それから、
僕たちはお互いに恋をして付き合うことになった。
僕は誰かを好きになるのは初めてで、
いわゆる初恋だった。
昴は女子高だったため出会いもなく、
初めて好きになったのが僕だったらしい。
お互い、分からないことだらけだけど、昴となら何をしていても楽しかった。
昴が携帯を持っていなかったから
僕たちはいつも日付と時間だけを決めてあの河川敷の場所で待ち合わせをした。
基本的には河川敷で話すだけだったけど、
デートもした。 仲はよかった、すごく。
でも、あの日昴は来なかった。
そして、太一が昴からと言って小さな手紙を僕に渡した。
「ごめん、もう会いたくない。別れよう。」
それだけ書いてあった。
僕は昴の家も知らないし、
学校は私立の女子高ということしか知らないし、
昴は携帯を持っていない。
太一に聞いても「最近会ってないからわかんない」と言われた。
そして何より、昴が嫌がることはしたくないと思った。
それだけ、愛してしまっていたのだろう。
それからも赤いものや、彼岸花や夕日を見る度に僕は彼女のことを思い出していた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。