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第6話

転生した子が任務中に助けられる話
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2020/06/28 10:25
ついたのは、木が颯爽としげる森だった。

…いやなんでやねん。
なんでなの。なんでなのよ。なんでこんなとこ連れてこられたの。だって私森で襲われたのよ…?
鬼と初めて出会った思い出の場所…♡が森なのよ?あれ軽くトラウマなんですけど。

はやく帰りたい…隣の筋肉ダルマは鼻歌なんか歌ってやがる。余裕たっぷりだなこの野郎。

本当に強いのだろうか。心配になってきた。
そもそもどうやって倒すのだろう。やっぱ筋肉あるしパンチとか?
いやいや、さすがにそれはないか。接近したら一瞬でやられてしまうのではないだろうか。 
なんせ相手はあの森でみたバケモノだ。同じ奴じゃなくても、あんな感じのにこれから会うのかと
思うと笑いが止まらない(震)
固めた決意が早くも崩れそうで、ため息が出た。

「なんだぁ?お前、ビビってんのか?」

当たり前だろ(怒)
こちとら平々凡々な人生送ってたんだよ。これからもそうだと思ってたんだよ。

「…はい、まぁ…怖いっすね。」

「何地味なこと言ってんだ?この祭りの神がついてるんだから一瞬で終わるに決まってんだろ?
そりゃあもうド派手にな!!!!!!」

うるせっ。

急にでかい声出されたら心臓止まっちゃうじゃん。やめてよ。
それに鬼ってやつに見つかっちゃうかもしれな……。

うわぁ…手遅れやん(泣)

奥の木からズドっと落ちてきたのは、こりゃまたどでかいモンスターだった。
切れ長の目に赤く血を流した縫い付けられた口、手が何本も生えており、髪はボサボサ。

……怖い。足が動かない。

鬼は私をじっとみて、ニタリと笑った。

「…こんな森で稀血に会うとは、嬉しい限り。今晩は御馳走じゃなぁ…」

「ひっ…い、いや…」

ムリムリムリムリ!!!怖い!!こわい!!!こわ…こわ!!?!?えっこわ!??!?

完全に死を悟った私はひどく混乱状態に陥っていた。あぁ…終わったな。
楽しかったな…My precious 人生…さらば友人…さらば両親…さらば金魚のまる子…

「なに諦めた顔してんだよ」

宇随さんは私を庇うように前にでて、刀…包丁?を構えた。

「よく見てろよ。ド派手に終わらせてやるからな」

「っ……」

震えながらもなんとかうなずいた…瞬間に、鬼の首がふっ飛んでいた。
えっ…?

ドスッと地面に叩きつけられ、顔がぐちゃぐちゃになったバケモノの頭が、私と少し離れたところに
転がっていた。

「お前みたいな地味な鬼、呼吸を使うまでもないな」

うそ……あの一瞬、で…。
体に力が抜けて、その場にへたり込む。同時に身体が激しく震えだした。

「…!?お前…泣いてんのか…」

そう言われて自分の目元に手をやると、びっしょりと濡れていた。
本当だ…私泣いてる…。

今までの人生で感じたことのなかった恐怖。自分の死ぬかもしれなかった時間。
怖かった。自分が思ってた以上に。

「っ…ぅう…ふぇぇ…うっ…ひっく…」

はやく泣き止まないと。助けてくれてありがとう、って伝えないと。かっこ悪い。
自分はなにもしてないのに。ただ怖かって、助けてもらって。
はやく、はやく、顔をあげないと。
……強くならないと。

「……しょうがねーなぁ」

大きな手で頭を撫でられた。あったかい。安心する。
この人の体温。私以外の人の体温。1人じゃないと実感できる

「すぐに泣かずに偉かったな。よく頑張った。祭りの神がド派手に褒め倒してやるよ」

「……!……はい…守ってくれてありがとうございます」

とても……なぜかとても嬉しかった。
自然と顔が綻んでいくのを感じる。褒められて泣き止むなんて、私は園児か。
今度は顔を上げて、微笑みながらもう一度告げた。

「宇随さん、助けてくれて、ありがとうございました!」

「………へぇ」

何かに納得したかのように、宇随さんは吐息まじりにそう言って、手を伸ばしてきた。
イケメンに手を伸ばされるの、これで何回目だ。

宇随さんはそのままそっと、私の目尻の涙を拭ってくれた。
やっぱりあったかくて、手つきがすごく優しくて、思わず手に頬をすり寄せて、目を瞑ってしまった。

…なんだか安心してしまい、体の力が抜けていく。
もうちょっと、あともうちょっとだけ、このままでいたいなぁ…。

そのまま私は眠りに落ちていった。

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今日は一段と弱ぇ鬼だった。
…なのにこの女、泣き出しやがった。

衝撃だった。こんなに弱い鬼でさえも、怖かったのか。泣くほどに。

地面に座り込んでピーピー泣いてる姿が、何故だか眺めが悪くて、サッサっと泣き止めばいい
と思った。
仕方がないから慰めてやろうと、頭を撫でた。

「すぐに泣かずに偉かったな。よく頑張った。祭りの神がド派手に褒め倒してやるよ」  

我ながら慰め方がヘッタクソだと思った。
でも本当に頑張ったと思う。

忘れていたが、こいつは普通の女の子だ。鬼になって今まで一度たりともあったことのない、 
のほほんと地味に生きてきたのに、血が珍しいだけで命を頻繁に狙われて。

守ってやらなぁとなぁ…とか、柄にもない地味なこと考えたりして。

ちょっと褒めただけで嬉しそうにしながら泣き止むこいつを見てたら、こっちまで嬉しくなってくる。

「宇随さん、助けてくれて、ありがとうございました!」

顔を上げて明るく笑う、さっきまで泣いてた少女。
泣きはらしたほんのり赤い目尻に残る、キラッと光る涙。
さっきまで青白かったのに、今となってはりんごのようになった頬。桜色の唇。

そのどれもが初めて見るもので、どれもが宝石みたいに綺麗に見えた。

「………へぇ」

笑った顔は、ド派手にいいじゃねぇか。 

頬を伝う涙を拭ってやると、気持ちよさそうに頬をすり寄せてくる姿が、なんとも愛くるしい。
安心したのか、自分の体にもたれかかってくる小さな弱々しい体。

一つ一つが胸を締め付けてくる、新しい感覚。
いつかはこいつの全てを、自分のものにしたい。




もう少しだけこの時間が続いて欲しいなんて、なんとも
地味なことを考えながらそう思った。


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夢主
元々どこででも寝れるわけではなかったが、
最近新しいこと続きで疲労が溜まっているのか、寝るのが特技みたいになってる子。
イケメンの腕の中で眠るとか、私メンタル鋼かよ。

(自称)祭りの神
ド派手なのは血だけじゃなかった…まさか自分がこんな小娘に
こんな感情を抱くことになるとは、と自分に呆れている音柱。
絶対4人目の嫁にする。逃がさない(逃がさない)























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