第9話

〜再開の春〜 再開ホームラン
99
2019/06/21 03:14
 私は嬉しかった。






翼が…あの翼がまた私の前に現れてくれたことに。






翼
よっしゃ!こい!



そして相手投手が構える。



翼
(次はまたスライダーか…それとも外してくるか…)
草野球チームの人
(ここはきわどい所をっ…!)
 
パンッ!!




相手投手からボールが離れ、140キロはあるであろうストレートがキャッチャーミットに納まった。


主審
ボール!
姫花
姫花
ひやひやする〜、よくあそこのボールを見たね…



流石と言うべきかなんというか、やっぱり凄いなぁ翼は…



草野球チームの人
(俺の全力のストレートを見せたからな、その後でなら…)



相手投手が再び構える。



翼
(今までとは違うきわどい全力ストレート…その後で来るとしたら…)



そして相手投手の手からボールが離れる。


草野球チームの人
(今日まだ見せてないチェンジアップだ!)
翼
(またストレートかチェンジアップ辺りだろ!)
補足
チェンジアップ
ボールを鷲掴みにすることによりストレートと同じ腕の振りから出される遅いボールである。主に打者のタイミングを外すのに使われる。右や左に曲がりながら落ちるように変化する。
姫花
姫花
(翼くんっ…!)




私は祈るように手を握っていた。






瞬間







カァァンツッッ…!!






と威勢の良い音とともにボールは空高く舞っていた




翼
やっぱりな!



相手投手の投げた球種はチェンジアップだった、翼はそれをよんでいるようだった。






ボールは空の彼方に舞い上がり、ホームランゾーンの芝生へと落ちていった。



翼
全力ストレートからのタイミング外しのチェンジアップか
高校生でも読めるぜ!甘かったなおっちゃん!😁



嬉しそうにニヤける翼に相手投手の社会人が悔しそうにしている。




翼の草野球チームのベンチからは、おぉぉ!といった声が上がっていた





得点板を見れば最終回、翼のホームランで逆転勝利だった。



姫花
姫花
…すごいっ!



私は小学生の頃のように翼のプレイに魅了されていた。


翼
よっしゃあ!



嬉しそうにホームベースを踏む翼に味方チームの社会人がかけよる




草野球チームの人
凄いな!
草野球チームの人
やるじゃねぇか!
草野球チームの人
将来有望やなぁ



などといった声が翼に集まる、それは私も確かに思う。







やっぱり翼はすごい選手だ…






でも私にとって翼はそれだけじゃない、私に明るい生き方を、強い生き方を教えてくれた




私にだってそういう生き方ができるのだと教えてくれた大切な人だから…








そこからは試合終了の握手をしてグラウンドの片付けをし、社会人の人達と仲良さそうに話していた。





姫花
姫花
翼すごいなぁ、あぁやってすぐ溶け込んじゃうんだもんなぁ…



私が近くでここの草野球を見たのは2ヶ月前だ、少なくともその時にはいなかったし、もし帰ってきたなら連絡くらいするだろう…








つまり、最近帰ってきたばかりでこの馴染み様なのだ…




姫花
姫花
私には無理だな笑、ほんと翼は凄いよ…



すると話を終えたのか、翼がやってくる




翼
ごめんな、少し話しててさ
翼
ってかほんとに久しぶりだな元気してたか?



その瞬間嬉しさや今までの寂しさ、たくさんの気持ちがごちゃ混ぜになって溢れだそうとしていた…




姫花
姫花
…っ…ぐす……っ
翼
姫花?泣いてるのか?





どれだけ待ったと思ってんの…








パァン!



姫花
姫花
バカ!



私は翼にビンタをくらわせて早歩きで帰っていた




翼
え……??
草野球チームの人
ふられたなぁ、にーちゃん!笑




草野球チームの人達が翼を笑っている声が聞こえた



姫花
姫花
…つぅ…こんなはずじゃなかったのに…
姫花
姫花
でも…どれだけまたせんのよ…





それでも帰ってきたんだよね












姫花
姫花
…ありがと









私は翼には聞こえないであろう声でそういうと足早にお母さんの待つ車に戻ったのだった。

プリ小説オーディオドラマ