「……これで、よし。」
ふぅ、と緊張に止めていた息を吐く。
我が手中にあるのは、この国そのものと言っても過言では無い書類。
これが、私の手元にある。__つまり、
「(漸く……漸く、これで願いを叶える準備が出来た……!!)」
私の名はアリス・ディヴィラン。
この国__ディートル国の国王、ヘンリー15世の正妻の娘であり、たったいまこの国を譲り受けた者。
小さい頃から、何故女は戦場に立たないのか不思議でしょうがなかった。
何故女は子を産むことばかり強いられるのか不思議でしょうがなかった。
だから周りの言うことに耳を貸さず、兄達と共に剣術に励み、国を知り、民の声を聞き、時として幹部達の会議に乱入して意見を述べた(因みに結果として私の案で勝った)。
かなりやんちゃをしたとは思うが、全てこの国の為。
そして__女の舞台を作る為。
女として生まれたからには表舞台に立つ事はまずないとされる。
だが。
私はあくまでも表に立つ。
そして、
「必ず……この戦乱の世を終わらせる。」
目には目を。
歯には歯を。
武力には……武力を。
穏やかでは済まないかもしれない。
自身の命さえ落とすかもしれない。
だが、私はせめて一目見たいのだ。
遥か昔、緑と人々の笑顔に溢れ、平和だったというこの国の姿を。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!