第52話

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2020/08/14 16:13
「ん,…」




頭が痛ぇ…。



『気付いた?』

「あなたさん…」

『覚えてる?何があったのか。』

「いえ…」

『…。アルミン,そこに居る?』



「はい!」



『リヴァイに起きたって報告して来て欲しいの。頼めるかしら?』

「はい。分かりました」



「あの…俺は一体…?」

『全て話すわ。良く聞いてね』












「俺が……巨人に…?」

『私がしたの。作戦は,暴れているエレンを認識するという行為を頭の中に入れさせ,それが慣れて来たら,私を認識させる。動きを止めたら,巨人化した貴方にエレンを倒させる』

「…そんな事,全く…」

『やっぱり,完璧に記憶は無いわね』



コンコンッ



「失礼する」

「団長。」

『よ,エルヴィン』

「調子はどうだ?」

「あまり,良くないです…」

「そうか。まず初めに君に言っておかなければいけない事がある」

「…。」

「あなたが1分で考えた作戦に,頼るしか無かった。その1分はどれたけ実用性があるのか,我々は全く考えもしなかった。そのせいで,君を危険な目に合わせてしまった。」

『貴方が1番適任だと思ったのは,体力的にも頭脳的にも,私にとって貴方が1番だと思ったから。それ以上に私は貴方への信頼も強かった。貴方ならきっと,作戦に乗ってくれるし,私も必ず貴方を守れると思った』

「団長として,謝罪しよう。すまなかった」

「いえ,そんな!頭を上げて下さい!」

『私も,ごめんなさいね』

「待って下さい!俺は,あなたさんを信じました。それで今があるんです。あなたさんの思いはちゃんと俺に届きました。」

『…。』

「俺は,結局ちゃんと生きてます。大丈夫だったんです」

『…そうね』

「元はといえば,エレンが暴れたのが…」

「その件だが」

「!」

「君にも言っておかなければいけないな。今回の実験でエレンが暴れたのは,あなたとエレンの巨人の力の関係だ」

「どういう…」

『前々から,私とエレンは巨人の力で少しおかしな所があるの。ロッド・レイスの巨人を止めた日があったでしょ?』

「はい。その後ヒストリアが王座に…」

『そう。その前に,エレンは1日,私は3日眠っていたわ。』

「エレンの話は聞きました。顔に巨人化の跡が付いていて,氷のようなものが一緒に付いていたと」

『えぇ。あの後,ヒストリアがロッド・レイスを倒した後,エレンを項から出すように言われて,出そうとした。その瞬間,私はエレンの項の中に引きずり込まれてね。そのまま気を失ったわ』

「引きずり込まれた…?」

『2人共目が覚めた後,リヴァイとエルヴィンと話してね。あの時の件の原因は私とエレンにあった』

「あなたがエレンに触れた瞬間,エレンには顔に巨人化の跡と硬質化の跡。あなたには触れた手に氷のような跡が着いた」

『この原因が何か分からないと,私とエレンはお互い触れられない。ハンジが原因を調査してくれているけど,巨人と言うだけで謎は多いばかりよ…。』

「ウォール・マリア奪還作戦は,可能なんですか…?」

『一応,今の段階ではね』

「そうですか。」




コンコンッ




「入るぞ」

「兵長…!」

『エレンはどう?』

「……おい,入れ」



「…。」



リヴァイの後ろから,さっきの実験で気絶していたはずのエレンが目を覚まして

私達のところに来ていた。



「もういいのか,エレン?」

「はい,大丈夫です」



『…エルヴィン,外に出よう』

「ん?」

『ほら,リヴァイも』

「おい,ちょっと待て…」

『ほらほら,行くの!』



バタンッ






「何なんだよ,一体」

『2人は訓練兵からの仲間よ。2人だけで話したい事もある,少しは2人にしてあげて』

「…エレン,謝るつもりだな」

「あぁ,そのようだ」

『…。』






「ジャン,悪かった!」

「…」

「俺,自分でも分かってるのに無理して…ミカサやあなたさん…ましてやお前にまで迷惑かけて…兵長に聞いた。ジャンがあなたさんの力で巨人化したって…。本当にごめん!」

「…ぷっは!」

「?」

「なんだその間抜け面は」

「え…?」

「別に怒ってる訳でも無ぇし,誤って欲しくも無ぇよ。お前が無理したのは,自分が人類の希望になっているから,その為に力を少しでも付けたかったからだろ?」

「…ッ」

「お前が自分勝手にやった事じゃねぇ。謝んなよ」

「ジャン…」

「ま,今回の実験は実験と呼べるようなものでも無ぇってあなたさんは言ってた。それでも分かったことがあるって」

「…分かったこと…?」

「例え奇跡かも知れねぇけど,あなたさんは人間を巨人に出来る」

「!」

「いよいよ,あなたさんは敵か味方か,分からなくなってきたって訳だ」

「…お前はどう思うんだ?」

「何がだ?」

「あなたさんを,敵と味方,どっちに思う?」

「…俺は,味方だな。だからこそ,失敗してそのまま巨人になるかも知れねぇってのに,あの時あなたさんを信じた。」

「…良く,信じられたな」

「俺に頼んできた時のあなたさんの目は本物だった。

「私はこの場で,誰よりも信頼できる人間よ」

この言葉の意味が,言葉の重みが良く分かったぜ。
地獄を見てきた人間の,"強い"人間の言葉の信頼性が」

「俺もあなたさんは凄いと思う。どんな時も"大丈夫だ"って声をかけてくれる。でも,それに甘え過ぎじゃダメなんだって分かった」

「……俺達は,生きてる。更に進もうぜ!」

「おう!」














『曖昧な子達ね。嫌いじゃないけど』














「え,これって…」

「肉…肉,ですよ…」



「今日はウォール・マリア奪還作戦の前祝いだ!思いっきり食えy」

「「「ウワァァァァ‼︎!」」」

「ってえぇ…?」











『何かな?』

「どうした?」

『食堂で騒いでる』

「チッ、あの野郎…」

『手加減覚えてね〜』




「(何で…誰も止めてくれねぇんだ…?)」

「(もう…肉が…出てきちまう…)」



「おい」


「ウグッ」

「グハッ!」


「てめぇら全員はしゃぎ過ぎだ。もう寝ろ。後,掃除しろ」

「「「了解。」」」



『エレン,ジャン。大丈夫?』

「「…」」

『ま,吐かなかっただけマシだよ。吐いてたらきっと朝まで床掃除_』

「オエッ!」

『あ,遅かった。』












俺は,エレンとミカサ,アルミンの話を聞いていた。

ガキが話すような昔の話題だったが,聞いていて飽きなかった。

そんな俺の所に来たのは…



『こんな所で何してるの?』



あなただった。



「…あいつら。」

『あぁ,幼馴染の3人か…。』

「…あの2人がいれば,俺達もあぁなってただろうな」

『…うん』


2人とは,イザベルとファーランの事だ。


『…明日,会いに行くんだね』

「そうだな。」

『……ねぇ,リヴァイ』

「あ?」

『………ごめん…肩貸して…』

「…。」

『私…もう,ちょっと…耐えられないかも…』

「無理をし過ぎなんだよ。何でも頼れ。」



静かに泣くあなたを自分の肩に埋めさせ,包み込んだ。

忘れかけていた事だが,あなたは昔からいつも無茶をする。

その無茶をずっと一人で抱える。

少しは,俺を頼って欲しい。



『…はぁ…』

「…大丈夫だ」

『…………ん。』

「愛してる。」

『…うん,』



そしてもう一つ,忘れかけていた事がある。



『知ってる。』



月に照らされるあなたは,とても綺麗だと言う事だ。










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