだけだったら普通のありふれた村だ。」
「だが、その村には習わしがあったんだ」
「習わし…ですか」
「そうだ」
リアン団長は、一度深く息を吐いた
「その習わしがあったから、ルシアは最初から『ルシア』として生きていた訳じゃない」
「……え?」
思わず聞き返す。
リアン団長は、僕の反応を見て苦笑した。
「その辺りも含めて、順番に話そう」
「今から話すのは、ルシア本人から聞いた話とあいつが遺した記録を元にしたものだ」
41年前_____ルシア・アリアトリス6歳、とある郊外の村
「今日もルシアは可愛いわね〜」
そう言って母は今日も僕の頭を撫でる。
「将来はきっと素敵な子になるわ」
何も言わずに黙っていれば、周りは勝手に持て囃す。
きっとおかしいと思っているのは僕だけで、大人も子供もこの村の人間はみんなこれを当たり前だと思っている。
「お母さん。僕、村の外に出てみたい」
そう言うと母の顔から笑顔が消えた
「ルシア、お母さん言ったわよね?『僕』じゃなくて『私』でしょう?それに、村の外は危ないんだから…まったく…」
母は呆れたように言った
「ごめんなさい」
僕が謝れば母は満足気にまた頭を撫で始める
これがこの村の日常で、きっと僕がおかしいんだ











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。