それは唐突だった…
それは忘れもしない、小学6年生になりたての春のことだった。
翼はその日も学校終わりに野球のクラブに励んでいた。
その帰り道に唐突に聞かされた話だった。
私はてっきり翼の冗談だと思っていた。
翼はただ謝るだけだった。
謝るだけだった…
なんで??ねぇなんで??
私はおかしくなりそうだった。この時の辛さは今でも胸に残っている。
私は泣き出しながらわけもわからず走り出していた。
それから2日が経ち、残り1日となった。
ご飯は喉を通らないし、学校も休んだ、お母さんは心配してくれるけど言葉すら耳に入らない…
翼の家から何度も電話がかかったし、翼も会いに来たらしいが、もう知らない。
私は閉じこもっていた。
それでも翼は…私に会いに来た。
翼がいなくなる最後の日。
翼は私の部屋の前まで来て言った
私は何もかもわからなくなっていた。
5分後泣くのが少しだけ治まると私はドアを開けた。
そう言って翼は私の傍に来ると私の体を抱きしめた。
私の枯れていた心が満たされていく気がした。
焦った翼は少し慌てている。可愛い。
信用…できないわけないよ…
今まで私を支えてきたのは君なんだよ??
翼はそうやってあの日も笑って見せた。
ずっと待ってるんだよ??
そろそろ現れてくれてもいいよね?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。