女の子が居るという場所までやって来た銀時達。銀時達がいるのは二階。広い廊下の真ん中には、内窓が円形を描くように設置されており、下の階が見えるようになっていた。
分かりやすく言うならば、二階の窓から手術の様子が見えるような造りになっているのと似ている。
再び口喧嘩が始まりそうになるが、狡噛が「まぁそこまでにしとけ」と銀時達を止める。
窓から下を除くと、天人達の中心にはマントを着た誰かが柱に縛られており、ピクリとも動かない。
顔や頭、手は包帯で巻かれているので顔の確認も出来ない。
鏡花の言葉に霜月は「え?」と首を傾げた。
下の様子を見ていると、隠し扉らしき場所からセーラー服を着た黒髪の女の子が天人達に捕まった状態で出てくる。
鏡花の話曰く、天人達に捕まったのは同じ武装探偵社の谷崎ナオミという少女。
しかし、鏡花が言っていた女の子はまた別人だという。
阿伏兎が呟くと、息を切らしながら誰かがこちらに走ってくる足音が聞こえた。
鏡花達の元にやって来たのはオレンジと白のセーラー服を着た一人の少女。
その少女を見た狡噛は「お前は桐野瞳子……!」と口にし、目を見開く。藤間と槙島も少女に見覚えがあるようだった。
桐野瞳子は藤間幸三郎が教員を務めていた桜霜学園の“元”生徒だ。
というのも、彼女は藤間に父を殺され、藤間に捕まっていた所を狡噛の嘗ての相棒とも呼べる佐々山光留に助けられて逃がされる。
だが、助けを呼びに行った桐野瞳子は、槙島に手を貸していた老人に捕まる。その後、薬物投与による脳機能損傷でコミニュケーションが不可能となってしまった。
それから数年経過しているのだから、本来ならば桐野瞳子は十六歳の姿などでは無いのだ。なので狡噛は多少困惑していたのと同時に、ある期待をしていた。
もしかしたら、佐々山光留にもまた会えるのではないか……と。
瞳子を見た鏡花は「私がカメラで見たのはこの子。何があったのか教えて」と、座り込んでしまった瞳子の傍に駆け寄る。
瞳子は狡噛を見上げて「私は何故か見た目が十六歳に戻ってるから、喋れたりできるけど……中身は……」と自分について話そうとする。狡噛は「そういうことか」と、瞳子が言おうとしている言葉を察した。
そんな瞳子を見た藤間と槙島は「標本事件の頃を思い出すね」と呟いた。
狡噛が槙島達を睨み、瞳子が狡噛の後ろに身を隠す。不穏な空気が流れ始め、土方と銀時が「今度はおめーらが火花散らしてどうすんだ」と間に入る。
どう助けに行くか作戦を立てようとしていた時、ダダダダっ!と何者かが神楽達の方に迫り来る。
迫り来るゴリラの腕を掴み、神楽が「うおりゃあああ!もっかい逝ってこいやああああ!」と、声を上げてゴリラを思いっきり下にぶん投げる。
神楽の暴走に鏡花や狡噛達は顔を引き攣らせ、霜月が「今だけサイコパスを濁らせないようにしてくれたあの神様に感謝するわ。じゃなきゃ、こんな奴らといたら猛スピードでサイコパスが濁るわよ……」と疲れきった顔をする。
神楽が投げたゴリラは、柱に縛られている人物に当たりそうになっており、下の階にいた天人達はざわついていた。
また、ゴリラを投げたことで起きた強風により、包帯の人物のマントが激しく揺れた。
マントの下の服装が見えた銀時と阿伏兎は、眉間にシワを寄せて目を見開いた。
包帯の人物が僅かに動き、身体を縛っていた紐を力技で解く。そして、怪しい笑みを浮かべながら唇をペロッと舐め、自分に向かってくるゴリラの足を掴んだ。
陽気な声と共にその人物はゴリラを神楽の方にぶん投げ、神楽がゴリラもろとも吹っ飛ばされた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。