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2021/06/01

第3話

New World
警察本部 部隊リーダー
本当にいいのか?
ヒョジン
ヒョジン
…はい。


異動願いを提出した。





あの日、俺は、スンジュンと全く同じ顔をした男を見た。

あれは、絶対にスンジュンじゃない、もうひとりのスンジュンだ。

俺がそのことを上司に報告し、何とかスンジュンの冤罪は免れた。

しかし、女の子と母親を残して犯人を追いかけたことに関して、処罰はあった。

そして何よりも、犯人と全く同じ顔をしているということで、すれ違う人みんなが、スンジュンに後ろ指を刺した。

「あの人、放火魔じゃない?」
「え…あのJ-USが犯人?」
「嘘…私つい最近彼と喋った。あんな笑顔が素敵なのに、人って見かけじゃ何考えてるかわからないわね…怖いわ」

J-US
J-US
おい、俺といると、お前も犯人だって誤解されるぞ…。
ヒョジン
ヒョジン
…関係ねーよ。
俺は、スンジュンの誤解を解きたい。

スンジュンは、犯人じゃない。



ヒョジン
ヒョジン
で、異動になるのか?何処の部署だ??

そっと聞いてみる。

J-US
J-US
…警備チーム。


警備チームの仕事は、基本的に市内の見回りのみ。

毎日同じルートを見回りして、チェックシートに丸を付ける。
他には、紛失物の管理、逃げてしまったペットの捜索、高齢者の道案内…。

まさか…こんなに優秀なスンジュンが…?
ヒョジン
ヒョジン
…お前には勿体ねーよ。やっぱりもう一回本部に…
J-US
J-US
いや、もういい。
すっかり塞ぎ込んでしまったらしい。

ヒョジン
ヒョジン
んなこと言うなよ…。まぁ、お前にその気が無いなら仕方ないけど…。いつかまた戻りたくなるはずだ。後から後悔しても遅いぞ?
ヒョジン
ヒョジン
今ならまだ間に合う。…な?
J-US
J-US
…。


それっきり、2人の間に沈黙が流れた。


ヒョジン
ヒョジン
まぁ、もし戻りたくなったら言えよ。俺も本部に頼んでみるから。
J-US
J-US
…。





夕暮れのオレンジが差し込む廊下を歩く。

目的の部屋の前で歩みを止めると、立て付けの悪そうなドアと、その横には「警備チーム」の文字。

ドアを開けると、中は埃っぽく、夕方なのに薄暗い。カーテンが閉め切っていて、何となくジメジメする。

当分使われていないような部屋。
その部屋の真ん中に、机が6個向かい合わせに並んでおり、「J-US」の名札が右奥の机に立っている。

他の机にも聞いたことのない名前の名札が立っているが、見回りだけの業務内容なので、みんな何処かで暇潰しをしているらしい。
机は使われておらず、この部署は安い給料を、毎日見回りするだけで貰えるらしい。

なんともやり甲斐のない毎日が、スンジュンには待っているのかもしれない。
J-US
J-US
…じゃ、おつかれ。
ヒョジン
ヒョジン
…あぁ、おつかれ。
かける言葉が見つからず、俺はただ、返事を返したのみだった。





ヒョジン
ヒョジン
おつかれ様です。お先に失礼致します。
結局あの後、スンジュンのことが気になってしまい、さっさと残りの仕事を終わらせて、切り上げる。

足が勝手に、警備チームの部室へと進んだ。


警備チームの部室へは、片手で数えるほどしか行ったことがなく、確認しながら歩く。

ヒョジン
ヒョジン
確かこっちだな…。
この廊下の角を曲がれば、警備チームの部室だ。
ヒョジン
ヒョジン
ったく、意地になんなよな…。
片手に、スンジュンの好きな自販機限定のコーヒーを持ち、その廊下の角を曲がる。
ヒョジン
ヒョジン
…。
部室のドアの小窓が、オレンジ色をしている。

まるで、室内が燃えている様に…。

いや、本当に、部室が燃えている。
ヒョジン
ヒョジン
スンジュナ!!

部室のドアを勢い良く開ける。



そこで、俺は見た。


オレンジ色の炎に身を包んだあの偽物のスンジュンが、

本物のスンジュンの首を片手で掴み、高くに掲げている。

息ができないようで苦しむスンジュンが、足をバタつかせている。
J-US
J-US
かっ、、はっ、、、は、、
ヒョジン
ヒョジン
離せ!!
蹴り飛ばそうと2人に近付く。

しかし…
ヒョジン
ヒョジン
!!


横から誰かが飛んできて、攻撃出来ずに終わる。


その人物を確認して、俺は絶句する。



ヒョジン
ヒョジン
嘘だろ…。


そこにいたのは、俺だった。

黒いローブに身を包んだ、もうひとりの俺。



ヒョジン…?
やぁ。もうひとりの俺。

…やばい。

このままではスンジュンが…。
J-US
J-US
はっ、、、あっ、、、、、
スンジュンが息を吸おうと小さく口を動かすが、それが叶わず力無く声が出た。

それと同時に、偽物のスンジュンの手を解こうと抵抗していた手の力も抜け、だらんと両手が落ちる。
頭も足も、重力に逆らわずに下に落ちる。

偽物のスンジュンが、本物のスンジュンの心臓のあたりに手をかざす。

みるみるうちに、スンジュンの全身が炎に包まれる。


ヒョジン
ヒョジン
やめろ!!やめろー!!!!

スンジュンに近付こうとすると、また俺の偽物が応戦してくる。

ヒョジン…?
諦めろ。あいつもお前ももう終わりだ。

見ると、偽物のスンジュンが何かを掴むような動作をすると、その手に、トクトクと動く、心臓が握られていた。


真っ赤な心臓が、動いている。


ヒョジン
ヒョジン
やめろぉぉぉ!!!
偽物のスンジュンが、それを取り込もうと、自らの胸に押し込む。



と、驚くことに、次の瞬間、俺は偽物のスンジュンの目の前にいた。

瞬間移動したようで、俺はスンジュンの心臓を掴む。

J-US…?
どうやって…!?
自分でもどうしてそうなったのかわからないが、今はスンジュンの心臓を取り返さなければ。

心臓を掴み、偽物を蹴り飛ばす。


心臓を、未だ炎に包まれるスンジュンの胸に当てるが、俺の手では中に入っていかない。


ヒョジン
ヒョジン
戻れ…戻れぇ!!!
泣きそうになりながら叫ぶが、心臓が入っていかない。

自分の腕にも炎が回ってくる。
焼ける熱さで腕の感覚が無くなってくる。
ヒョジン
ヒョジン
頼む、戻ってくれぇ!!
心臓の動きが止まる。




いつしか偽物の2人は居なくなっており、この部屋に、俺とスンジュンだけが残された。

俺は、動かなくなったスンジュンの心臓を手にして、絶望で何も考えられなくなった。



最後の足掻きとして、炎を纏う自らの手で、自分の胸に手を当ててみる。

炎と違う暖かい物を感じて、それを掴む。


自分のまだ動いている心臓が、手の上に現れる。

俺は黙ってそれを、スンジュンの胸に押し当てた。

そこで、気を失った。









目を覚ますと、全身火傷の痛みを感じ、熱さで声も出なかった。

過呼吸のようになりながら、息を吸うのが精一杯だ。


自分の上にヒョジンの腕が乗っていることに気付く。

横で倒れ込むヒョジンのその右腕は、俺の胸の上にあった。

そして、ヒョジンの左手に、動かない心臓が握られていた。
J-US
J-US
ヒョジン…ヒョジン!?
彼の胸に手を当てると、心臓の鼓動がしない。

脈拍も測るが、脈拍も無い。


痛むはずの全身は、不思議と痛みを感じなくなる。
音も聞こえなくなり、耳鳴りがする。
頭が真っ白になって、自分の感覚の全てが失われる。

ヒョジンは、俺の身代わりになったのか…?
J-US
J-US
ヒョジン!ヒョジン!!
嗚咽混じりに、泣きながらヒョジンを抱える。

彼の両腕も焼けており、ヒョジンが身代わりになったことを確信する。

そして、今、俺の中にある心臓が、ヒョジンの物なのではという考えに至る。

J-US
J-US
どうして、、どうしてぇ、、、
どうすることも出来ない自分は、ただただ泣いた。

すると、部室のドアが開く。

ラウン
ラウン
どうしたんですか!?

子供のような見た目の男の子が、こちらに駆け寄ってくる。


俺は無言でその子を見つめると、一瞬、時空が歪む感覚に陥る。


そして、その子は俺の目を見つめて、全て理解したかのように、こくん。と頷いた。


そして、動かない心臓を持つと、両手でそれを優しく包み込んだ。

心臓は少しずつ動き出し、段々とその動きを早めていく。

男の子がヒョジンの胸に心臓を押し当てると、すっと中に入っていった。


ラウン
ラウン
もう…大丈夫ですよ。
男の子は何事も無かったかのように、立ち上がり、「ラウン」と書かれた机の引き出しをあさり、書類の入ったファイルを一枚取り出し、さっさと外に出て行った。

J-US
J-US
待って!…ラウン!
ドアの小窓から、彼が歩みを止めたのがわかった。

すぐに追いかけて、ドアを開ける。

その背中に大きな声で
J-US
J-US
ありがとう!!
そう叫ぶと、また、一瞬時空が歪む。
今度はその歪みが長く感じ、眩暈がした。

ラウンが振り返ると、彼の目は潤んでいた。

ラウン
ラウン
どういたしまして。

彼は、歩いて行ってしまった。

何か声をかけようとすると、部屋からヒョジンの小さな呻き声が聞こえた。

J-US
J-US
ヒョジン!
戻ると、腕を押さえ、もがいている。

と、自分の全身の火傷の痛みも戻ってきて、ヒョジンの隣で膝をつく。

J-US
J-US
いっつ、、
ヒョジン
ヒョジン
…!スンジュン、生き返ったのか…?
J-US
J-US
何言ってんだ…お前、俺の身代わりに…
J-US
J-US
なんで、そんなことしたんだ…
俺が問うと、ヒョジンは黙り込んで、その後に答える。
ヒョジン
ヒョジン
親友だから…

2人で黙り込んでいると、廊下から複数人の走る足音が聞こえた。

ドアが開くと、特殊部隊の隊員たちだった。



俺らはすぐに病院に送られ、治療を受けた。

幸いなことに、その火傷は皮膚の表面のみに留まっており、炎症をとる薬を塗ると、数時間でみるみるうちに新しい皮膚に戻った。熱さは濡れたタオルで冷やしたりなどして、2人とも一日で元の体に戻った。



あの黒服の男は何だったのか。

そして、あのラウンという男の子。

多くの謎を残したまま、この事件の報告をした。


と同時に、ヒョジンが異動願いを提出したらしい。

異動先は、この埃っぽい部室を屯所として構える、警察の最弱チーム、警備チームだった。