第3話

2話
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2021/06/12 15:17
翌朝、いつものように家を出て学校に向かっていると
不意に声をかけられた。
ゆきむら。
あ,お久しぶりです。
あなた

あっ…昨日の,

あなた

昨日はすみませんでした…

ゆきむら。
いえ,僕が悪かったので。
そういって、優しく微笑んだ。



優しげで、透き通っていて、儚いその笑顔に思わず見とれてしまった。
あなた

あ,あのッ!!

ゆきむら。
はい??
あなた

よかったら学校,一緒に行きませんかッ

ゆきむら。
はい,ぜひ笑
あなた

すみません,ありがとうございますッ

衝動的に誘ってしまったけれど名前も知らないし、
名前聞いてもいいのかな・・・なんて思っていた矢先、
彼から声をかけてくれた。
ゆきむら。
あぁ,僕の名前____
ゆきむら。
ゆ き む ら っていいます_
ゆきむら。
あなたの名前は??
あなた

私,は…あなたっていいます

ゆきむら。
あなたさん。可愛らしい名前ですね,
あなた

や…ッ,そんなことないですッ

ゆきむら。
そうかな??すごくぴったりですよ?
あなた

ゆきむら,さんだってぴったりですッ!!
綺麗な名前ですし…

ゆきむら。
…あなたさん,別に呼び捨てでいいですよッ
あなた

呼び捨てはさすがに…,

ゆきむら。
そっか,好きなように呼んでくださいね
ゆきむら。
気使わなくでいいので,
あなた

ゆきむらさん…あ,ゆきむらくんッ

あなた

あのッ,敬語じゃなくていいですよッ

ゆきむら。
…ほんとに?
あなた

はいッ

ゆきむら。
よかった,同い年なのに敬語なの嫌だったんだッ
あなた

あ,同い年…?

ゆきむら。
2年生だよね,?
僕もだからッ!
ゆきむら。
だから,あなたさんも敬語じゃなくていいよ??
あなた

なんだ,ありがとうッ

それからゆきむらくんと他愛もない話をして,彼の学校前に着いた。
あなた

ありがとうございましたッ,
とっても楽しかったですッ

少し名残惜しさを感じながらその場を離れようとすると
ゆきむらくんがとても不思議そうな顔をして、首を傾げた。
ゆきむら。
え,なんで??
あなた

えッな,なにが,?

ゆきむら。
いや,まどかさんって高校ここじゃないよね??
あなた

ゆきむらくんここでしょ,?

ゆきむら。
…僕,今日からまどかさんと同じ学校なんだけど。
あなた

えッ!?

ゆきむら。
あれ,言ってなかったっけ??
あなた

聞いてない…,

思わず軽く睨みつけると彼はそっと笑いながら口を開いた。
ゆきむら。
ごめん…,
嫌かな??僕がいるの。
あなた

嫌じゃないけど,むしろ嬉しいっていうかッ!!

あなた

…って違う,急がなきゃッ!!

普段から早めに家を出るようにしているけれど、
のんびりとしている間に遅刻ぎりぎりの時間になっていた。
嬉しいような照れくさいようなそんな気持ちとともに、
慌ててゆきむらくんと一緒に学校へと急いだ。

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