『…。』
「あなた。」
『…』
「おーい,あなたー?」
『…なぁに?』
「ちょっと〜,目くらい合わせてよ」
『何よ,ハンジ?』
「エルヴィンがあなたを引っ張ってったもんだから,何かあったのかなーって」
『…まぁ,ちょっとね』
「何?」
『うーん…。部下としての信頼?』
「何だそりゃ」
『私も分からない』
「あっはっは!本当に何それ⁉︎」
『ふふっ,本当に分かんない』
エルヴィンが直接渡してきた手紙。
読んだ後,エルヴィンが何をしたいか分かった。
それが分かるのはまだ先の話…。
『…ハンジ』
「ん?」
『私,貴女に会えて良かったわ』
「急に改まっちゃって,どうしたの?」
『何でも無い。でも,本当に会えて嬉しかった』
「……私もだよ」
『親友として,ありがとう。』
「こちらこそ,ありがとう。」
『えぇ』
「何これ?」
『さぁ?』
「ぷっはっ!」
『ふふっ』
「分隊長!副兵士長!そろそろ出発です!」
「はいよ。」
『ありがとう』
・
・
・
私達はウォール・マリアの近くに着いた。
「リヴァイ!あなた!」
エルヴィンが私達の名前を呼んで合図する。
「行くぞ,あなた!」
『了解!』
馬の上に立つと,刃を抜いた。
「『っ!』」
立体機動装置で飛び出すと,壁に刺して
一気に潜り抜けた。
部下達も着いてきた。
「…は?」
『…』
「巨人が一匹もいねぇじゃねぇか」
『建物に隠れてるって可能性もあるんじゃないかしら。獣の巨人の力で』
「あり得るな。ライナー達もどこに居るか分からねぇし」
『戻る?』
「あぁ。」
指示で,全員が巨人の捜索に向かった。
「あなた,君は何人か連れて,逆側の壁へ向かってくれ。そこで待機だ」
『分かったわ。アスク!』
「はい!」
『3班を連れて,私に着いてきて!』
「了解です!」
私は,アスクや他の兵士達を連れて
エルヴィン達が居る壁とは逆の壁に来た。
エレンが巨人になって向こうの壁を硬質化で塞いでる間,私はこっち側の壁の穴を塞ぐという作戦だと思う。
「これで良かったのでしょうか?」
『何が?』
「副兵士長は巨人の女王です。エレン・イェーガーと同様,人類の希望です。なのに,単独行動も同然じゃないですか」
『大丈夫よ。エルヴィンは,そんな意味のない事を考えない』
「…」
『エルヴィンは,私を信じたのよ。私はリヴァイが生きてるなら死なない。その言葉を信じたのよ』
「…なら私も,副兵士長の言葉を,信じればいいんですね」
『信じるかは,貴女次第よ。』
「っ…」
『私だって,失敗くらいするしね』
「…それでも,私は信じます!」
『……そう。貴女は自信が強いのね』
「はい。」
すると,エレンが巨人化した。
「!」
『…そろそろね』
「副兵士長…」
『大丈夫よ。』
『総員!私の話を良く聞いて!』
「「「はい!」」」
『これからエルヴィン達が居る壁側から,信煙弾が放たれる!それが私が硬質化を使う合図よ!そうなれば,私はここから離れる!その時は,アスクにここの指揮を任せる!』
「!」
『頼んだわよ,アスク!』
「はい!」
『状況報告は常に行う事!何か変わった事があればすぐに報告して!』
「「「了解!」」」
バンッ!
『!』
「煙弾です!」
『行ってくるわ!』
「副兵士長!」
『何?』
「……ご無事で。」
『……えぇ!』
・
・
・
「もし…そうだとするなら…」
もし,ライナーやベルトルト達が隠れるとするなら…
壁の中!
「ライナーです‼︎」
「「「⁉︎」」」
「ライナー‼︎」
バンッ!
「アスクさん!」
「信煙弾です!」
「あれは…作戦一時中断の合図!」
良し,このまま硬質化で…!
「副兵士長‼︎」
『⁉︎』
「信煙弾です‼︎」
一度中断…
なるほどね,来たわね,ライナー。
『っと。』
「大丈夫ですか⁉︎」
『えぇ,大丈夫。』
「…現れたんですね,巨人が」
『そうね』
その瞬間,反対側の壁の辺りから
突如光が飛んだ。
「鎧の巨人です!」
「…どうしますか?」
『エルヴィン達に判断は任せるわ。私達は待機よ』
「「「了解。」」」
その直後,
『っ!』
「どうかしました⁉︎」
『い,たい…』
「!……硬質化が⁉︎」
私の顔には,エレンと倒れた時と同様
氷の様に硬質化が張り巡らされていた。
『っ…』
「副兵士長,しっかり‼︎」
「どうしたんですか⁉︎」
「副兵士長が,例の硬質化が…!」
「ハッ,今すぐ白の信煙弾を!」
「了解!」
白の信煙弾…
それは,私に何か異常があった場合に報告として打つ信煙弾。
・
・
・
「兵長!」
「何だ?」
「白い,信煙弾です!」
「!」
何か起きたか
硬質化か?
だが,あなたはエレンに触れてないぞ…?
「…エルヴィン」
「嗚呼。エレン!」
「はい!」
「君はあなたに近づくな」
「…信煙弾,ですね」
「嗚呼」
「了解しました」
エレンが近づけば,硬質化の症状で気絶という事も考えられる…
そうすれば,あなたが倒れたら
俺達は一気に不利になる。
「…あなた」
・
・
・
「…大丈夫ですか?」
『えぇ…。そろそろ硬質化も剥がれるだろうし,もう大丈夫。』
「…副兵士長」
『何?』
「無理をし過ぎですよ」
『…』
「心配です!副兵士長が…これ以上危険な事になったら…私は…」
『…大丈夫よ』
「!」
『…私は,リヴァイも貴女達も,失いたくない。だから,守り抜くには死んだらダメなの』
「副兵士長…っ」
『ね?』
「は…はいっ」
『ふふっ』
「副兵士長!打ちますか⁉︎」
『お願い!』
バンッ!
「…二度目の白い信煙弾…」
「無事みたいだな」
「はぁ…」
「良し,では___」
エルヴィンがライナーを倒すために策の指示を進めようとした直後
背後から巨人化の光がそこらじゅうに響いた。
「「「⁉︎」」」
「…マズい…」
・
・
・
「何が有ったの⁉︎」
「巨人化の光だよな,あれ⁉︎」
『…』
「副兵士長!」
「報告係の兵士です!」
「どうも,副兵士長。大丈夫でしたか?」
『えぇ。それより,巨人化の光があったみたいだけど』
「…獣の巨人が,現れました」
「獣の巨人…」
『…そう。エルヴィンは?』
「副兵士長はここで待機。安全を優先にとの事です。ここの班の者は副兵士長の護衛を!」
「了解です」
『判ったわ。貴方も戻って』
「はっ!」
『…』
「鎧の巨人と獣の巨人…」
「現れましたね…。」
『…?』
「何か?」
『……超大型は?』
「え?」
『ライナーと,獣の巨人の男と…ベルトルトはどこ?』
「…更なる攻撃が…」
『そういう事よ。ライナーは壁の間から出てきた。ベルトルトはどこからか,必ず出てくる…』
「…」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!