あなたのマンションに着いても、
一言も二宮は話さない。
仕事着のままだったので着替えたかったが、二宮が無言でラグに正座しているからそうもいかない。
ローテーブルを挟んで反対側に、あなたも正座する。
無言が気まずい。
お互い言わなければならないことがあるのは分かっているが、話し始めが掴めない。
二宮はどういうつもりなのだろうか。
先ほどのセリフと手を繋いできたことからすると、まだ彼女だと思われていると捉えていいのか。
分からない。
そうだと良いな、とは思う。
顔が見たい。
伏せていた顔をチラリと上げれば、同じ様にこちらを伺う二宮と目が合った
二人して吹き出す。
全く自分たちは何をしているのだろう。
いい歳して、喧嘩だなんて。
妙な緊張が解けた
あの二宮が「大変だった」と言うなんて、余程の現場だったのだろう。
冗談めかしては言っても、本気で大変だったなんて滅多に言わない人だから。
その過酷な現場で疲弊した二宮。
きっと心が弱っていたのだろう。
その時に、支えられなかった
支えてあげられなくて。
自然と言葉が出てきた。
同時に涙も出てくる。
二宮はテーブルを回り込み、ふわりとあなたを抱き締めてくれた。
彼の香りに包まれる。
いつぶりだろう。
酷く懐かしく感じる。
いままでも1ヶ月会えないことはあったはずなのに、今回は凄く長かった気がする
きゅっと抱き締める腕に力が篭る
それで,あの発言
その声が普段の飄々とした彼の声からは想像できないくらい必死で、それだけ彼が真剣なのが伝わってくる。
それに応えるように、あなたも彼を抱きしめ返す。
そう言えば、何がおかしかったのか笑いだす二宮。
人が真剣に言ってるのに。
むすっとすると、慌てて謝ってくる
あなたには敵いません。
笑顔で落とされるキス。
ちゅ、ちゅと何度も。
その笑顔もキスも変わらない。
変わらない、だいすきな二宮の笑顔。
あの二宮からの、素直な言葉。
耳が真っ赤。
首まで真っ赤。
本気で照れている証拠だ
返事を返すように,かれへの抱きしめる力をさっきよりも入れた。
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あれだけ強い二宮が弱る時もある。
支えたいと思っていたあなたでも、感情的になってしまうこともある。
それでも、きっと、大丈夫。
彼となら、乗り越えられるだろう。
この先、何があろうとも。
きっと2人で乗り越えられる
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。