人に好きだと言ってもらうのには慣れているはずだった。
幼い頃から周囲に好かれるように仮面を被って生きてきた。
皆にほどよく愛されるように,『異端者』にはならないように。
そんな中途半端ではっきりしない性格のせいか
勝手に僕の愛を期待して,僕にその気持ちがないと知ると
途端に手のひらを返して…
そして,僕を貶めて。
そんな人達が腐るほどはびこっていたから。
いつだって,本当に欲しい愛は手に入れられないものだと思ってた。
心の底から本当に好きなひとには出会えなかったし,
僕を本当に好いてくれるひとはいなかった。
…けれど。
初めて欲しいと思えた。
初めて大事にしようと思った。
初めて僕が,好きになれた。
最初で最期の大切なひとだと心の底から感じた。
絶対に離しちゃだめだと思った。
傷つけちゃいけないと思った。
愛してあげなきゃ,守ってあげなきゃ,
僕が何もかもやってあげなきゃだめなんだって。
きみの「好き」がどんな気持ちからであれ,
僕には愛の囁きに聴こえた。
それならば僕は,
君のことを__________。
いつまでも,君のためだけに生きてあげるから____ね??
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!