第47話

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2021/07/27 16:53
目覚めると、私の大好きな人は目に涙を貯め、

幼い頃のような顔をして、私を呼んだ。



『リヴァイ…』

「ッ!」



「お前は、全く…」

『リヴァイ、ごめんなさい…』

「っ……」

『ごめんなさい、ちょっと苦しい…』

「ぁ、悪い…本当に心配したんだぞ」

『ごめんなさい…』

「これで何回目だよ…」

『さぁ…』

「説教は後だ。起きて、すぐですまないが…」

『事情聴取ね。』

「アスク、そこにいるだろ」



「はい!います!って副兵士長!?」

「エルヴィン達を呼んでこい。あ、クソメガネは…」

「押さえます!」



『事情聴取の前に…』

「あ?」





「!」

『ずっと待っててくれたのね。ありがとう』

「…あなた…」

『リヴァイも少し休みなさいよ』

「…っ…」

『ごめんなさい…私、全然リヴァイの力になれてない…前より迷惑かけてる…』

「前は俺やイザベル達があなたに迷惑かけてた。でも今は逆だな」

『ごめんなさい…』

「でも、あの時言ってただろ?イザベルを初めて連れて仕事に出た時に、

"迷惑だなんて思ってない、仲間なんだから迷惑かけ
ても大丈夫だ"

って」

『言ったわね、そんな事』

「その後に、

"リヴァイは私を助けてくれた。迷惑だと思ってるかもしれないけど、私は楽しいから、それでいい"

って言った」

『…リヴァイは、楽しいの?私の面倒見て…』

「……楽しくはねぇな」

『…』

「だが、今の俺には、それが生きがいだとと思う」

『面倒を見ることが?』

「おう」

『私は…傍にいて、守って、ちゃんとリヴァイの事分かるまで、私にとってリヴァイはどんな存在なのか、分かる事』

「それまで…か?」

『……わからないわ』

「…そうか。

『えぇ』




コンコンッ




「失礼する。あなた、話を聞くぞ」

『えぇ』

「アルミン、エレンを連れてきてくれ」

「了解しました」



『私がエレンを見た時、いつもなら項から出てるはずなのに、出て来なかった。だから立体機動装置を誰かから借りて出そうと思った。』

「それは私の指示だな」

『えぇ。…その直後、項から手が伸びて、引きずり込まれた。感触は、水の中に落ちていく感じかしら』

「俺も何もわかりませんでした。何が起こったのか…急に目の前が真っ暗になって、体が言うこと聞かなくなって…」

『…』

「上に手を伸ばす事が出来たので、誰かに助けを求めようとしたら、何かを掴んでいて、引きずり込んでしまって、それがあなたさんでした」

『エレンが見えた時、体が熱くなって、顔になにかの感覚を覚えた』

「それは俺も同じです。ガチガチに固まったような…そんな感じで…」

『それを最後に、気を失った』

「何かの事故なのか、それとも何者かによる仕業なのか」

「"何者"か?」

「もし、九つの巨人の中でそのような力を持つ者がいれば…」

『…私、何故自分とエレンの顔に硬質化を張ったのかしら…』

「やっぱり、あれは硬質化か」

『えぇ。なんで…』

「……あなた、エレンに触れてみろ」

『え?』

「どういう事だ?」

「今回の件については、エレンとあなたが関係している。もし2人が何かの鍵ならば、今回も何かが起きるかもしれん」

『…わかったわ。エレン』

「はい…」





なんの関係があるのか全く分からない私達に、一体何が起こるのか

それは、これからの私とエレンの人生を繋ぐ

驚くべき事だった。

触れた直後…



『ッ!』

「イ゙ッ!」

「!」

「あなた!?」



エレンの手に触れた直後、エレンの顔にさっきと同じ硬質化の後が出て,私の指先も固まった。

やっぱり鍵は,私とエレン。


『大丈夫,エレン⁉︎』

「は,はい…今回は何とか…」

「理由もなくこんな事が起こる訳がねぇ…この原因は解明しなければならない」

「そうだな。この事は我々も解明に参加し,ハンジに任せよう」



「呼んだぁ⁉︎」

『いきなり過ぎる。来るタイミング考えて』

「すみません副兵士長…ハンジさんが力強くて…」

「ねぇねぇエルヴィン!やりたぁい!」

「あぁ,君に任せよう」

「ヤッタァ!」

『遊びじゃないわよ』

「あの…これから俺達どうなるんですか…」

『大丈夫よ。私とエレンのこの現象を解明してウォール・マリアに奪還作戦実行に行くわ。じゃないと,エレンに触れる事も出来ないからね』

「分かりました」


「じゃあエルヴィン,俺は行くぞ」

『え,どこに?』

「調査だ」

『まさか…』

「あぁ。お前も来るか?」

『…えぇ,行く』



バタンッ


「あの,兵長達はどこに?」

「エレン達の誘拐地点だ。何かの痕跡が残っているのではないかと言ってな。」

「他の兵士は連れて行くんですか?」

「数名ね。でも,ほとんど2人で動くと思うよ」

「…どうしてですか?」

「リヴァイ達が例の場所に行く理由は調査だけじゃない。」

「切り裂きケニーを見つける為だろう」

「言ってたもんね。"親同然だった"って」

「あぁ」








「リヴァイ兵長!」

「何だ,クソ漏らしそうな顔しやがって」

「ケニー・アッカーマンを発見しました!」

「…分かった,案内しろ」

「はい,こっちです」




「…」

「あそこです」

「後はいい。あなたを連れて来い」



『大丈夫,今着いたわ』

「副兵士長,お疲れ様です」

『お疲れ様。残りの兵士には本部に戻るように伝えて,後は任せて』

「了解。」




『都市伝説になるぐらいの切り裂きケニーが,なんて姿してるの』

「…」

「大火傷にその出血…あんたはもう,助からねぇな」

「…いや。…どうかな」

『!』

「!」

「ロッドの鞄から,1つ掠めといたやつだ。どうもこいつを打って,巨人になるらしいな。…馬鹿な巨人になるだけだが,ひとまず…延命できる…そうだ…」

『…』

「それを打つ時間も権力も,今よりあったはずだ。何故やらなかった?」

「…あぁ,なんだろうな…ちゃんと注射は打たねぇと,あいつみたいに,出来損ないになっちまいそうだしな…」

『…何よ,それ…』

「あんたが笹で死を待つ訳ねぇよ。もっとマシな言い訳はねぇのか。」

「あぁ…俺は死にたくねぇし,力が欲しかった。…でも…そうか。今なら奴がやった事、わかる気がする…」

「あ?」

『奴…って?』




そう言うとケニーは,笑い出した。

悲しむような,呆れるような,笑い声

そして,気付いたんだって




「俺が見てきた奴…皆そうだ…酒だったり,女だったり,神様だったりする…一族,王様,夢…子供,力…」

「…」

『…』

「皆,何かに酔っ払ってねぇと,やってられなかったんだなぁ…皆何かの奴隷だった。あいつでさえも…」




すると,かなりと吐血。

何が言いたいのか,なんとなく分かる。

だけど,それを知ったら…貴方は終わる。

切り裂きケニーは終わる。

そして私とリヴァイに聞いてきた。





「…お,お前は…何だ?英雄か?」

「ケニー!知っている事全てを話せ!初代王は何故,人類の相続を望まない⁉︎」

「…知らなぇよ。ただ…俺らアッカーマンが,対立した理由は,それだ…っ」

「!」

『リヴァイ,落ち着いて。乱暴はダメ』

「…俺達の姓も,アッカーマンらしいな。…あんた,本当は母さんの何だ?」

「ハッ馬鹿が,ただの兄貴さ…」

「…」

「あなた,お前はどうだ?」

『え?』

「お前は,何の奴隷だ?」

『私は…』




この質問は,適当には答えられない。

自分の立場,巨人の女王と言う自分の威勢

ケニーの言う通り,人間みんな何かの奴隷

でも私は,誰よりも1番奴隷になってはいけない

でも,逆らえない。





『私は,私の奴隷』

「…」

「お前の…?」

『巨人でもないし,リヴァイでもない。何故なら自分の力で,巨人のこの力を使わなくても勝てるからね』

「嫌がらせで言ってんのか」

『かもね。でも,私は私に勝てない。いつも負けてるの。自分に他の自分がいる訳じゃない…なのに負けてる。』

「俺がお前に…伝えた最後の教え…覚えてるな?」

『…えぇ』

「…おい,何であの時,俺達から去って行った?」

『!』

「俺は,人の親には…なれねぇよ」

『…ねぇケニー,ケニーは本当にクシェルさんの事妹だと思った?』

「あなた…?」

「あ?」

『本当の妹だと思うなら,大切な肉親だと思うなら,どうしてそんな大切な妹の子供を,路地裏で息だけしてた死にかけの女の子に託したの⁉︎』

「…何でだろうな…」

『…自分が分からなくなってきた…私は今まで,リヴァイの傍にいれればそれでいいと思ってたのに…分からなくなってきたの…』

「…いいんだよ,お前は,そのままで」

『…グスッ』

「……1つ、面白いことを教えてやろう」

『え…?』

「…お前、リヴァイといる時と…俺といる時、どっちの方が自分の力に手応えがあった?」

「…は?」

『え…』

「…じっくり考えろ。」

『…?…』

「リヴァイ」

「…あ?」

「絶対に守れよ,あなたを」

「…あぁ」




ケニーはリヴァイに注射薬を。




私には、手紙を渡した。




「!」

『!』

「…」

『これは…』

「ケニー…」

『!…』





ケニーは死んでいた。

自由を手に入れる事が出来ると確信していた男が最後に,自由の代償を知った。

自由を手に入れる事が生きる糧だったケニーが生きる事を諦めた。




『…』




私は調査兵団のマントを取り

マントの後ろに付いている自由の翼を立体機動装置の刃に切り削いだ。

自由の翼をポケットに閉まって,マントをケニーに被せた。



「…手紙」

『…』

「今読め」

『…えぇ…』



手紙を、そっと広げて

中を読んだ。



『っ…⁉︎』

「?…」

『ケニー…これ…』

「…」

『…うっ…』




私は涙が溢れて…

十分に息ができなかった。



「…あなた…」

『…っ…ケニー!』




私は、ケニーの遺体に抱き着いた。




『うっ…うぁぁ…!』

「…」




リヴァイは、手紙の内容を見たわけじゃないのに

私の頭を撫でてくれた。




『……ケニー…っ…』

「ありがとう」









先に兵士達を帰らせておいたから,帰るのも2人

壁について,馬を置く。

本部に帰るまでは街を歩いた。



「あの時も,こんなだったな」

『あの時…?』

「喧嘩が終わって,ケニーが俺達から去って…」

『そうね。地下街と同じ,昼なのか夜なのか曖昧な』

「あぁ」

『…ねぇ,リヴァイ』

「何だ?」

『私達2人の人生ってこんな空の時から始まったわよね。また作ろうって言ったら,賛成する?』

「あ?」

『もう一度,一から作ろうって言ったら』

「…いいや」

『よね』

「だが」

『?』

「このまま2人で巨人の事も力の事も,調査兵団の事も,壁も何もかも捨てて,2人で逃げようって言うなら,俺は行く」

『…私達は2人で1つ。離れたらロクな事ない。だから私達は全てを捨て去る覚悟は出来るのよ。どっちも死なないから』

「そうだな。」

『えぇ。…さぁて,飲もうかな』

「今日起きたばかりだろうが」

『でも壁外には出たし,大仕事したから大丈夫だよ。酒なら』

「酒なら大丈夫じゃなくて酒だから大丈夫じゃねぇんだよ」

『このまま帰ったら、ハンジの軟禁ねぇ』

「正しくは,事情聴取」

『一杯付き合ってくれません?旦那さん』

「…喜んで。」
















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