第61話

58
2,011
2020/11/29 04:34
「進めぇぇぇ‼︎‼︎‼︎‼︎」









ごめんなさい,皆。

怯えた目で,獣の巨人に立ち向かって…

本当にごめんなさい。



『……っ!』



私は壁の一番上に,立体機動装置で登った。

"奴ら"の動きを止める為に。




_______________________





「何?俺だけ立体機動で巨人に接近しろ?」

「嗚呼。」

「向こうは平地だぞ?利用出来る家も木も無ぇ」

「いや…」

「?」

「丁度良い立体物が,並んで突っ立っていたなら話は別だ。」

「!………だが,奴らは獣の思うがままに動くぞ。削ぐことは可能だが,動かられたら時間の無駄だ」

「……それは獣の力だろう?」

「…」

「その力よりも強い力を持つ,"女王"が,居るではないか。」

「…」

『え……私?』

「君が周りの巨人の筋肉を停止させる事が出来れば……話は別だ。」

『…分かったわ。やる』

「頼んだぞ。」

「……。」






「どうした?」

『…別に。』

「嘘つけ。」

『…』

「さっきまでの威勢はどうした。急に退いたか?」

『……えぇ』

「!…」

『怖いわよ…』

「……そのまま居ろ」

『え?』



リヴァイは,自分の首元のクラバットを外した



『え?』

「そっち向け」

『?』



するとリヴァイは,私のチョーカーのフックを取って外した。



『え,取った?』

「じっとしてろ。」

『?』



後ろから私の首元にクラバットを巻いた。



『ちょっ…』

「…」



巻き終わると,私のチョーカーを自分の首元に付けた。

そして,後ろから抱き締めた。



『!…』

「大丈夫だ,お前なら。」

『…』

「お前は俺が認めた女だ。お前の事なら,例え過去に勝てなくても,俺が一番分かってる」

『…』

「誰の面倒も,本当の親の様に見る所…。誰にも優しく,部下からの信頼が一番高い事…」

『っ…』

「自分の気持ちを,"吐け"と言われるまで溜めてしまう所…。」

『……辞めてよ…泣いちゃうじゃない…。』

「…愛してる。」

『…それは辞めて』

「…」

『それじゃあまるで……お別れの言葉みたい…』

「…チョーカーを取り戻しに来い。必ずだ。」

『えぇ…。必ず』




_______________________










『…ふぅ…』





全ての精神を集中させる。

体力を残し,今までで一番の力を出す…

エルヴィンから換えで貰ったガス缶が重たい

背中に背負うとバランスがなぁ…






『……悪魔は,人を助けない。その理由は意外と簡単。…貴方達が,そう決め付けているからよ』




悪魔は人を助ける事が出来る。

そう………出来る





『……うあぁぁぁぁぁぁァァァアッッッ‼︎‼︎‼︎‼︎』













「ミカサ,撃つな‼︎」




「いいや,良くやった‼︎‼︎」



「!」

「「!」」

「ハンジさん!」



「今だ,ミカサ‼︎‼︎」



「っ!」



「(ま,まさか…!)」

「ライナー……出て‼︎」












「この作戦が上手く行けば…僕はもう,海を見には行けないなぁ…」

「(アルミン……お前…)」













それぞれが行動を起こしている頃,

私は目的地に着いた。

確かに見た時は50体近くだった。

それが,数が増えてる

100……は近いくらいにあると思う



『まぁ良いわ……。』



リヴァイに言わなかった

私はここで一度,"死んでも良い"と思った事を。



『……』



私は足を一歩前に出して,真っ逆さまに落ちていった。

巨人達には,ただ緑色の物体が落ちてくる様にしか思えないんでしょうね…




『ゔぅっ……うわあぁぁぁぁぁぁぁああ‼︎‼︎‼︎』












「やったぞ‼︎」

「…」

「アルミンが息を吹き返した‼︎」

「ぁ…」

「…」

「頑張れ!もっと,息吸え‼︎」

「兵長,注射を早く‼︎」

「…」

「?…」

「…」

「アルミンを巨人にして,ベルトルトを食わせるんですよ!早く注射を下さい!」

「……っ」




バンッッッ‼︎‼︎











「何?」

「ハンジさん,危ない‼︎‼︎」

「⁉︎」



「っ…」

「マズい…」

「…」


「ライナーを奪われました!ハンジさん⁉︎」


「!」

「クソッ!」

「コニー,追わなくて良い!」

「⁉︎」

「ガスはもう残り僅かしかない。追いかけるのは不可能だ…」

「クッソォォ…!」

「…」

「俺のせいです…俺が…取り返しのつかない事を…」

「私の判断だと言っただろう。エレン達と合流しよう」

「っ…」










「うっ…」




「「「!」」」

「リヴァイ…兵長…」

「…」

「エルヴィン団長が…重傷です…血が…止まりません…」

「…」

「例の注射が役に立てばと思ったのですが,どうでしょうか?」

「え…?」

「…」

「兵長…?」




「まだ,息がある。まだ,生きている…。」

「「…」」

「………この注射は,エルヴィンに使う。」

「!」

「…」

「さっき…アルミンに使うって…!」

「その通りだが,ここにエルヴィンが現れた以上,エルヴィンに使う」

「っ!」


ガッッッッ!


「っ」

「!」

「ぁ…」

「ダァァァァァァァ‼︎‼︎」

「っ!」

「うぅぅぅ…!」

「くっ…」

「オイ!」

「(力が,弱ってる…。力づくで,奪える!)」

「お前らも分かっているはずだ。エルヴィンの力無しに,人類は勝てないと!」

「そうだよ,ミカサ…もうやめろ,こんなバカな真似…」

「っ!」

「っ…」

「アルミンがいなくたって……無理だ…」

「エレン!」

「だって……そうだったでしょ…?」

「…」

「トロスト区で岩を塞いで守る事ができたのも…アニの正体を見抜いたのも…夜間に進行する事を思いついたのもアルミンだ…。」

「…っ」

「潜んでいたライナーを暴き出したのも…ベルトルトを倒す事が出来たのも,全部,アルミンの力だ!」

「…エレン…」

「人類を救うのは,俺でも団長でも無い!アルミンだ!」

「…」

「そうだろ,ミカサ⁉︎」

「っ!」

「…っ」

「渡して…下さい!」

「くっ…」

「人類を救うのは,エルヴィン団長だ…。」

「黙ってて‼︎」

「っ……黙っていられるか…。お前らばっかり辛いと思うなよな!まだ知らないと思うけど…あの壁の向こう側に生きてる兵士は,もう誰もいねぇ…。」

「っ…」

「獣の巨人の投石で…みんな殺されたんだ。誰も,助からないと思った…。でもエルヴィン団長だけは違った!あの状況で,獣の巨人の喉笛に食らいつく算段を立て…実行した。」

「「「…」」」

「皆作戦通り,バラバラに砕けたよ…。最後に感じた事は,きっと……恐怖だ…」

「「「…」」」

「まだ息のある団長を見つけた時は…とどめを刺そうとした。」

「っ…」

「「…」」

「でも…それじゃあ生ぬるいと思った…。この人にはまだ,地獄が必要なんだって…」

「!」

「そして分かったんだ…。巨人を滅ぼす事が出来るのは,悪魔だ‼︎」

「…」

「悪魔を蘇らせる…それが俺の使命だったんだ!」

「「「…」」」

「それが,おめおめと生き残っちまった…俺の意味なんだよ!」

「!」

「だから,邪魔するなよ‼︎‼︎」

「っ!」




「よせ‼︎」



「ハンジ!」

「おい…嘘だろ…こんなの…」

「そんな…」

「なんって,事だ…」

「っ…」

「っ!うわぁぁぁあァァァ‼︎‼︎‼︎」

「ミカサ!私達にはまだエルヴィンが必要なんだ!」

「あの壁の中で,希望の灯火を絶やしてはならないんだ!」

「それは,アルミンにだって…!出来る‼︎」

「だが…まだエルヴィンの経験と,統率力が…!」

「っ!」

「うっッ!」

「…っ」

「…私にも,生き返らせたい人が居る…。」

「!」

「何百人も…」

「っ…」

「調査兵団に入った時から,別れの日々だ…。」

「…」

「でも…分かっているだろう…?誰にだっていつかは…別れる日が来るって…。とてもじゃないけど…受け入れられないよ…」

「…っ」

「…」

「「「…」」」

「正気を保つことさえ,ままならない…。辛い…辛いよ…分かってる…。それでも,先に進まなければならない…」

「…っ…」




その時,反対側から,三体の巨人が現れた。




「「「!」」」

「巨人が…!」

「チッ…」




『これで……』




「「「!」」」




『"私へ"の,復讐の…終わり,ダァァァァ‼︎‼︎‼︎‼︎』




「あなた!」

「「あなたさん!」」




『っ…』




あなたは,俺達の居る家の屋根に

体を打ち付けた。





「あなた⁉︎あなた⁉︎」

『……リヴァイ…皆…』

「あなた…」

『ハンジ…』

「大丈夫かい…?」

『…ん。……ねぇ,リヴァイ,聞いて…。』

「何だ…?」

『私ね…さっき,あそこに来る前に…"死んでも良い"って…思ったの……』

「⁉︎」

「あなたさんが…」

「死んでも良い…って…?」

「頭でも打ったのかい、あなた…そんなの,君じゃないじゃないか…?」

「あなた…何で…」

『……分からない…覚えてない…。ごめんなさい…』

「俺をおいて……死のうとしたのか…?」

『…えぇ…。』

「お前まで…俺から離れようとしたのか…?」

『……貴方の事が,頭に無かった…』

「!」

『初めて……自分の事だけを考えたの…』

「…」

『でも,死なせてくれなかった…。私が死ぬ事で…ここに居る全員が泣いちゃう自信があった…。』

「…あなた…」

『大切な子達の…』

「「「…」」」

『大好きな,親友の…』

「…」

『愛する,彼の…』

「…あなた…」

『悲しむ顔は,嫌いだから…』

「…」

『エルヴィンは…?』

「……生きてる」

『!…』

「…エルヴィンに,注射を打つ」



「兵長…"海"って…知って…ますか…?」



「…」

「幾ら見渡しても…地平線の果てまで続く…巨大な湖だって…アルミンが…」

「おい,もう辞めろよ!」

「この壁の向こうにある"海"を…いつか,見に行こう,って…」

「…」

「でも…そんな餓鬼の頃の夢は…俺はとっくに忘れてて…。…母さんの仇とか…巨人を殺す事とか…」

「「「…」」」

「何かを,憎む事しか頭になくて…。でもこいつは違うんです…。アルミンは戦うだけじゃない!夢を見ている‼︎」

「…………全員,ここから離れろ‼︎」

「「「!」」」

「ここで確実に,ベルトルトをエルヴィンに食わせる!」

「…さぁ。行こう,ミカサ…。」

「クソ…クソ…」

「……アルミン,またな。」


「ぁ…」




「…お前も,行け」

『……身体が痛くて,動けない』

「…」

『巨人にさせた後,運んで。』

「おう。」

『………ねぇ,リヴァイ』

「何だ?」

『…』

「…」






バンッ!






「!」

『!』

「せんせ……に………いない…って……やって…調べたんですか…?」

「…」

『リヴァイ』

「…」

『それが,エルヴィンの,私達への答えよ。』

「…」

『……リヴァイ,"____"。』

「!…」







「っ……」



巨人がベルトルトの身体を掴んだ。



「うわぁぁぁあァァァ‼︎‼︎‼︎」



そのまま口へ持っていく。



「アニ‼︎ライナー‼︎‼︎‼︎‼︎」










「兵長…どうして…ですか…?」

「こいつを…許してやってくれないか?」

「っ…」

「それを望んだのは,俺達だ。再び,地獄へ呼び戻そうとした…。だがもう…休ませてやらねぇと…。」

「…」

「エルヴィン,獣を仕留める約束だが…まだ先になりそうだ。」

「……もう,死んだよ」

「!…………そうか。」






「あなたさん,大丈夫ですか…?」

『えぇ…。』

「あの巨人は…」

『……クスッ…』

「「「…」」」

『コニー,サシャをここに寝かせて』

「え?」




『貴方達の大事な仲間を,出してあげて。』










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