第33話

32
3,418
2021/07/27 16:19
「なんだと…!?」

「…殺されたんだ、ニック司祭が…!」



ニック司祭…

3つの壁を女神とし、神の信者であるもの

そして壁の秘密を知る者

そんな、私達にとって重要な人が殺された





「ニック司祭は…間違いない!中央憲兵に拷問を受け、殺された!」

「…爪は何枚剥がされていた?」

「一瞬しか見えなかったけど、全部…」

「話す奴は1枚で話す、だがそうじゃねぇ奴は何枚剥がしても同じだ。ニック司祭は最後まで自分の信じるものを信じた」

『レイス家…巨人…壁…』

「おい、どうした?」

「何をブツブツ言ってるの、あなた?」

『…まさか…』

「おい、あなた」

『お、』

「どうした?」

『いや…ちょっとした仮説を立ててた…』

「仮説?」

『九つの巨人を全て支配しているのは巨人の王。あまり私も詳しい事は知らないけど…九つの巨人の中に"始祖の巨人"と言う巨人がいる。』

「確か、巨人を操るというのである巨人だったね」

『その始祖の巨人の力は今、エレンの中にいるかもしれない』

「はい…」

『でもあれから実験をしてみても、始祖の巨人の力が実感出来ない。つまり、レイス家が壁の外の世界について多くの情報を兼ね揃えているのは……その巨人の力が関係しているのかも知れない』

「それが巨人の女王であるお前からの意見か?」

『確信がある訳では無いけど…』

「確かにそういう事なら辻褄は合う」




「失礼します」

「失礼します」



「リヴァイ兵長、エルヴィン団長からです」



「副兵士長、これは兵長の手紙と共に副兵士長に渡して欲しいと」

『ありがとう』




「…」

「ニック司祭の事を伝えに行ったんですが…」

「…全員撤収だ。ここを捨てる、全ての痕跡を消せ」


『…服も兵服以外の動きやすく目立たないものに着替えて。立体機動装置も付けて』

「「「!」」」











「どこに行ったんだ?」

「ここにはいねぇのか?」











「危ねぇ…あと少し遅れてたら俺達どうなってたか…」

「どうして、エルヴィン団長はこの事を…」




『…もう1つ、私宛ての手紙に書いてあった。エルヴィンも私と同じ事考えてたわよ』

「二ファさんと一緒にここに来ました。私達に手紙を渡した後にはもう…」

『え?』




「中央憲兵から礼状が来たらしい。調査兵団の壁外調査を全面凍結、エレンとヒストリア…あなたを引き渡せってな」

「「!」」

「それと、私とアスクが手紙を受け取った後、中央憲兵団が調査兵団の本部に来ました。調査兵団の身柄を確保するそうです」

「後、憲兵団団長…ナイル・ドークがエルヴィン団長といました。エルヴィン団長に手錠をかけ、馬車に乗せて連れていくのを見ました」

『一気に調査兵団全員を…』

「まるで犯罪者扱いじゃないか!」

「もう裏でどうこうって話じゃねぇな。何より構わずって事だ」

「そこまでして守りたい壁の秘密って…それにエレンとヒストリア、あなたを手に入れたい理由ってなんだろう…」

『王都が憲兵団を使って調査兵団の元にいるエレンとヒストリア、私を攫う…今回は私達は身を隠す、そして探す。でもそれは表の行動なんじゃないかしら』

「表?」

『本当は裏でもっと別の人物ご、王都に命令されてエレンとヒストリアと私を狙ってる』

「有り得るね…」

「とにかくこいつらを狙っている事は分かった。だがこんな所にいつまでも居座ってる訳でも無ぇ…エレンとヒストリア、あなたをトロスト区に移動させる」

「何故、あえてニック司祭が殺されたトロスト区に?」

「中央に行った方がヤバいだろ、まだゴタついてるトロスト区の方がいい。街中の方がいざって時に、こいつを使いやすいしな」

「…確かに。」

「それに、こっちも一方的に情報がないのは不利だ。敵の顔ぐらいは探る。あなたの勘が正しかったら別の野郎が来る。ハンジ、お前の班から何人か借りるぞ」

「もちろん。……よし、私はエルヴィンの方に着く。モブリットは私と、他の者はリヴァイに従ってくれ」

「「「了解」」」


『王都からの命令なら素人を使う はずない。中央憲兵で最近、荒れている所があるらしいわ…』

「…そいつらが来ない事を祈ろう」
















「随分とすばしっこいですね、奴ら」

「そりゃ鍛え方が違うからな、あのチビとお嬢ちゃんは」

「知り合いなんですか?」

「古いな…」














トロスト区




「お前はどうする?」

『私はここにいてもいいと思うわよ』

「俺にでもなるか?」

『まぁ昔から変装は得意だけど』

「しっかり紛れてろよ」

『えぇ』




エレン達は別の馬車に乗った。

ジャンがエレン、アルミンがヒストリアに変装し、"素人の方"から潰せるように仕掛けた。




________________________


『リヴァイ』

「どうだった?」

『読みは外れていなかったわ。やっぱり、私達を狙っているのに素人を使うはずがない。もう1つあった。でも…』

「あ?」

『…もしかしたらその素人じゃない方は、王都が引っ張ってきた奴らじゃないかもしれないわ』

「何?」



________________________




私を狙うのはきっと、今すぐにでも殺したいから。

王都がこの世で最も恐れているのは、自分が死ぬ事。

その過程である巨人はさぞかし憎いでしょうね

そしてそんな奴らの女王。

私達を殺さないで手に入れたいと言っていたのは、自分が手で何とかしたいからじゃないかと思う

これからトロスト区を回る

アスクにはハンジに着いてもらうように言った



「…後ろだ!気を付けろ!」

『!』



「クリスタ…じゃなくて、ヒストリアとエレンとあなたさんが攫われてしまったァ!」





『やっぱり…背格好が似てるサシャにでも、化けとくべきだったかしら…』

「は?」

『っ…!』

「い"っ!」





「あなた、来い!」



リヴァイは手を伸ばした。

素人の方を片付ける為に2人には犠牲になってもらったけど、私は本当に攫われた。

硬質化で固めようかと思ったけど、騒ぎを大きくしても無駄…

お得意の格闘術で相手を引き剥がし、必死でリヴァイに手を伸ばした




『リヴァイ!』






手を引いてくれて何とか助かった

リヴァイの胸の中に引きずり込まれ、ちょっとびっくりしたけど

リヴァイの背中をポンポンと撫でてあげて、私はすぐに荷物の確認をした

リュックは取られていない…立体機動装置もある



「お前らは素人の片付けだ、エレン達の馬車の監視は二ファとハンジの部下に任せてある。ミカサはジャンとアルミンの様子を報告しろ」

「了解」

「あなた。お前は一応狙われているが…別行動でも大丈夫か?」

『もちろん』

「ならお前は俺達とは反対方向に向かえ。素人じゃねぇ方がいつ出てくるか分からねぇ。」

『確かに…』

「15分待って注意を探れ。見つけたらいつもみてぇにバカ速ぇ速度で立体機動装置で飛んで来い。いいな?」

『了解』

「行くぞ」











「!、二ファ!」







「よォ、久しぶりだなリヴァイ…」

「…」





「ヒャッホーイ!…あ?お前あまり変わってねぇな?」

「!、ケニー!!」















さすがに素人じゃないから、見つけるのは難しいわね。

自分達から出てきてくれたら話は別だけど。




『ねぇ?中央憲兵さん』

「…」


気付かないとでも思ったのかしら。

私の周りには今、少なくとも5人はいる

無視してリヴァイに報告すべき…?

いや、向こうに行ったら危険が及ぶ

今まで顔を出さなかった敵が一気に出てきたと考えてもいいわね

肩は充分治った

もう動ける

自分の為に、一切の躊躇なく、裂きあげる。

人を殺すのは何年ぶりかしら。



「動かないで頂けますか?」

『…』

「貴方の身柄は我々が回収します」

『触るなと言われると触ってしまう、見るなと言われると見てしまう…。』

「「「…」」」

『そういう事って人間いっぱいあるわよね』

「…」

『それと同じように、今私は…全力で体を動かしたい』

「!」

『出てきてくれたのは感謝するわよ!』

「全員で目的を確保せよ!」

「「「了解!」」」










ちゃんと皆、無事かしら…

サシャ

コニー

ジャン



リヴァイ










プリ小説オーディオドラマ