「うぅ〜ん…」
急に目が覚めた。目の前に見慣れない天井が写る。
なんだかよく眠れたような、全然眠れなかったような、よくわからない感覚だ。
いつもは部活の朝練で早起きするのだが、ここはおそらく(信じたくないけど)私のいた世界では無いので、朝練なんて言うまでもなしに参加できない。
みんな私のこと、心配してくれてるかな…?心配されてなかったらどうしよう。あ、やばい泣きそう。
…てゆうか今何時だ?他の部屋からは物音一つしないぞ?
そぉっ…と部屋のふすまを開けてみる。
この部屋には二つふつまがあるのだが、一つは廊下に繋がる方、もう一つは縁側に繋がるのだそう。
昨日部屋に案内された時、日本人形のような子達に説明された。
しばらくその子達は私の部屋らしいところできゃっきゃっうふふと言わんばかりに部屋の中で遊んでいた。人形がちょっとばかし苦手な私にとって、それはもうただのホラーでしかない。
まぁ、可愛いからいっか。
そんなこんなでふすまをあけると、外は真っ暗。
なんてこったい。まさか真夜中に目が覚めてしまったのか。そうと決まればもう一度早く寝ないと。
きっと他の人も寝ているだろうし、起きていても特にすることないし、二度寝しよう。
布団に入る。
………眠れない。どうやら私は一度起きてしまうと再び寝ることはできない体質らしい。
すっごぉーい。初めて知ったぁ。新しい自分をしれてうれしいなぁぁあ。
…暇だ。一体どれくらいの時間がたったのだろうか。全然明るくならないんだけど。
ちょっと。どうなってんのよ。こんなに夜は長いものなのか?
どうしよう、喉が乾いてきた。感違いであってくれ。
だめだ、言葉にするともう目をさらさない。喉が乾いた。
オレ、オミズホシイ。
そろりそろりと部屋を出た。
ミシッ…廊下が少しきしむ、歩く音だけが響く。
暗所恐怖症ではないけれど、暗い廊下に1人というのはやはり怖い。
てゆうか道がわからない。 どこ、ここ…
気づくと周りは知らない部屋ばかりで、目の前には暗闇の廊下が続いている。
くるりときびすを返そうにも、広がる景色は同じ。
あぁーどうしよ。これ完全に迷子ですわ。
誰か、迷子センターに連れて行ってください。嘘です、迷子センターに連れて行かれるくらいなら
私の寝ていた部屋に連れて行ってください。
ミシッ…ミシッ…
…ん? なんだか足音が聞こえないか…?私は今立ち止まってるから、絶対違うし…。
まさか、幽霊!!?それか今日見たあの“鬼”!!?
うそうそうそうそぉぉ!!なんでここにいるのか。いや待て。落ち着け私。まだ決まったわけじゃない。 もしかしたら私と同じように夜中に起きて二度寝できずに喉が乾いて迷子になったお馬鹿さんではないだろうか?………いや、私自身のことは決して馬鹿ではない…と、思っているのだが。
ミシッ…ミシッ…
うおぉん(?)。これでマジで化け物だったらシャレにならん。せっかく今日は運良くイケメンに
助けてもらってなんとか生き延びることができたのに、全てが水の泡である。
てゆうかなんで私今日こんな災難に会うの?なに?なんか私やらかしたっけ?誰かのミルクプリン
勝手に食べたっけ?….いや、最近はそのようなことは一切、断じて私はやっておりません。
「おい、お前」
「ヒイィィッ!!!!?」
心臓が、止まった。
いや、もちろん物の例えだけども。
背後に人が立っている。もう一度言います。真夜中の、暗い、廊下で、私の、背後に、人が、立っている。 恐る恐るふりむく。
震える声を我慢して、必死に強がって声を絞り出す。
「だ……どぅあれでしゅか……」
超噛んだ。
…ん?
なにやら見たことのある顔だ。綺麗な黒髪に、オッドアイの瞳。顔の半分が包帯で隠れており、首元には白い蛇。この人は…
「誰……」
覚えていなかった。もちろん見た目は覚えているが。お館様という人に私が特別な血であると説明された場所に、居合わせていたうちの1人だ。ただ、自己紹介などは明日して、今日は疲れただろうから休もうか、と言われたので、名前を知らない。
「蛇柱の伊黒小芭内だ。お前なんでこんなところにいる。ちょっと部屋から離れ、戻ってきたら
部屋にお前の気配がないから、入ってみれば案の定いない。こんな夜中に起きて部屋を出てうろ
うろするなど常識に欠けてるんじゃないのか?そもそもなんで……」
“蛇柱・伊黒小芭内”と名乗る人は、急に説教を始めた。それもネチネチと。
待てよ。てゆうか…
「あ、あの…伊黒さん?は、どうしてここにいるんですか?部屋って、私の寝てた部屋ですか?」
「そうだが。
今度は俺の質問にも答えてもらおう。なぜお前はこんな夜中に部屋を出た?」
ちょっと待ってよ。前半。一番聞きたいところを答えてもらってない。
「早く答えろ」
ヒョエェ。怖い。
威圧感に完敗です。すんません。
「えぇと…実は喉が乾いてしまって。お水をもらいに行こうと思って、部屋を出たんですけど、
ば、場所が分からなくて、うろうろしてたら…その…迷子に…なっちゃって…」
喋れば喋るほど、顔が怖くなっていく。うおおん(泣)
そんなに悪いことしたのか、私。
「………」
無言が更に怖い。
ミシッ
伊黒さんが突然歩き始めた。え、待ってよ。どこ行くの。まさか置いて行く気なのか。
「ついてこい」
「え」
あ、置いていく気ではなかったのね。よかった…。
「異論、反論は認めん。はやくこい。」
有無を合わせない態度で、ちょっとびっくり。でもせっかく人に会えたし、ここにおいて行かれる
のもいやなので、大人しくついて行った。
でもその前にどこに行くのか教えてほしいのだがな…。
夢主
迷子になっちゃった子
途中それどころじゃなくて、喉が乾いていたのを忘れていた。
私は馬鹿ではない。
伊黒さん
夢主の部屋の前にいた人。理由は次回ご説明。
なんだかんだ心配してた人。
↑そういうとこ好きだよ。可愛いね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。