第24話

チーム2 一気に増えた面子
435
2020/04/09 13:29
坂田銀時
坂田銀時
あー……つっかれたー。てか、これ……何処まで歩けばいいんだ?ゴールあんのかよ……。
狡噛慎也
狡噛慎也
“迷宮”って言ってたからな。ゴールはきっとあるんだろうが、そう簡単には出られないだろうよ。
敵もいなくなり、歩く音だけが廊下に響く。
狡噛におぶられた神楽は何時の間にか寝てしまっていた。
志村新八
志村新八
すみません。神楽ちゃんが……。
狡噛慎也
狡噛慎也
気にするな。でも、寝ちまうとはな。
こうして見てると、普通の子供にしか見えない。
チェ・グソン
チェ・グソン
でも、姉妹同士とは思えない派手な喧嘩でしたねぇ。一般人が間に入ったら死んでますぜ。
阿伏兎
阿伏兎
アレが彼奴らにとっての通常だ。
出合い頭に殴るだなんて、しょっちゅうだぜ。てか……副団長さんよー。俺の左腕どうしてくれんだい。道具が無きゃ直せねーぞコレ。
右手に壊れた義手を持ち、阿伏兎が一人で前を歩く神代に声を掛ける。すると、相変わらずの笑顔で神代が振り返る。
神代
神代
お前も副団長じゃないか。
そんな事より阿伏兎。お腹すいた。
阿伏兎
阿伏兎
おい。人の話聞いてたか?
神代
神代
何処かに食料とかないかな?探さないと。じゃなきゃ皆餓死だ。あはは。
阿伏兎
阿伏兎
笑い事じゃねぇよ。だから、俺の左腕────────
神代
神代
あと、休める場所も探さないとね。てなわけで、阿伏兎探して来てよ。
阿伏兎
阿伏兎
ははーん?人の話聞いてねぇな。
と言うか何で俺なんだよ!お嬢、頼むから少しは部下を労るってのを覚えて下さいよー?
そんな阿伏兎の話を無視して神代は前を向き、「神威何処だろー。ま、いいかー。アイツだし」と呑気に笑う。
諦めて何も言わずに阿伏兎が遠くを見つめ、同情したグソンが阿伏兎の肩に手をポンッと置いた。
チェ・グソン
チェ・グソン
まだまだ若い少女だが、とんでもない上司で。
阿伏兎
阿伏兎
……俺、転職しようかな。
深い溜息をつく阿伏兎だったが、揃うように槙島が隣を歩き「彼女に振り回されているようだね」と、面白そうに笑う。
槙島聖護
槙島聖護
だが、彼女も言っていたように……このまま先の見えない道を彷徨っていても何れ力尽きる。せめて食料と休める場所を確保しないと。
沖田総悟
沖田総悟
それもそうだ。俺は嫌だが、いざって時は土方さんを非常食にとっておきやすか。ちゃんと有効活用するんで、安心してくだせェ土方さん。
土方十四郎
土方十四郎
安心出来ねぇよ!なんだよ非常食って!?んな事に人を有効活用すんな!
土方がツッコミを入れている後ろでは、ナオミと瞳子が二人で話をしていた。
桐野瞳子
桐野瞳子
ナオミちゃん、武装探偵社って所で働いてるって言ってたけど……社名からして何だか危なそうだし、怖くないの?
谷崎ナオミ
谷崎ナオミ
全然怖くないと言ったら嘘になりますけど、でも平気ですわ。やり甲斐もあるし、皆親切で、そして強くて賢い人達ばかりですもの。
何より、私には兄様がいますから!
桐野瞳子
桐野瞳子
そっか。本当にお兄さんと仲良いんだね。
瞳子はそう言うと、無言で槙島達と歩いている藤間の背中を見つめた。
嘗て、藤間に捕らわれて拘束されていた時に瞳子は彼の過去を聞かされていた。
その中には、双子の妹である“お姫様”を自らの手で殺害したという自白もしていた。
谷崎ナオミ
谷崎ナオミ
どうかしたんですの?
桐野瞳子
桐野瞳子
ううん。何でもない。
ナオミは瞳子の表情と視線から藤間と何かあったのだと察し、そっとしておくことにした。それに気付いて居るのはナオミだけでなく、二人の後ろを歩いている鏡花も同じだった。
泉鏡花
泉鏡花
……血の匂いがする人達ばかり。
鹿矛囲桐斗
鹿矛囲桐斗
血?それは、本当に血の匂いがする訳じゃなくて……別の意味の様に聞こえるんだけど。君は、そんな事が分かるのか?
泉鏡花
泉鏡花
何となくだけど、分かる。
……私もそう言う場所にいたから。
最後の言葉があまりにも小さ過ぎて聞こえなかったのか、鹿矛囲は首を傾げた。
鏡花は静かに鹿矛囲を見上げると、「貴方からも、血の匂いがする」とだけ言い、正面を向く。
鹿矛囲桐斗
鹿矛囲桐斗
僕も、か。……そうだろうな。
鹿矛囲は視線を床に移して呟くと、何処か悲しげにフッと笑った。自分が生前犯した罪を思い出しているのだろう。
近藤勲
近藤勲
ん?おい。今、何か聞こえなかったか?
廊下を半分進んだ所で、何か音がしたのか、近藤が足を止める。他の皆も足を止めて近藤の方を振り返り、土方が「なんだァ?また敵か?」と眉間にシワを寄せた。
坂田銀時
坂田銀時
音なんて何も……
銀時がそう口にした瞬間、壁の向こう側からドン!と叩くような音がした。
土方や銀時、瞳子達はビクッと肩を上げて壁から離れて距離をとる。
藤間幸三郎
藤間幸三郎
壁の向こう側、か。隠し扉でもあるのかもね。
志村新八
志村新八
隠し扉!?で、でも……中に居るのもしかしたら敵かもしれないし……。
???
外に誰かいるんですよね!?お願いしまーす!開けてくださーい!
やはり隠し扉でもあるのか、壁の向こう側から少年の声がした。新八がどうやって開ければいいのか困っていると、槙島が「あったよ」とボタンを見つける。
阿伏兎
阿伏兎
ボタン?さっきまで無かったはずだぜ?
槙島聖護
槙島聖護
そりゃあそうさ。隠し扉なのに、扉を開ける為の仕掛けが分かりやすく見えるはずが無い。壁を触っていたら、凹んでいる部分が一箇所あった。試しに押してみたらボタンが現れたんだけど、これが開ける為のボタンで間違いないだろう。
壁の向こう側はどうも騒がしい。
槙島がボタンを押すと、壁の一部が自動ドアの様に開き、「わぁ!?」と人が三人倒れてきた。床に倒れた三人の上を別の一人が飛び越え、その人物の両手には拳銃が握られてある。壁に背中を着け、屈伸した状態で扉の向こうから襲いかかってくるエイリアンに銃口を向けると、その人物は容赦なく銃弾を何発も撃ち込んだ。
???
ふぅ……。やっと始末出来た。
???
流石だな。助かったぜ……。
???
うー……圭君どいてー。僕を踏むなんて……圭君のくせに。
???
ご、ごめん!でも、助かったぁ……。
扉の向こうから現れたのは赤髪で眼鏡をかけた青年と、黒髪の少年、金髪の少女。そして、髪も服も真っ白な若者だった。誰だかは知らないが、エイリアンに追われていたところからしてきっと仲間だろう。銀時達は直ぐにそう察した。
土方十四郎
土方十四郎
まーた新しい奴が増えやがった。おい、大丈夫か?
???
は、はい!扉開けてくれてありがとうございます!
土方十四郎
土方十四郎
開けたのはアイツだ。礼ならあっちに言え。
土方が親指を槙島の方に向けると、黒髪の少年も槙島の方に身体を向けた。
少年が満面の笑みで「ありがとうございました!お陰で助かりました!」とお礼を言う。
こんなにもあどけない笑顔で素直にお礼を言われるなんて事は恐らく今までに無かっただろう。この少年が自分の正体を知らないとはいえ、らしくもなく悪くない……と思い「別に。大したことはしてない」と微笑みながら返答した。
???
いやぁー。本当に助かったよ。因みに、まだ他にも居るから。僕達も仲間を見つけて合流してたからね。
槙島と同じような、真っ白な若者が言うと、隠し扉の奥からこちらに向かって走って来る数人の足音が聞こえた。
???
おい!無事か!?
???
ったく、いきなり変なのが出てくるからびっくりしたぜ。
???
僕もう……無理なんだけど……。
???
死ぬなやモヤシ!
???
でも皆無事で良かったっス!
ぞろぞろと他の面々もやって来て、狡噛が「一気に人数が増えたな」と呟く。
坂田銀時
坂田銀時
探す手間は省けたが、これから大人数になってくんだろ?つか、マジで何人この迷宮に送られてきたんだっつーの。こんなに居たんじゃあ、逆に動きづらくねぇか?
志村新八
志村新八
しょうがないですよ銀さん。ここで二手に別れてまたはぐれたりなんかしたら意味無いですし。待ち合わせのしようも無いですからね。何より、元の世界に帰る条件として全員が揃わないといけないみたいですから。
坂田銀時
坂田銀時
ったく、めんどくせぇな。まぁ、そんな訳だ。嫌でも一緒に居ないと行けねぇみたいだし。俺みたいに文句言うなよ?今此処で一気に自己紹介されても多分俺覚えられねーからさ。会話の中でてきとーに、自然に覚えていくわ。もしくは、分かりやすく顔にでも書いてくれ。
???
は、はぁ……。分かりました?
霜月美佳
霜月美佳
せめて覚えてあげる努力はしなさいよ。

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