第65話

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2020/12/23 13:54
『海?』

「そう,海だ」



奪還作戦から数ヶ月経ったある日,ハンジに言われた話…。



「エレンの記憶通り,本当に海があるなら…グリシャの手記通り,大きな塩の湖があるなら…」

『……それに,アルミンの夢ね』

「嗚呼。私は,エルヴィンの命はアルミンが夢を叶える事で,命の存在さが得られる。元からちゃんとあったけど…何故かそう思ってしまうんだ」

『…私もよ』

「もしかしたら…これは私の考えなんだけど,我々は巨人を全て倒しちゃったんじゃないかと思ってね。」

『最近,壁に現れないわね』

「嗚呼」

『…なら,兵士を多く連れて行く必要もないんじゃない?』

「嗚呼。"あの場"にいた人間だけで良い」

『…賛成。海に行きましょう』

「いぇーい!」

『ちゃんと報告しなさいよー』

「はいはーい!」















其れから数ヶ月,暖かい風が吹く春頃

私達調査兵団は,壁外調査に出る。


私は,今回はエレンの記憶通りならば

エルディア人が巨人にされた場所に行くから

皆とは違う,コートにティアラを乗せて

壁外調査に出る。




「コニー,コニー!」

「どうした,サシャ?」

「コニーが自分の馬を持って来ると言ってから,全然戻って来ないんです」

「何してんだよ」




「悪りぃ!遅くなった!」




「やっと来ましたね!」

「いやー,俺コイツと仲悪くてよ」

「なんだよ,それ」




『仲が悪いんじゃなくて,ちゃんとして相棒になってあげてないだけよ。』





「「「!」」」

「あなたさん!」

『この子達はちゃんと可愛がってあげなきゃダメよ。何のために長距離を走らされて…何のために巨人に踏み潰されて死ぬのか…分からないんだから…』

「そっか…」

『にしても,そんなにこの子懐かなかったかしら?』

「全然ですよ!」

『そうかしら?』




あなたさんは馬を撫でると,馬は喜んでいた。




「はぁ⁉︎」

「喜んでますね!」

「コイツぅぅぅ‼︎‼︎」

『ふふっ,無理に懐かそうとしなくても良いんじゃない?この子達も賢いんだから,窮地の時くらい分かるわよ』

「なるほど!」

『後は指笛の音を覚えさせる事ね。』

「指笛?」

『人が出す指笛の音って,同じ音を出す人なんてこの世に1人もいないわ。全員違う。』

「その音を聞き分けるんですね」

『そうよ。頑張ってね』

「「「はい!」」」

『ふふっ。…リー!』



あなたさんがそう呼ぶと,一頭の馬が近寄ってきた。



『私の馬よ。名前はリー。仲良くしてあげて?』



俺とサシャとコニーの馬に,そう呼びかけると

馬達は戯れ始めた。



『私は,ここの班で動くから,貴方達も宜しくね』

「「「はい。」」」

『はぁー!女王様は身体が固まりそう!』




「そういう時は,ハンジを殴れ」




「「「リヴァイ兵長。」」」

『何,リヴァイの新たなストレス発散方法?』

「嗚呼。アイツ,殴っても蹴っても奇行種面が治らねぇからな。面倒くさい」

『全く,そんな事言ってたら,余計な仕事増やされるわよー』

「だな。」

『あ,ジャン』

「はい。」

『ハンジに,少し離れるって伝えておいて』

「分かりました」












「海,か…」

『"捧げた心臓が,どうなったか知りたがっている"。』

「…」

『エルヴィンが,そう言っていたじゃない?』

「…嗚呼。」

『……考えたくないんだけど…』

「…」

『物凄く…嫌な事が分かってしまうんじゃないか,って…気がするの』

「……それは,お前にとってか?」

『…いいえ,あの子エレンにとってよ』

「…どうだろうな」

『……リヴァイ』

「何だ?」



『キス,して。』



「…」

『知ってるでしょ?私がリヴァイにキスをせがむ時は…私がどうしようも無い気持ちに襲われている時だって…。』

「…嗚呼,それは誰よりも分かってる」

『…してよ,キス』

「…………来い。」




私は,彼の広げられた腕の中に

自然に吸い込まれて行くように,抱きついた。

向き直すと,ティアラを直してくれて…

私が彼の首に腕を回すと同時に,私の顔に手を添えて…

そっと,優しく

されど…噛み付くようなキスをした。

決して息苦しくなるようなキスはせずに…すっ,と気を楽にしてくれた。





『……"愛してる"。』

「…知ってる。」

『…言って…?』

「……嗚呼,」









「"愛してる"。」












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