第4話

転生した子が水柱とお館様の所に向かう話
305
2020/05/20 07:49
あぁ、眠い。
外で鳥のチュンチュンと鳴く音からして、もう朝だろう。
でも起きようとは微塵も思わない。

だってぇ〜まだ目覚し時計なってないしぃ〜
まぶた重いしぃ〜昨日よく眠れなかったしぃ〜?

昨日私は変な夢をみた。 私が朝起きたら知らない森にいて、奇妙な化物に
襲われそうになったのをイケメンに助けてもらう。そのあと目が覚めると美男美女に
囲まれてなんかよくわからないけど幸せ☆状態に。
のちに部屋に案内されて床に入るも、就寝できずにそのままイケメンと深夜のぱーりない。

で、気づいたら朝になってたって感じ。

一つ言ってもいい?
目を瞑っててもわかるのよ。
なんか私、座って寝てない?足とか腰とか背中とか、なんか痛いんですけど。体勢的に。
渋々目を開ける。

やっぱりな。私、三角座りして一晩過ごしたのか。すごいな。
…ん?あれ?まてまて。

ここ…どこだよ。私の部屋じゃないんだけど。
昨日見た変な夢と同じ廊下なんだけど。
はぁぁ……夢じゃなかったの…?
もう言い訳のしようがない。認めるしかないのか…?


……なんか廊下が軋む音が聞こえるんだけど。空耳かな?疲れてる?
だんだん近づいてくるんですけど?

やがて軋む音は私の目の前でピタリと止まり、そこから動かない。
…だ、誰か私の目の前にいる!!!!

いやぁぁ!!!怖い怖い怖い怖い!!!!!これじゃあ起きるに起きられない!!!
どうしよう、あの“鬼”だったら。
これが夢じゃないのだとしたら、私は今ここで死んでしまう。
もし、目の前にいるのがあの鬼なら、今すぐにでも逃げた方がいいのかもしれない。

落ち着け私。いくわよ。
目を開けて素早く立ち上がり走る!!
目を開けて素早く立ち上がり走る!!!
目を開けて素早く立ち上がり走る!!!!

…よし。

接着剤でも塗ったのかと疑いたくなるくらいガチガチに硬く閉じたまぶたを、一気にこじあける。

「!!?」

「!!」

ぎょっとした、と同時に、一気に顔が熱くなるのを感じる。

想像していたグロテスクな見た目の鬼とは裏腹に、整った顔が私の目の前にあった。

彼は驚いたのか、目を見開いたが、それはほんのわずかの間で。
すぐに感情の読めない無表情に戻った。

息がかかるほどの至近距離にドギマギして、焦る。
今すぐにでも目を逸らしたいのに、深い海のような瞳に魅入られて、逸らせない。
綺麗な瞳が、更にゆっくりと近づいてくる。
周りの音が何も聞こえない。自分の心音がうるさい。

………時が止まってしまったみたい。






いや待って誰!!?なんでこんな顔近いの!!!?

我に返った私は手で自分の顔を隠した。

「あの!!近いです!!す、少し離れてください!!!」

「!…あぁ、」

割と素直な返答が返ってきて、近かった距離が離れた。

「!!あ!!あなた!!森で私を助けてくれた…」

そう、彼はわたしが森で鬼に襲われそうになったのを助けてくれた、あのイケメンだ。
なんであんな目の前に…。

イケメンといえば、伊黒さんは?私、昨日は隣に座ってたはずなんだけど…
あ、これ伊黒さんの上着じゃん。かけてくれたのか。優すぃー。あとでお礼言いにいこっと。

でも今は目の前にいたイケメンの方が先だ。
なんであんなに顔が近くにあったのか、何か用があるのか、聞きたいことはほかにもあるが、、

「え〜っと…名前教えてもらってもいいですか?」

とりあえず名前聞こう。あとのことはそれから聞こう。

「冨岡義勇だ」

「冨岡義勇……えっと、冨岡さん?あの、なんであんなに顔が近かったんですか?
 私、何か顔についてましたか?」

「……………」

「あ、あの〜?」

「………関係ない」

「え」

「お館様のところにいくぞ。お前が最後だ」

そう言って立ち上がり、彼、“冨岡義勇”はスタスタと歩いて行ってしまう。

え、え?なんで?どういうこと?
とりあえずまた迷子になるのも、ここに取り残されるのもイヤなので、小走りでおいつき、
隣を歩く。

…この人、冨岡さん、お館様のところにいくって言ってたよね。
じゃあ今そこに向かってるのかな?
わたしが最後ってどういう意味だろう。昨日みたいな様々な美男美女が集まっているのだろうか?
だとしたら伊黒さんもいるかな。その時に上着を返して、お礼を言おうかな。

そっと隣を歩く冨岡さんをうかがってみる。

イケメンだ。昨日の伊黒さんもかなりの美男子だったが、この人も負けてない。
こんなイケメンの顔が近くにあったら、誰でもドキドキしてしまうだろう。
先程の顔の近さを思い出し、また顔が熱くなってしまう。

「………!」

冨岡さんが急に立ち止まり、私に向き直った。

「え、ど、どうしたんですか?」

じっっと顔を見つめられ、居心地が悪くなる。
やっぱり顔に何かついているのだろうか。
再び理由を聞いてみるが、今度はガン無視された。うぅ…ひどい。
ほんとどうしたんだろう…。

訳がわからずあたふたしていると、冨岡さんは何かに納得したのか、頷いた。
そしてまた、スタスタと歩いて行ってしまった。

え、えぇ…?冨岡さん…?
なんだったんだ…ちょっと変な人だな…。まさか、そ、そんなにわたしと話すのが嫌なのか…。

少々落ち込んでしまい、はぁ…と、ため息がでる。

「!!!」

そのため息に反応したのか、冨岡さんはまたもや目を見開いて私の方を見る。
大きくため息したつもりはないのだが(むしろ消え入りそうなほど小さいと思う)、
何がそんなに気になるのか…。  
ていうかさっきから私の方向きすぎじゃない?

ダメ元で再び聞いてみる。

「あ、あの……………えっ…いや、!?あの…!?」

痺れを切らし聞こうとした矢先。
冨岡さんは私のほうに手を伸ばし、そっと頬に触れてきたのだ。
これには混乱せずにはいられない。

「ななななななな…え、、、な、え!?!?
 あ、あの!?ちょっと!!?」

何度聞いても応答なし。もしもぉし?
私はこんなにパニクってるのに、この人は顔色ひとつ変えやしない。
てか、理由すら話してくれない。

「〜〜っ!!あの!!!いい加減にしてください!!!」

恥ずかしさもあるが、それ以上になんだか怒りがふつふつと湧き上がってきた。
理由ぐらい話してくれてもいいじゃない…。私一応ピチピチ現役女子高生なんだけど。
そんなにデリカシーなくベタベタと触れられてはたまったもんじゃない。
いくらイケメンでも流石に解せぬ。

イケメンは私が声をあげた理由がわからないのか、きょとんと首を傾げた。
くそぅ…可愛い…。

「ふぅ〜〜…(心を落ち着けさせるためのため息☆)あの、せめて理由だけでも
教えていただかませんか?」



「………………熱が、あるのかと思ったんだ。」


「……え?」

ネツガアルトオモツタンダ…?

「顔が、赤い。…もし熱があって苦しいのであれば、お館様のところへ行くのをやめ、
 部屋で休ませようと思い…確かめようと…」


そうだったのか…。
なにをベタベタと触ってくるのかこのイケメンと思っていたら、私のことを
心配してくれていたのか。
そんな理由なら、とっとと話してくれれば体温くらい全然確認させるのに…。

「ふふっ…心配してくれてありがとうございます!」

「…!……熱がないなら、いい。はやくお館様のところへ向かうぞ。」

冨岡さんは顔を背けてそういった。ひんやりと冷たい手が離れ、代わりに私の手首を掴んだ。
…そのまま、冨岡さんは私をひいて廊下を急ぎ足で進んでいった。




手首を掴む手は、私のことを気遣うように優しくて。



先程とは違い、わずかな熱をはらんでいた。



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お館様に言われ、希血の子をここに連れてくることになった。昨日は伊黒があの子の護衛の
当番だった。仲良くなれたのだろうか。
そう思いながら廊下を進み、あの子の部屋までつくと、扉の前では伊黒の上着をかけて、
座りながら寝ている。あの子だった。

なぜこんなところで寝ているのだろうか。よく見ると汗をかいており、顔色が真っ青だ。
具合でも悪いのだろうか。無理もない。一晩廊下で過ごしていたのなら、体も冷えるはず。

熱があるのだろうか…。

確かめようと、そっと顔を近付ける。もう少しで確かめられると思ったら、彼女が
バチッと目を覚ました。あまりに突然で、少し驚いた。

目を覚ました彼女の顔色は、真っ青から薔薇色に変わった。

やっぱり熱があるのだろうか…。しばらく考えていると、彼女から近いと指摘を受けた。
その時初めて距離感に気づき、すぐに離れた。

なぜあんなに顔が近かったのか質問された。
具合が悪いとおもい、確かめようとおもったのだが、
顔色が元に戻ってきたし、もう関係ないだろう。

お館様のところへ向かうという目的を思い出し、それを彼女に告げて歩き出す。
パタパタと後ろを走る足音が近づき、隣へ来た。

…だが、いくら顔色が戻ったとはいえ、熱があるかどうかはやっぱり確認した方がいいんじゃ
ないだろうか…。気分が優れないのであれば、すぐさま部屋に戻った方がいいと思うんだが。

隣からため息の音がかすかに聞こえた。
苦しいのだろうか。やっぱりすぐにでも確認しようと、じっと彼女を見つめる。

「あ、あの…」

彼女が何か言おうとしたが、先に確認したかった。
頬に手を伸ばし、体温を確認しようとした……瞬間にボンっと、再び彼女が顔を赤くした。

大丈夫だろうか。心配だ。
しばらく彼女の柔らかい頬に触れ、脈を確かめようとしていると、彼女が大きな声をあげた。

なぜ声を荒げたのか? 
不思議に思い首を傾げた。
なるほど。理由を話さなかったからなのか…。
それは申し訳なかった…。きちんと話そう。

「………熱が、あるかと思ったんだ」

「………え?」

「顔が、赤い。…もし熱があって苦しいのであれば、お館様のところへ行くのをやめ、
部屋で休ませようと思い…確かめようと…」

理由を告げると、彼女は予想外だったのか固まっていたが、しばらくすると
ふわりと優しく微笑んだ。


「ふふっ…心配してくれてありがとうございます!」

「!!」



 


全身の血が、ぶわりと巡るような感覚。
脈がどくどく音を立てて、鼓動が速くなる。

急に顔が熱くなるのを感じる。

その顔を、なんだか見られたくなくて、彼女から顔を背けた。

急がないと、お館様達が待っているだろう。そう思って彼女の手首を掴む。
なるべく力が入りすぎないように、優しく掴むのを心がけた。


壊したくない。傷つけたくない。



守りたい。









手に秘めた熱は、彼女に伝わっているだろうか。



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夢主
イケメンぱねぇ……。
ちょっと顔のいい人と接触しすぎだと思う今日この頃。
   ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎ここで大正コソコソ噂話(?)‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
夢主の好きな食べ物は前回も登場した「豚の角煮」と「わらび餅」です。
あまりの美味しさに感動。今では自分で作れるほどになりました。
誰得情報でしょうね。




イケメン
夢主はすぐに顔が赤くなるな。
きっと体調を崩しやすい体質なんだろう。これからは気を配らないとな…。
んふふ……。



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最後に、投稿遅くなってしまってすみません。

マジでコロみぶっころみ。皆さんも体には気をつけて。

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