( 山 田 涼 介 side )
俺はどんどん近寄ってくる彼女から
目が離せなくなっていた。
ドクン 、ドクン 、ドクン __
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おぉ、本当に声がかかったな、
外れたら恥ずかしいからあまり期待してなかったけど……
ほげーっとした俺を
透き通った天然水のように優しい声で
俺に問いかけてきた。
慌てて答えると、
わたあめのように柔らかい笑顔を浮かべた。
柔らかい笑顔とは裏腹に
今度は真剣な眼差しで俺の顔を見つめてくる。
先生からそんな話は今日のHRでも
一切出てこなかった。
何かの空耳では?とも思ったけど、
彼女の真剣そのものの顔からはそんな風には捉えられない。
そう言うと彼女は軽く会釈をして
最後に柔らかい笑顔を振舞ってから、
自分のクラスへと帰って行った。
そんな彼女を俺は最後まで
糸で結ばれているように
見続けていた。
もちろん、彼女が見えなくなってからも
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今日の俺は君に 二度 恋をした。
容姿、透き通った声、自然体のいい香り、
シュッとしている鼻、プルんと小さい唇、
笑った時に出来る目尻のシワ。
君の全てに。
初対面で名前も分からない人に
こんなに没頭するなんて俺…風邪でもあんのかな?
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廊下側にずっと目線を落としていたから
全然気が付かなかったけど、
前を向くと先生が俺の方をずっと見ていた。
先生 『たくッ…授業に集中しろ』
先生は少し呆れたようにため息をつくと、
授業の説明を再開し始めた。
今は数学かぁ…。
気だるそうに机の中を漁ろうと
体を横に(窓側の方を向くように)して
座り直すと視界に丁度、知念 が飛び込んできた。
黒板を見てるのかなとも思ったけど違った。
明らかに顔と目が俺の方を見ている。
さっきまでの先生みたいだ。
俺も見つめ返すと、知念の口元が緩んだ。
そして何か口パクで俺に訴えかけてくる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。