騎士団本部には、歴代騎士団長たちの肖像画が飾られている
その中でも、特に大きな功績を残し、『英雄』と呼ばれた者たちの肖像画は、長い年月を経てもなお大切に残されていた
その肖像画の中に、一枚だけ周囲とは明らかに異なるものがあった
描かれているのは、あまりにも若い男だった
肩まで伸びた青緑色の髪に静かな翡翠色の瞳
その額縁に取り付けられたネームプレートには、こう刻まれている
『ルシア・アリアトリス』
「リアン団長。ルシア様は、どんな方だったのですか?」
肖像画を見上げながら、僕は尋ねた
その名を聞いた瞬間、リアン騎士団長は僅かに目を細めた
「ルシア様……か」
懐かしむように、そして少しだけ寂しそうに笑う
「本人が聞いたら、嫌がりそうだな。あいつは英雄扱いされるのが嫌いだったから」
「そうなんですか?」
「ああ。自分が英雄だなんて、一度も思ってなかったよ」
リアン団長は肖像画へと視線を向ける
そこに描かれているのは、凛々しい騎士の姿だった
しかし、リアン団長が見ているのはその肖像画ではない
その向こうにいる、もう二度と会うことのできない一人の青年だった
「……仲が良かったんですか? お二人は」
リアン騎士団長は少しの間、答えなかった
やがて、懐かしむように笑って口を開く
「親友だったんだ」
そして、肖像画に描かれた青年を見つめる
「あいつとはな」
「それより、カイン殿下が英雄…ましてやルシアに興味を持つなんてな」
「僕が興味を持つのはそんなに意外ですか?」
そう問えばリアン団長は苦笑いしながら答えた
「まあ、そうだな。ルシアは英雄とも呼ばれたが、悪魔とも呼ばれていた時期があったからな」
「悪魔…ですか」
「冷徹な悪魔、殺戮人形。そう罵られた事もあった。その度にあいつは俺に言った。
『妬む事しか脳がない雑魚に構う必要は無い』ってな」
「口の悪い方だったんですね」
「ははっ殿下は優しいんだな。当時その言葉を聞いた周りは更にルシアを罵った。騎士道に背いてるやら自己中心的やら言って」
「なぜ、ルシア様はそのような呼ばれ方を?」
僕が言うとリアン団長は柔らかく笑って言った
「ならまずは、ルシアが騎士になった理由から話そうか」











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。