そんなことを考えているうちに試合はかなり進んでいるようだった。
そして気がつくと…ボールがこっちに向かってきていた!!
私は死を覚悟した。
バゴン!!
ボールはギリギリ私の隣を通り過ぎていった。
遠くから人の声が聞こえてくる
聞こえてないだろう声で私はぶつぶつ呟く
そしてその声はだんだん近づいて…き……て………??
翼…?
そして顔を上げた彼が驚いた様な顔をする
私の頭はパニックだった、きっと彼も整理しきれていないだろう
久しぶり…??そんな軽々しく何言ってんのよ…
私は…
ずっと…
ずっと…
嬉しいはずなのに気がついたら私は後ろを振り返り、早足で帰ろうとしていた
途端私の動きが止まる、気がつくと翼が手を掴んでいた。
…そうやって翼はいつもいつも…ずるいよ…
私はあの時と同じように翼に手を握られながら走り出していた。
まるで君と出会ったあの日のように…
まだまだ頭が混乱している私はオドオドしている
そんな私に翼は囁きかけた
久しぶりにその明るい笑顔で呼ばれ、心の鼓動がおかしくなりそうになる…
しぶしぶ私はネット裏のベンチで翼の打席を見ることにした。
翼が相手投手に大きな声を出して牽制している。
そして相手投手が投げようと構えたとこだった。
それを聞いた相手投手はニヤリと顔を歪ませる
その言葉とともに相手投手の手からボールが離れる。
ククッ!!
ボールが翼の先で横にずれた!
カンッ!!!
つばさの打ったボールはファールゾーンに吸い込まれていく。
プロ野球や甲子園をテレビで見た時にしか見たことの無い球種が目の前で投げられていた
私も翼の影響か色々野球を見ているうちにかなり詳しくなったらしい…
私は気がつくと目の前のプレイに熱中していた。
ずっと待っていた翼の野球をしている姿をもう一度見れたからなのかな…
それに答えるかのように翼はバットを構えた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。