第7話

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2018/08/22 13:14
その人物はこちらに気がつくと、ゆっくりと歩いてきた。
着けていた帽子とマスクを取る。
顔が、見える。
佳奈
え、あれ、嵐の……?
彼に気が付いたらしい佳奈達がざわつき始める。
和くん、と思わず漏れた声はきちんと彼女達に届いていたようだ。
佳奈
あなた知り合いなの?
ピタリ。
あなた達の前で足を止めたのは、
二宮和也。
1ヶ月以上ぶりの彼は、少し痩せたようだ。
二宮和也
___合コン?
第一声がそれか。
と思ったが、ここにはあなたと佳奈、そして男性同期が2人。
知らずに見れば、確かに合コン帰りのようだ。
あなた
い、いや違います。会社の同期です。飲み会は8人くらいいました。この4人は駅が同じで
何となく事情を感じ取ったのか、同期が慌てて説明してくれた
二宮和也
そう
二宮和也
じゃあ,こいつ俺のなんでもらって行きますね
二宮はあなたの手首を掴むと、大通りに向かって歩き出す。
器用に片手で帽子とマスクを装着し直した。

抵抗しようとすれば、出来た。
けれども、そんな事出来るはずがない。
黙って腕を引かれる。
二宮和也
あ、
二宮は数歩進んだところで何かを思い出したように立ち止まると、振り返り、マスクをずらして佳奈達に向かって言う
二宮和也
そのうちちゃんとケジメつけますから。このことは、それまで秘密で
後ろでキャーキャー騒ぐ佳奈がうるさい。
来週会ったら何を言われるだろう。
彼女結構ミーハーだから、きっと大騒ぎだ。



大通りに出るとすぐにタクシーを拾い、あなたの家の住所を告げる。
確かにここからなら、二宮のよりもあなたの家の方が近い。

手首を掴んでいた手は、いつのまにかあなたの手と合わさっている。
何も言わないし、あなたのことを見もしない二宮。


いつからあそこで待ってたの、とか、まだ私はあなたのものなの、とか聞きたいことは山ほどある。


けれども。
言葉にして尋ねる代わりに、その手を握り返す。


二宮が何を考えているのか分からないけれども、ぬるい体温が以前と変わらず、それがあなたを安心させた。

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