ウォール・マリア奪還作戦,当日。
『…イ…リヴァイ!』
「あ…?」
『朝よ。』
「…そうか」
『先に上官は王都に集まるらしいわ。一緒に行きましょ』
「おう」
着替えを済ませると,その時間までには少し時間があった。
あなたが紅茶を淹れてくれた。
「ありがとう。」
『どういたしまして』
「……怖いか?」
『え?』
「本当はお前は連れて行っちゃいけねぇ。巨人の王を失えば不利も重なるし,巨人が、どんな動きをするかも分からない。お前の考え一つで巨人共は例え奇行種でも思いのままだ」
『……そうね。』
「それに…」
『…何?』
「…お前を失って一番怖いのは,俺だ。」
『守ってくれるんでしょ?』
「!…」
『私は貴方が生きているなら,死なない。』
「……そうか。」
『うん。』
「帰って来たら,彼岸花を買いに行って良いか?」
『……枯れちゃったの?』
「いや,まだ残ってる。ただ…」
『…?』
「"白い",彼岸花だ」
『白…?』
「彼岸花を買った店の店主から手紙が来てな。俺が彼岸花を気に入っていたのを覚えていたのか,"白い彼岸花が手に入ったから,見にこないか"と書いてあった」
『…私も行く。』
「あぁ,」
「二人で,行こう。」
・
・
・
「では,ザックレー総統,皆さん,我々調査兵団はウォール・マリア奪還作戦に向かいます」
「気を付けて,帰ってきてくれ」
「はい。」
「調査兵団副兵士長,あなた。」
『!…』
「いえ,アットループ様」
『…』
「改めて,我々に救いの手を差し伸べて頂いた事に感謝致します。」
『…いいえ。私からもお礼を言います。私達巨人は人々に危害を加える者であり,そして怯えられる者です…。なのに,貴方達は私の言葉を信じてくださりました。ありがとうございます』
「…ご無事でありますよう,お祈り致します」
『えぇ。』
・
・
・
「流石,王様だね」
『何が?』
「もう王様の顔してるよ,君」
『……王様って言ったら……私,出発する前に会いたい人がいるのよね』
「それなら心配いらねぇ」
『リヴァイ…』
「もう来てる。」
そう言ったリヴァイの背後には,
『ヒストリア…』
ヒストリアがいた。
「あなたさん…」
『会いたかった,ヒストリア。』
「本当に…行かれるんですね,是非ご無事で」
『えぇ。』
「あの…必ず帰ってきてくれますよね…?」
『えぇ,もちろんよ,必ず帰ってくるわ』
「はい!」
『ふふっ』
「あなたさん,一つお願いがあるのですが…」
『何?』
「奪還作戦から戻って来たら,あなたさんには巨人の王として正式な式をとりたいんです」
『…』
「本当は話が出ていたんですが…私がお願いしました。"奪還作戦が終わってからにして欲しい"って。」
『…ありがとう』
「ただ,奪還作戦に行かせる代わりに王冠を被ると言う条件ですが…」
『分かったわ。』
「良いんですか?王冠を被ることになるんですよ…?」
「あなた,行くよ」
「ハンジさん…」
『だから,ザックレー総統に伝えて。"王冠は被る,けど調査兵団を抜けるつもりは無い"ってね』
「!」
『それじゃあね!』
「あなたさん!」
『ん?』
「……あなたさん,前から思ってたんですが,ユミルに似てるんです」
『…』
「でも,違います。あなたさん,大好きです!」
『…私もよ!』
・
・
・
「あなた。」
『エルヴィン』
「ちょっと良いか?」
『何?』
『どうしたの,もうすぐ出発よ』
「君にこれを渡しておこうと思ったんだ」
『何これ…手紙…?』
「あぁ。そう長くは無い。読んでおいてくれ」
『分かったわ。』
エルヴィンが私に渡した手紙…
厚さ的にたった一枚。
『…後,30分…』
読もうかしら。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。