第69話

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2021/02/12 14:54
半年後。





『え?』




部下の報告を受けて,私は気が強張った。




「マーレの人間を…捕らえたそうです」

『誰が?』

「団長達がです。リヴァイ兵士長も一緒です!」

『わかったわ。直ぐに行く』

「はい!」












「おい,吐け。お前は何故ここに来た?」

「っ…」

「リヴァイ,怖がらせても仕方ないじゃないか」

「チッ…」

「こう言うのはね…一発かませて吐かせた方が早いのさ!」

「ヒィ…!」

「お前も状況変わってねぇじゃねぇか。」

「あっはっは!」



『笑う事じゃないでしょ』



「あ,あなたー!」

「悪いな」

『いいえ,大丈夫よ。彼がマーレ人?』

「嗚呼。他の船と一緒に流れてた船に乗っていた」

『他の船…ね。』

「さて。君が乗ってきた船に居た人はもう居ない。」

「!」

「こちらで全員拘束させてもらった。あなたに怒られちゃ,重い脅しは掛けられないが…」

「今ここで吐いちまった方が,身のためだな」

「っ……」

『…』

「意地でも口を割らない気かい?」

「…」



『……マーレの人間なら,巨人の存在を知っているでしょう?』



「っ…」

『私は,誰かわかる?』

「……あなた・アッカーマン…。エルディアで存在する3人のアッカーマンのうちの1人で……アットループの血を受け継ぐ者…」

『そうよ。私は,巨人の女王。よろしくね』

「よろしくなんて…誰がするか!」

『貴方の仲間も,そのうちここに来るわ。その時の交渉人として,協力してもらうわね』

「っ…」

『信じて。』

「?…」

『私達は,確かに悪魔の民族かもしれない。それでも,私達は貴方達以上に戦ってる』

「…」

『色んなものを犠牲にし,多くの命を捨ててきた。』

「…」

『私達は,"ただの悪魔"じゃない』

「…そうか。」

『………名前は?』

「…ニコロだ。」

『そう。』






「さすがあなただね。あのマーレ人君を説得しちゃった」

『言い方を変えれば良いのよ。思考を読むの』

「彼の考えを,利用したって訳だ」

『嵌めた訳じゃないわよ』

「だろうね。」

『彼は心の綺麗な人間よ。私達とは,程遠いわ…』

「……そうだね」

『………で。作戦を考えるんでしょ?』

「嗚呼。どうやってマーレを向かい受けようか…」

『…』



私達は,マーレの本船をどうやって向かいうつか

そして,彼らと戦うべきか,交渉して協力すべきか…。
















「さて。マーレの本船が来たら,エレン,君が岩岸へ運ぶんだ。巨人化してね」

「わかりました」

「エレンの側には,あなたがいる事。何かあったとしても,君ならエレンを止められる」

『わかったわ』

「じゃあ,マーレの彼を利用して,引きつけようか。」










『……さて。エレン,準備は良い?』

「はい。」





「な⁉︎」

「巨人⁉︎」





「ヴゥゥゥ…」

『そのまま運んで。北へ進んで』




「っ…」

「何なんだ…?」







「マーレの皆さーん!こんにちはぁー!パラディ島へようこそ!」






「っ⁉︎」

「…」





「私はハンジ。遥々海を渡ってきた皆様方を,お迎えするものですー!ささ!こちらでお茶でも楽しんでって下さい!」

「…」

「あ!先にお越しのお連れ様も,既に仲良しでーす!」

「ヒィ…!」

「だよねー?ニコロくーん!」

「隊長!私に構わず,この悪魔共を撃って下さい!」

「えぇ⁉︎何を言い出すんだい,ニコロくーん⁉︎」

「隊長ー‼︎‼︎」

「お前の三文芝居に付き合う気は無ぇってよ」



「ニコロ…。良く聞け,悪魔共!マーレは汚れた血や肉カスなど持ち合わせていない!汚れた人間と豚の小便を啜る様な真似はしない!」

「アァ"ー!良いのかなー,そんな事言って⁉︎後ろの巨人が見えないのかなー?」

「っ⁉︎」

「クッ…悪の力などに屈するものか!これがマーレの挨拶だ!」

「ヒィ!」



バンッ!



「…え…」

「「「…」」」





「な,何のつもりだ,イェレナ⁉︎」

「武器を捨てるんだ。」





『…あら,仲間割れかしら?』

「ウゥ…」

『…』



私は彼に,手を付けた。



『…どう思う?』

"本当に,仲間割れでしょうか?"

『…』

"最初から…その気があった様に見えます"

『…確かに。』





「ハンジさん。お招きいただき,光栄です。」

「ぇ…」

「お茶,しましょう」

「ぁ…あぁ…。」




「………会いたかったよ,エレン。」




隊長の脳幹を撃った人は,私達の方を向いた。

そして,私を見て,手を広げた。

目を,輝かせて…。




「……素晴らしい…。美しい女王様だ…」



『…』














「ほぉ……へぇ…こうやって何発も撃てる訳だ」

「それは,マーレ兵の基本装備です。マーレ兵は,一団辺り約2万人で構成され,総員50師団,100万人になります」

「…」

「それら陸軍に加え,21船の戦艦から3つの艦隊の融資,その他新兵器の進歩も目覚ましく,航空戦力にも力を注いでいます」

「航空…?」

「チッ…」


ガンッ…


「(ビビってんじゃねぇよ,舐められるだろうが)」

「(わかってるって…)」

「要するに,海や壁を越え,敵が空から現れる移動兵器の事です」

「えぇ⁉︎空から来るのぉ⁉︎」

「おい」

「そ…そんなけの力を持つマーレ様が…少なくとも1年間…まともに攻めてこなかった理由って…何?」

「主に理由は2つ。1つは,島に放った無垢の巨人が,最新兵の兵器を使っても,未だに上陸困難な障害である事」

「…」

「マーレがエルディア人を,壁の中に幽閉する為の政策でしたが,逆に心眼からエルディアを守る存在となっていたのです」

「…らしいな。そいつは笑える」

「しかし,もうすぐ夜が明け,巨人が活動する頃ですよね。今我々がこうして壁の外でのんびりお茶出来るという事は…」

「っ…」

「島の巨人を全て殺してしまった。と,いう事でしょうか?」

「ぉ…」

「だったらどうする?なんとかしてマーレに伝えるか?」

「……いや,素晴らしい…期待以上だ」

「…2つ目の理由は?」

「現在マーレは,複数の国と戦争状態であり,パラディ島どころでは無いという訳です」

「「…」」

「貴方がたは,我々が誇るマーレ戦士隊を撃ち負かし,更に超大型巨人,女型の巨人といった死力兵器を奪った」

「…」

「マーレは敵の多い国ですので,所外国は瞬く間に団結し,戦争の木札が切られたのです」

「すると貴方がたは,マーレに恨みを持つ某国の民であり,マーレ軍に潜入する諜報員みたいなものなのかな」

「「!…」」

「お,当たり⁉︎やはりマーレに背くくらいなら,その動機と後ろ沙汰がないとねぇ」

「諜報などと…呼べる様な代物ではありません。」

「…」

「マーレに故郷を奪われ…兵士として調教された我々は,とても非力で,あの大国に争う気概は,失われつつありました」

「「…」」

「彼に…導かれるまでは…。」

「…」

「マーレや世界の人々が,悪魔と呼んで恐れられる巨人。私には全く別のものに見えた…。神です。無力な私達に希望を見せてくれました」

「…」

「「…」」

「私達は,ジーク・イェーガーの名誉を受けて,上官を撃った……反マーレ義勇兵です。その目的は,全エルディア人の解放。」

「っ…」



『……獣の巨人ね。』



「「!」」

「あなた…」

「やぁ,あなた」

「アットループ様。そのジークより,手紙を預かっています」

「中の確認は?」

「済ませてあります」

『…どうも。読ませてもらっても?』

「どうぞ。」

『ありがとう。』






我が巨人の女王様。


獣の巨人,ジーク・イェーガーより

パラディ島に義勇兵を配属させてもらった。

エルディア人…エレンや貴女,リヴァイ達を救う為為,協力しましょう

全ては,貴女様,女王陛下の為に…。






『…』

「ジーク戦士長は,貴女を心より慕っています。」

『そのようね。まぁ,巨人という立場での協力体制の提案という手紙ね』

「そうか。」

『どうするの。王都への連絡は』

「するよ。会議もすると思う」





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