第67話

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2021/02/07 13:15
「お茶会,ですか?」




ハンジさんから聞いた話だった。




「うん。ヒストリアとあなたが王都でお茶会するんだって。2人,あんまりじっくりと話す機会無かったからさ。」

「確かに…。」

「人類の王と,巨人の王が仲良くお茶会,か…」

「まぁ,今日はただ単に,"友人"としてだろうけどね」

「なら,僕らは着かなくても?」

「あぁ。だが,1人か2人は着いていって欲しいんだけどぉ…ミカサ,頼める?」

「私,ですか?」

「私はこれから別の用件で王都に呼ばれててね…」

「行ったら,ミカサ?」

「ですが,兵士長に呼ばれてて,これからローゼに行くんです」

「そっかぁ…ミカサが適任なんだけどなぁ…」

「あなたさんにとって,私の他に適任なのは,もう1人いますが…」

「「え?」」

「ジャンがいます」

「あー,ジャンかぁ!どこに居た⁉︎」

「コニー達と一緒に食堂に。」

「よーし,ジャーン‼︎‼︎」



「何であんなに急いでいるの?」

「一つしかないよ。」

「?」

「忘れてたんだよ。ハンジさんの事だもん。いつもみたいにすっぽかしてたのさ」

「また?」

「うん。だから走ってるんだよ」

「そう。」














「おい,ジャン。そこの積荷をこっちに運んでくれ」

「これか?」

「おう。」

「重っ…」

「流石,ジャンですね!私これ持てなかったんですよー」

「サンキュー!」

「お,おう…」




「ジャーン‼︎‼︎‼︎」




「「「⁉︎」」」

「おーい‼︎‼︎」

「ハンジさん⁉︎」

「ヤベェ…」

「え?」

「どうしてですか,ジャン?」

「あなたさんが言ってた…。"あの目をしてる時は,何があっても逃げろ"って…」

「じゃあ…」

「逃げましょう‼︎」



「待ってぇ!逃げないでぇ!」



「気にするな!逃げろ!」

「「うわぁぁぁあ‼︎⁉︎」」

「本当に待ってよ!ジャン!あなたの事で頼みがあるんだぁ!」

「え,俺…⁉︎」

「君にしか頼めないんだぁ!」

「はい⁉︎」




「なんだぁ,そんな事なら早く言って下さいよ…」

「ごめんねぇ…頼める?」

「兵長は行かないんですか?」

「リヴァイに言ったら,"また忘れてやがったのか"って言って殺されるんだよ…分かるかい…?」

「なるほど…」

「お願いだよぉ!頼める⁉︎」

「良いですよ」

「ありがとう‼︎」










結局,お茶会には

ジャンと僕が行く事になった…。




「結局俺らで行く事になったな,アルミン」

「そ,そうだね…」




『ジャン,アルミン』




「「!」」

『ごめんなさいね。急に来てもらう事になっちゃって』

「いえ。」

『ハンジから話は聞いたわ。どうせ忘れてたんでしょ。全く…』

「で,ですね…」

『後で締めとくから,安心してね』

「「(あ,安心出来ない…)」」













コンコンッ




「はい。」




「失礼します。女王陛下,アットループ陛下が到着されたそうです」

「あなたさんが…!」





『ふぅ。久々に此処に来るわね。…ウォール・マリア奪還後の会議以来ね』

「ですね。」

『ヒストリア,元気にしてるかしら』

「きっと元気ですよ」

『そうね。』




僕らは馬車に乗っていた。

表に着いた。




「あなたさん,手どうぞ」

『ありがとう。』

「ヒストリアはこの中ですね。行きましょう」

『えぇ。アルミン,そこの包みを持ってきて貰える?』

「これですか?」

『そう。ありがとう』













「女王陛下は,こちらです。」



「お城となると,やっぱり豪華ですね」

「だな」

『そうね。ヒストリアがこの前手紙をくれたの。"お城は豪華で少し息苦しくなる"って。』

「女王ですもんね,仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。」

『えぇ。"訓練兵の頃が懐かしい"ってさ』

「「…」」

『……あの頃の方が良かったって,思った事ある?』

「「!…」」

『…私はあるわよ。私にも"あの頃"ってものがあるけど…その頃の方が,想像する"自由の規模"が小さかった。』

「…はい…。」

「それは,俺達も同じです…。こんなにも巨人が恐ろしいものだと知らなければ,兵士になる事もありませんでした…」

『私も…』




あんな依頼を受けなければ,イザベルやファーランを失わずに

4人で暮らしてた。

立体機動装置で,飛んで

盗みをして,市場で夕飯の食材買って

4人で楽しく暮らしていれば…

あの生活が壊れる事は無く,こんなにも地獄を見る事は無かった。




『…辛いなぁ…』

「「…」」







コンコンッ







「失礼します。アットループ女王陛下を,お連れ致しました」





『…久しぶり。ヒストリア』

「あなたさん!」

『元気にしてたかしら?』

「はい!」

「久しぶり,ヒストリア。いや,女王陛下って言った方が良いかな?」

「すっかり様になってるな,ヒストリア」

「アルミン,ジャン…2人とも元気そうだね」

「おう。この通りよ」

「うん。」

「そっか…。」

『…ヒストリア,手紙通り,持ってきたわよ』

「!」

『…アルミン』

「はい」

『包みを,ヒストリアに』

「…はい,どうぞ」

「ありがとう。」

「何なんですか,それ?」

『…じっくり話すわ。』




ソファーに,私の隣にジャンが,前にヒストリアが,その隣にアルミンが座った。


私が持ってきた物は,一冊の"本"だった。

この前,ハンジが団長に就任されて団長室に移動する時に

エルヴィンの本の棚から出てきた本だった。

一度,資料を借りたい時に



『この本は何?』

「さぁ…俺が団長になった時から,ずっとそれがあった。」




「何故今これが出てきたんですか?」

「何か巨人の秘密と関係があるんでしょうか?」

『本棚にあって,見つけた時…ページが固まっていたの。接着剤か何かで固まっているのかと思ったんだけど…』

「まさか…」

『えぇ。気付いた時に,ハンジに調べて貰ったの。そしたら…"硬質化"だった』

「「「!」」」

『私は巨人の女王よ。九つの巨人が引き出す力のうちの,一つである,硬質化…もちろん硬質化も,自由自在に操れる』

「だから,硬質化も溶けて,本が開けた」

『えぇ。』

「この本には,どんな事が?」

『……マーレ』

「「「!」」

『マーレの情報が,少なからず載っていたわ』

「…この本の存在を知っているのは?」

『私と貴方達3人,後ハンジだけよ』

「「「…」」」














「本?」

『えぇ。』





私達が王都から戻ってきた後,ハンジを呼び出して

本について話した。




「マーレについての本,か」

『この本を手掛かりに,調査が出来るかもしれないわ』

「成る程…。調べてみるよ」

『ありがとう。』








真逆…あんな事になるなんて

思わなかった。







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