第68話

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2021/11/06 08:38
数日後。





俺は,今

洗濯物を持って,階段を登っている。

あなたさんに頼まれたものだ。

あなたさんは最近,家事をしている。

と言っても,主婦をしているわけじゃない。

皆の飯を作ったり,リヴァイ班の洗濯物を全員分洗ったり

ただ,極普通の家庭の暮らしのようなことをしている


『動いているのも,意外と楽しいわ』


と言っていた。

そうなのか…?



「あなたさん,洗濯物持ってき__」



は?



「あら,エレン」



なん…で…



『あら,エレン』



「…」

『どうかした?ポカンって口開けて…』

「あ,いえ…」

『?』

「……一瞬だけ…」



母さんに,見えた。



『…』

「すみません。後ろ姿と振り向いた時に,俺の母さんに見えて…」

『…』

「恥ずかしいですよね。この年になって,母親像とか」

『……そんな事ないわよ。』

「え?」

『私は,母親の顔が分からないもの。』

「…」

『それに,私は今,貴方の母親みたいな年齢だし』

「おいくつでしたっけ?」

『30近いわよ。』

「全然見えないですね。」

『そう?ありがと。』

「…」

『何?』

「……母親はわからないって言いましたけど…"父親"はわかるんですか?」

『!…』




あなたさんの顔が,曇った。




「…」

『…。』

「…わかるんですか?」

『……私は,父のアッカーマンの血と,母のアットループの血が混ざった人間だから,父親の姓が私の姓なんだけど…』

「…」

『…アッカーマンらしい。ミカサと同じ。』

「……そうですか。」



「私が,なんですか?」



「ミカサ…」

『あら,ミカサ。ありがとう,持ってきてくれて』

「ミカサも洗濯物か?」

「うん。全部洗ってくれるって言ってくれたから」

『こんな天気の良い日に,洗濯物を干さないなんて,勿体ないじゃない』

「……おばさん…」

『え?』

「あ…エレンのお母さんみたいで…」

『さっき,エレンにも言われたわ。そんなに似てるかしら?』

「似てるよな」

「うん。」

『そう。』













「はぁ…疲れるぅ…!」



『まだやってるの?』



ハンジは団長室で,伸びをしていた。



「うん。徹夜4日目」

『良くやるわね…』

「あなた〜,親友だろぉ?手伝ってよー」

『あー,残ってた資料があったなー』

「ちょっとあなた⁉︎」




全く…

武装器具を創るのは良いけど,被害を回さないでよね…。

洗濯物は終わったし,後はこれといってする事ないわね。



「あれ?」

「「ん?」」

「あなたさーん!」

『サシャ?』

「洗濯物終わったんですか?」

『えぇ。終わったわ』

「呼んでくれれば,俺達も手伝いましたよ?」

「そうですよ」

『そう…じゃあ今度からお願いしようかしら?』

「「任せて下さい!」」

『ふふっ』

「…あなたさん」

『何,サシャ?』

「髪,随分伸びましたよね?」

「確かにな」

「初めて会った時は,短かったですよね」

『そうね。そろそろ切ろうかなって思ってるんだけど…なかなか忙しくてね…』

「私が切りましょうか⁉︎」

「お前がやったらとんでもない事になるだろ」

「そーだそーだ。せっかくの美人がお陀仏だっつうの」

「酷いですよ!」

『うーん…。サシャ,この前裁縫を手伝って欲しいって言ってきたわよね…?』

「はい!」

『結局…布破れたわよね…?』

「お前やべぇな」

「不器用にも程があるだろ…」

「不器用なのは仕方ないでしょー!」

『ま,伸ばしていても邪魔だし…リヴァイに切ってもらおうかしら』

「その方が良いですよ!」

『ありがとう。ハンジー!資料作り終わったわよー!』




「そういえば」

「「?」」

「ジャンとあなたさんって,何かと仲良いですよね」

「だよな」

「まぁ。出会った頃から気に入られてたしな」

「私達だって,大事にされてましたよ!」

「そーだよ!」

「うるせぇな!」










「おい,ハンジ」

「何?」

「あなた,知らねぇか?」

「あぁ。君の愛しの奥さんなら,さっき資料を渡しに来て,そのまま行ったけど?」

「そうか。」

「あ,それと,君を探していた。」

「俺を?」

「うん。髪がなんとかって言ってた」

「…」







髪,か。








『あ,リヴァイー!』




「おう。」

『髪,切ってくれないかしら?』

「良いが…いきなりどうした?」

『立体起動の時,ちゃんと結んでいるんだけど…どうしても邪魔になっちゃって』

「そうか。分かった。切る」

『ありがとう』




俺達はスバルの部屋で,あなたを椅子に座らせて

俺はハサミを持った。




「じっとしてろよ」

『えぇ。』




だいぶ伸びたな…。

と,思うほどに長くなっていた。

一年で髪は,ここまで伸びるのか…

エレン達も最初に会った時は,ナナバよりも少し長かったくらいだったのに

今では胸下まである。

長くても綺麗だが,やっぱり短めが好きだな。

俺はあなたの髪をときながら聞いた。



「どこまでが良いとか,希望あるか?」

『ガッツリイメージ変えたいのよね…。肩くらい?』

「分かった」




ジョキ。

と,部屋に音が響き渡った。




「…」

『……昔を思い出すわね』

「そうだな。」





昔は,お互いの髪を切っていた。

ケニに出会って,あなたに出会った後に

2人ともケニーに髪を切ってもらってから

お互いの髪を切るようになった。




「よし,揃えるぞ」

『えぇ。』




あらかた,肩くらいまで切った。

前くらいの長さの方が良いかと思ったが,こっちの方が似合うと思った。




「…どうだ?」

『…』




俺はあなたに,鏡を見せた。



『この髪型は,初めてね』

「そうだな。」

『前髪も切ってくれる?』

「良いのか?」

『うん。ガラッと変えたいの』

「…分かった。」




あなたは,元から前髪が長かった。

横に流していたんだ

ガキの頃からずっとそうだったから…

まぁ,印象は変わるよな。




「……ほらよ。」

『っ…』

「……良く似合ってる」

『ありがとう』




ここまで切ると,ガキの頃のまんまだな。

幼さが増したな…。

まぁそれでも,綺麗だがな。




『ありがとう,リヴァイ』

「昔からの事じゃねぇか」

『そうなんだけどね。』

「また,切ってやるよ」

『うん。またリヴァイも切ってあげる』

「おう」

『ふふっ』




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